「ビジネスと社会の動き」カテゴリーアーカイブ

銅板建築ライオン像が品川宿に移る

今日12月2日の日経新聞地方版(東京)に、「大井町駅近くでライオンのレリーフが見つかった」という記事がありました。まるで掘り出されたかのような書き方でしたが、この店舗、商店街近くにある銅板建築の店舗で普通に誰でも目にしていたものでした。私が作っている「銅板建築リスト」↓参照。写真撮影は2007年1月です。
銅板建築「素晴らしい装飾の平屋」

大井町ライオンレリーフ

なんだこれ。「見つかった」とかいう表現は… (というのが私の感想です)。

まあ、銅板建築の商店というとほとんどすべて2階建ての古ぼけた家なので、このような平屋でかつ新しい銅板を葺いている物件は珍しく、その由来はずっと疑問だったのは確かです。その由来が少し明らかになり、品川宿に移転され、多くの人の目に入るようになるというのは嬉しい限りです。また、住友不動産のニュースリリース↓によると、「開発が進む事業区域内にある看板建築を保存したい」との意向が前面に出ているとのこと。銅板建築の再活用も期待したいです。

住友不動産ニュースリリース「看板建築の一部である“ライオンのレリーフ”を旧東海道品川宿にある外国人向け宿泊施設へ移築保存した」

「上蛇窪ムラばなし百話 米屋トモヱ・聴き書き」

現在の(東京都品川区)東急下神明駅~戸越公園駅~JR西大井駅あたりは、昔「蛇窪」という地名でした。そこに住む90歳になった方の証言集。牧歌的な昭和初期の話から、戦争前後の過酷な描写…。地元に関わりのある方なら強い興味を持つかもしれません。

上蛇窪ムラばなし百話
〔米屋陽一(編著)、2011年〕

■鉄ちゃんなら知っている?「蛇窪」の地名
相当にローカルな話題をお許し下さい。本書は一般に流通している本ではないようですが、品川区の図書館に行けば読めます。「蛇窪」とは今の東京都品川区豊町、二葉、戸越あたりの古い地名で、長くお住まいの地元の方の聴き書きを、ご子息である民俗学者の方がまとめられた本です。出版はつい昨年(2011年)とのこと。

かつて町名として「上蛇窪」「下蛇窪」と2つありましたが、「蛇」という名が一般に好かれるものでないことから、昭和初期に町名を変更することになりました。それぞれの地域に「神明」神社があったことから、「上神明」「下神明」という名に落ち着いたようです。東急大井町線が開業した昭和2年当時は、今の戸越公園駅が「蛇窪駅」、下神明駅が「戸越駅」という駅名でした。

現在でも「蛇窪」という名はわずかに残っていて、JR横須賀線(品鶴線)と湘南新宿ライン(山手貨物線)が平面で合流・分岐するところ(下神明駅近く)を「蛇窪信号所」と呼びます。そのため、鉄道マニアの間では少しだけ知られた地名のようです。

■フクロウも河童もヒトダマも出る田舎
聴き書きの内容は、関東大震災の頃から戦後の混乱期あたりまで。語り部は、蛇窪駅が開業した昭和2年に小学1年生で、前年にできたばかりの地元の小学校に入学されたそうです。その頃の牧歌的な風景が記されています。

・蛇窪駅ができてから拓けてきたけど、周囲は竹やぶと畑ばかり。その中を小学校まで通って行った
・この辺には田んぼはなく畑。ほうれん草とか小松菜が多く、出荷は大八車でやっちゃ場(今の京急線・青物横丁)まで引いていった
・夏は子どもたちだけで大森海水浴場(今の京急線・大森海岸駅近く)まで歩いて海水浴に行った。大森海岸に「海の家」があった
・夜になるとフクロウが鳴いていた。日が暮れるまで遊んでは「フクロウが鳴くから帰ろう」と言っていた
・今の西大井駅のところは崖で、下は小川(立会川)が流れていた
・大雨が降ると立会川があふれて、三間道路までびしゃびしゃになる。見に行こうとすると、「河童が出るから川を見に行っちゃいけない」と叱られた。実際、水に落ちて死んだ人が何人もいる
・中延の八幡さま(荏原町の旗岡八幡神社)あたりには墓が多く、雨が降るとリンが燃える(ヒトダマが出る)ので面白がって見に行った

こうして箇条書きにしてしまっては面白くもないかもしれません。「今」どころか、昭和40年代ごろにはすでに完全に都市化した地域でしたが、そのほんの少し前はほとんど田舎の風景だったことに驚かされます。こんな地域、蛇窪に限らず、都内でもあちこちにあったことでしょう。

■昭和20年5月24日の荏原大空襲
一方、戦中と戦後すぐあたりは、やはり過酷な描写がたくさんあります。終戦の約3カ月前に荏原地区に空襲があり、このあたりも相当焼けたこと、語り部本人が焼夷弾の火から命からがら逃げ惑ったことなどが、繰り返し語られています。

・5月24日の空襲では、あたり一面焼け野原。防空壕へ避難した人たちが蒸し焼きになって死んだ
・全滅した防空壕の中から荷物を盗んだり、死者の着物まで持っていった人がいた
・翌日になってもまだ燃えていて、土が火でポカポカしていた。そして竜巻がきた。焼けトタンが巻き上げられていた
・亡くなった人を桐ケ谷火葬場までリヤカーで運んでいった。でも、白米のおにぎりを持って行かないと焼いてくれなかった
・武蔵小山商店街の人は、そこに留まっても商売にならないので、満州開拓に行ったひとがたくさんいた
・荏原区役所が火事で焼けて、戸籍が丸焼け。その後あらためて戸籍を作ったけれど、その時点で死んでしまった子の戸籍は抜かされてしまった人がいる

昭和20年戸越公園駅
〔昭和20年の戸越公園(旧「蛇窪」)駅〕

上は本書にも掲載されている写真。焼け野原の中の戸越公園駅の様子が写しだされています。同駅をご存知の方は、今の駅イメージと位置関係を想像してみることができるかもしれません。

※この写真は、web上しながわWEB写真館からも見ることができます

実はこの評を書いている私(松山)がまさにこの地区出身で、語り部の話は私の子ども時代の活動範囲とかなり重なるところがあります。個人的にはかなり身近な内容もあって、つい感想を書き残したくなりました。個人的な興味が先行した話で失礼しました。

恵方巻2010(つづき)

雑誌「食品商業」2010年4月号で『恵方巻き、一本勝負』なる特集記事が組まれています。スーパーの恵方巻28社60本を一気食い、とのこと。これとは別に、恵方巻からみの商標は、この1年でまたも動きがありました。

恵方巻特集雑誌とスーパーのパンフ
〔「食品商業」(左下)と、スーパー/惣菜店の恵方巻パンフレット〕

■オペレーションレベルで出来栄えに差
当サイトのようにパンフだけで判断する空論と違い(笑)、実際に手に入れて、寿司の巻き具合、商品パッケージの体裁、味などを試しているのはやはり目を惹きます。スーパーマーケットの恵方巻は、コンビニ商品と比べるとバリエーションがあります。スーパー自身が企画・製造しているというより、系列の惣菜業者または委託した先の寿司店の商品といえます。

同特集記事を読むと、スーパーとはいえセンター(工場)調理のものもインストア調理のものいずれもあるようです。同じストアでも適性により作り分けているそうです。ある業者の例では、「インストアでは中巻きが中心。特に具材に生魚を使うネギトロ巻きなどを製造し、鮮度追求する。工場では、加熱した具材を使った商品や、より複雑な工程の商品を製造する」とのこと(フードマーケット・クリエイティブ太田美和子氏の記事)。

インストア調理であればこそ利用できる食材も少なくないと思いますが、一方で、その店の調理技術レベルまたはオペレーション能力レベルに左右されるところがあるようです。例えば、しゃり(酢飯)も柔らかかったり固かったり、店によっては前日のしゃりを使用していると推測できるところとかあったようです。巻き方については、未熟な店だと海苔の外にしゃりがあふれていたり、具が偏っていたり…(城取フードサービス研究所城取博幸氏の記事)。特に高額品は実に多数の具材を巻かなければいけないため、出来そこないも多い様子が窺われます。

そんなことなので、たまたま良い出来の店のものを記事で手に入れたか、そうでなかったかも影響しているかもしれませんが、一応記事で良い評価を受けたものを挙げると次のあたりのようです。

・三徳「田舎巻寿司」480円
・コモディイイダ「招福恵方巻」598円
・いなげや「八宝開運巻」698円
・クイーンズ伊勢丹「海鮮太巻」1000円

その他、詳しい内容はぜひこの雑誌から確かめてみてください。もっとも、業界関係者以外の人に役に立つのかどうかわかりませんが…

■変り種タイプ
当サイト前回記事「恵方巻2010(コンビニ)」でも採り上げたイトーヨーカドー(=? セブンイレブン)の変り種タイプ「牛しぐれ煮恵方巻」も、記事で割合高い評価がされています。

スーパーではないので記事にはありませんが、「さぼてん」がとんかつを具材とした恵方巻を扱っていました。これまでもあったのかもしれませんが、惣菜系(変り種タイプ)の恵方巻として、このような商品が今後も増えるかもしれません。

また、予約制の恵方巻のほか、予約品とは別種の恵方巻を当日店売りする例があります。イオン(ジャスコ)では実に8種類。定番の恵方巻のほかカツ巻、サラダ巻など、それも18cmのフルサイズのほかハーフサイズも用意しているとか。イオンに限らず、当日の店舗でそこまで数が揃っているのなら、消費者はもう予約などしなくてもよさそうなものと思うところ。でも店の側からすると、年に1日のイベントに対して予約システムは必須ととらえているようです。

■「招福巻」商標事件で逆転判決
(以下、「食品商業」の記事から離れます)
そのイオン、数年前に販売していた「十二単の招福巻」の名称に対して、「招福巻」商標の権利者である鮨萬(すしまん)が損害賠償請求を起こし、2008年10月2日大阪地裁の判決でイオンが敗訴しています(昨年の記事「スーパーマーケットの恵方巻」)。ところが2010年1月、控訴審でイオンが逆転勝訴となりました。

◎「招福巻」(区分29,30,31,32)登録#2033007
権利者は「小鯛雀鮨 鮨萬」(大阪市)。1988年登録

一審での賠償金額はわずか50万円強、対象となった「十二単の招福巻」販売本数は2年間でわずか6000本程度だったことを考えると、よくイオンも控訴したものだと思いますが、そのあたりの経緯をどなたかご存知の方いらっしゃるでしょうか。また、二審で逆転した理由は、
a.「招福巻」は普通名称である、と判断された
b.「十二単の」の部分に自他識別力がある、と判断された
のいずれかと考えられますが、どちらなのでしょう。

なお、イオンの件とまったく別に、「招福」という商標がすしの区分でも認められています。

◎「招福」(区分30 ぎょうざ、サンドイッチ、すし、…ほか略)登録#5174859
権利者は「加藤照康」。2008年10月24日登録

この「招福」商標は実はいったん登録が拒絶されていました。その理由がまさに鮨萬の「招福巻」商標とのバッティングだったようですが、それが不服審査で覆り、

「ショウフクマキ」と「ショウフク」の両商標が称呼上類似するとした原審の判断は妥当ではない

と判断されたとのこと。

(参考:商標審決データベースのここ

ほぼ同じ時期に先のイオン敗訴の一審があったわけです。素人感覚ですが、「招福」と「招福巻」がそれぞれ別の商標として判断されたのであれば、「十二単の招福巻」もまた別の商標と見られて不思議ではありません。一方、特許電子図書館のデータベースでは鮨萬の「招福巻」登録商標は生きています。どうも二審逆転の理由は「b」の可能性が高い気がします(確かめていません)。

まさかこれが上告されるとも思えませんが、どうなったことでしょう。鮨萬が「招福巻」商標を確実に保持していると仮定すれば、(裁判が報道されることによる告知効果もあったので)鮨萬の逆転敗訴はこの名称が少し広く使われる可能性が増え、鮨萬自身にとってむしろプラスなのではないかと思ってしまいます。素人考えでしょうか?

■関連商標がちらちら登録、出願
その他、次のような商標が登録、または出願、または出願後拒絶査定されていることを付け加えておきます。

◎「開運恵方ロール」(区分30 ロール状の菓子及びパン)登録#5273116
権利者は「開運堂」(長野県松本市)。2009年10月16日登録
◎「恵方スイーツ」(区分30 菓子)商標出願#2008-104232
出願者は「モンテール」(東京都足立区)。2008年12月26日出願
◎「来福恵方巻」(区分30 巻きすし、巻きすしを主とするべんとう、区分43 飲食物の提供)商標出願#2009-001362
出願者は「日本レストランエンタプライズ」(東京都港区)。2009年1月9日出願、2009年11月13日拒絶査定

なんだか、自分の仕事と直接関係ないにも関わらず毎年チェックしているのも疲れてきました(笑)。事実の最終確認、状況の変化までは責任持てません。もし間違ったところや変化がありましたら、ぜひコメントなどでご指摘ください。また、ビジネスで参考にされるときは、それぞれ当事者の責任で最終的な判断をされてください。

と、免責条項らしき一言を付け加えてさせてもらいました (^_^;)

恵方巻2010(コンビニ)

恵方巻の品揃えは、コンビニチェーンによって方針に違いが見られます。どちらかというと本来の丸かぶり寿司からスイーツや惣菜系に力が入るようになっている流れは、今年も変わっていません。商品によってはもはや恵方巻の範疇から完全に逸脱か(笑)

恵方巻パンフ2010年
〔コンビニの恵方巻パンフレット、2010年〕

■7-11の寿司アイテムは実質1種類に収束
なぜか毎年続けている(勢いで続けざるを得なくなっている?)恵方巻の話(07年08年09年その109年その2)の2010年版です。今年もコンビニ各チェーンのパンフを集めて比較をしてみました。あくまでも品揃えとプロモーション(と商標)の話であって、味の比較ではありませんので悪しからず。

昨年はサークル・ケイ・サンクス(CKS)がトルティーヤで当たった気配があった(?)ので、「次は惣菜系が増えるだろう」と予測しました。実際、とんかつなど揚げ物を巻いた恵方巻もどきが、寿司系以外のチェーンで少しずつ広まっているようです。しかしセブンイレブン(7-11)以外のコンビニチェーンは特に追いかけてはきませんでした。

7-11は、「牛しぐれ煮恵方巻」という、明らかに惣菜系に分類できる商品を出してきました。その代わり(サイズ違いやセットを無視すると)本来の太巻き寿司はついに実質1種類に収束することとなりました。対してデイリーヤマザキ(D-Y)やファミリーマート(FM)は、本来の太巻き寿司が中心になっています。とはいえ、恵方巻寿司のアイテムは、今後もうあまり増えそうにありません。

■全面展開型のCKS、周辺商品依存型のLawson
以下、各チェーンの商品について横並び比較、昨年の比較をしてみます。「寿司」「蕎麦」「スイーツ」「その他」それぞれの商品アイテム数を下に列挙しました。

アイテムは、共通して“松” “竹” “梅”で表現することにします。

梅:長さが15~18cmの長いもので、恵方巻としてスタンダードな商品
竹:大半が“海鮮”を売りにしているもの。7.5cmから9cmのハーフサイズがほとんどで、短い分、梅と単価はさほど変わらないか、もしくは安い場合もあります
松:竹に何らかのプラスがされた贅沢版で、やはりハーフサイズがほとんどです

実際には必ずしも上中下の差がないかもしれませんし、チェーンによって横並びできない感もありますが、便宜的にこのように記させてください。また、以下の説明で「3本セット」「2本セット」といった商品は、アイテムとして一切数えていません。

◇サークルケイサンクス(CKS)…計10アイテム(寿4、蕎2、ス2、他2)
全面展開型。昨年に続き最も商品種が多いチェーンです。寿司は松竹梅と梅ハーフの4アイテム。蕎麦の種類が昨年から2減の2アイテムとなったかわりに、ロールケーキ1増とすきやき丼が加わり、トータル10アイテム。

昨年に続き「トルティーヤ」があるのがこのチェーンの特徴です。ただし昨年のトルティーヤは長さ14cm×直径5cmだったのが、今年は15.5cm×3.5cmと細長くなりました(理由は不明)。新たに加わったロールケーキ「黒豆と栗の和ロール」は、昨年からLawsonが出している黒豆入りのロールケーキと少し似ていますが、スポンジの生地が海苔のように黒くなっているあたりがユニーク。

また、どうでもよい話題かもしれませんが、CKSのパンフレットがほんの少しだけ昨年より凝った作りになっています。A4判2つ折ですが、中心から折らずに「ご予約特典」が書かれた部分が折っても見えるような工夫がされています(冒頭写真中央下あたり)。

◇セブンイレブン(7-11)…計7アイテム(寿2、蕎3、ス1、他1)
話題作り型。昨年の有名人路線(森公美子プロデュース恵方巻)を踏襲し、今年はグッチ裕三監修の「牛しぐれ煮恵方巻」が前面に出ています。すでに触れた通り、これは本来の寿司ではなく“惣菜系”に分類できます。本来の「丸かぶり寿司」はレギュラーとミニサイズの2種類こそあれ、実質的には1種類(竹)しかなくなってしまいました。あとはほぼ昨年と同様の商品構成ですが、昨年あった「とん汁」がなくなり7アイテムとなりました。

◇ローソン(Lawson)…計7アイテム(寿2、蕎3、ス2、他0)
周辺商品依存型。昨年と同じ7アイテムで、内容的にはほとんど違いはありません。寿司は竹と梅の2アイテム。ただし、商品名が「丸かぶり寿司」から「恵方巻」に変わりました。バンフは昨年の2つ折り(見た目にはA5判サイズ)からA4判を折らない体裁に変わりました。個人的な感想ですが、ここが最も(本来の)恵方巻寿司に力を入れず、スイートと蕎麦に頼っている気がします。

◇スリーエフ(3F)…計6アイテム(寿3、蕎1、ス2、他0)
中庸型。昨年と同じ6アイテム。寿司は松竹梅の3種。ロールケーキの価格などが変わった以外、ほとんど違いがありません。パンフレットの体裁も見事に同じで、写真も昨年と同じものを全くそのまま使っています。いや、だから悪いというのではなく、定番化したらあえて金かけて毎年内容や写真に手を加えなくてもいいじゃないか、という意味でむしろ納得します。

なお3F系列の生鮮コンビニq’smart(キューズマート)でも、同じ恵方巻を扱っていました。ただし松と蕎麦(と3本セット)以外の4アイテムのみ。パンフはやはり3Fのものを流用していますが、片面印刷にしてコストを抑えています。なんだか、片面に情報が集まっているq’smartのパンフほうがかえってわかりやすい気がします。

生鮮コンビニで恵方巻を扱っていたチェーンは、確かめた限りではq’smart以外になかったようでした。「100円コンビニ」の路線とは合わないであろうことは容易に想像できますが…

◇エーエムピーエム(ampm)…計6アイテム(寿3、蕎1、ス2、他0)
中庸型。寿司は松竹梅の3種で大きな変化はありませんが、ロールケーキのプレミアム版が新たに加わり、昨年より1アイテム増の6アイテム。しかしこのプレミアム版は直径6.5cmと極太で、すでにかぶりつくものではなくなっているようです。単に切って食べるロールケーキを便乗して加えているだけと思われます。なお、報道されている通り、ampmはFMに吸収合併されました。現在の商品構成は今年で終わりとなるかもしれません。

◇ミニストップ(MiniS)…計4アイテム(寿2、蕎1、ス1、他0)
小規模型。商品構成もパンフも体裁も、昨年とほとんど同じ。寿司は竹と梅。

◇ファミリーマート(FM)…計3アイテム(寿3、蕎0、ス0、他0)
原点回帰型。3本入りセットの価格のみ若干値下げされていますが、それを除けば、価格や具の内容まで昨年とまったく同じの松竹梅。昨年も書きましたが、このチェーンは本来の寿司に特化している点で、CKSやLawsonと全く違う方針をとっています。

■サラダ巻! 穴子!
もう1件、昨年まで全然チェックしていなかったチェーン。

◇デイリーヤマザキ(D-Y)…計6アイテム(寿4、蕎1、ス1、他0)
原点重視型。松竹梅のほかに「丸かぶり寿司 サラダ巻」というものがあります。ツナとカニかまは入っているけど、下手に穴子とかもたれそうな海鮮モノを満載していないスッキリ感に好印象を持ちます。もしかしたら、このチェーンが最も「寿司」の王道を行っていそうな感じがあります(昨年以前の状況はまったく把握していません)。

さらにもう一つ、当サイトでしか注目しないくだらない視点(笑!)、「穴子が入っていない商品」を挙げると以下の通りです(なぜ穴子なのかについては、過去の記事とコメントを参照)。

→ CKSの竹、3Fの竹、ampmの竹、MiniSの竹、FMの松と竹、D-Yの竹とサラダ巻

先に触れたD-Yのサラダ巻を別にすると、これらのほとんどが「海鮮○○」で、サーモン、ししゃも、漬けマグロあたりが主役となった商品です。

*  *  *

恵方巻関連のこの春のニュースとしては、すでに09年その2のコメントで触れたように、「招福巻」商標に関する控訴審でイオンが鮨萬(すしまん)に逆転勝利したことでしょうか。コンビニ以外の恵方巻の件と商標の件は、記事を改めて書くことにします。

▽関連記事:
恵方巻2010(つづき)

年末の築地2009

年末の築地は元気です。場内場外とも賑わいをみせています。年々、訪れる一般客は増えていて、店や商店街も徐々にそうしたニーズに対応していることでしょう。市況の変調、市場設備の老朽化、新しい市場ビジョンなど、話題は尽きません。

市場写真4点
〔築地市場の風景4題〕

■“アメ横”化する? 築地界隈
昨年一昨年に続き、2009年もこの時期に築地中央卸売市場および築地場外商店街を見に行ってきました。商店の店先で景気を聞く限りでは「昨年より売り上げは上がっていない」とのことですが、ほかの商業地に比べるとこの賑わいはハンパではありません。もともとはプロが商売をする場であったこの地域に一般客が多数訪れるようになりました。様子がある日突然変わるというのではなく、年々少しずつ変化しているように思えます。

築地場内(中卸)と場外(商店街)において、
プロ向け(卸売):一般向け(小売)
の商売の軸足はどの程度の比率にあるのでしょうか。

売上高とか顧客数とかではなく、商売の重要度みたいなものをイメージしてみてみましょう。あくまでも個人的な印象ですが、次のように表現できそうです。
・10年前… 場内 10:0 、場外 9:1
・5年前… 場内 9:1 、場外 8:2
・今(日常)… 場内 9:1 、場外 7:3
・今(年末)… 場内 7:3 、場外 5:5

昨年の記事でも書きましたが、場内奥深くまで子供連れの家族が多数入り込んでいます(写真右上)。外国人客が多いのはいつものことですが、たとえば、場内の中卸人がマグロなどの解体をしている現場を家族で見学している(写真左上)なんて風景も全然珍しくありません。場内でさえこれですから、場外はもうアメ横状態です。

「年末は築地へ行こう!=場外市場で「安い魚」をゲット」(時事ドットコム)リンク切れ

中央卸売市場は30日が年内最終市となるため、場外市場の店もほとんどが同日で年内の営業を終えていたが、「近年は31日も多くの消費者が築地へやってくるため、店を開けるところが増えた」(同協議会事務局)と話す。

ある方に伺ったら「これまでも31日に店を開いているところは多数あった。でも31日は掃除とかが主で、本気で商売しているとはいえない。むしろ休市日に扱っている商品は“売れ残り品”の類かもしれず、アヤシイ」との意見も。確かに、市場ありきで考えればそうかもしれません。でも、いまや冷凍・チルドの技術も上がっているし、場内はともかく場外市場は生鮮より加工品の店が多いですから、大晦日まで真面目に商売をやろうとすれば、それは決して難しいことではないはず。一方、築地を“アメ横”視して訪れる一般客が多数いるのは確実なだけに、たぶん今後、大晦日の場外市場は地域全体で一般客対応の(本気の)商売が進むと予測します。

■年末に売れるはずのものが売れない
築地に限りませんが、経済状況の影響で生鮮品の市況は変調をきたしているようです。これまではいくら不況でも年末には必ず売れていた商品が、昨年くらいから動かないとの声が多数でています。

「デフレ裏付ける生鮮市況」(日本経済新聞2009/12/01朝刊)
「マグロ卸値が下落 冷凍メバチ、前週比13%安」(日本経済新聞2009/12/22朝刊)リンク切れ

歳末商戦を迎えた12月にマグロの価格が下がる「異例の事態」が2年連続で起こっている。

従来なら、歳末のように需要が集中する時期や供給が減る事態があれば、市場原理が働いて卸値が上昇し売上高も増えたとされます。しかし今はそれでも卸値が下がったり売れ行きが見込めないという異変に直面することが多く、その影響は昨年以上とのこと。卸の売り上げが伸びないとすれば、築地の業者がせっかく訪れる一般向けチャンスを見逃す選択肢はありません。もっとも、一般客向けの売り上げは卸以上にとらえどころが難しいかもしれませんが…

■老朽化する築地の設備
築地の豊洲移転はますます混迷しています。しかしながら、これも昨年の記事で触れましたが、築地の建物の老朽化は何とかしなければなりません。

「築地市場で事故続発、過密深刻化」(産経新聞)
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/tokyo/091225/tky0912251833009-n1.htm

先月から今月にかけ鉄板などが落下する事故が続発し、年末の緊急点検と修理に追われている。落下したのは約1メートル幅約8センチの薄い鉄板と、長さ約15センチ縦横約5センチのコンクリート片。

幸いけが人はなかったようですが、少し大きな地震がきたら簡単に落ちるところが出てきそうです。落下物を受け止める網を張ったり、モルタルによる補修工事をすることで対応しているそうですが、これは何とかしなければなりませんね。冒頭写真の左下はこの事故の対応個所ではないと思いますが、こんなふうに応急的と思われる対応個所はあちこちにありそうです。

築地再整備だ豊洲移転だと、政治的意図を背景にした人たちが不毛な戦いをしているようです。東京都議会でも主導権を握った民主党が「移転を強引に進める予算は計上するな」と要望を出しているようです。結局中央卸売市場という形態が(たぶん予想を超えて)大きく質的量的に変化していくのでしょうから、どちらに市場があっても官営である限りは衰退が約束されているようなものです。どうせなら、危機対応(早期決着)を優先させて、ジャンケンで決めてみてはいかがでしょうか。

農林水産省ではこの秋から「卸売市場の将来方向に関する研究会」なるものを精力的に進めているようです。
http://www.maff.go.jp/j/soushoku/ryutu/sizyou_kenkyu/index.html

ほかにも民間主導で、「市場流通ビジョンを考える会」といった組織が、これからの流通ビジョンをとりまとめようとしてるとの報道がありました。これらについて、詳細な情報が出てくるのを待ちたいところです。

*  *  *

最後に、冒頭写真の右下。築地場内で見た大きなマンボウの写真です。「写真料払ってね!」などと、店の人から冗談を飛ばされました。いつも刺激があり、面白い場所です。

▽関連情報
築地場外市場~変化こそ常道 築地市場現在地再整備案公表