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恵方巻2010(コンビニ)

恵方巻の品揃えは、コンビニチェーンによって方針に違いが見られます。どちらかというと本来の丸かぶり寿司からスイーツや惣菜系に力が入るようになっている流れは、今年も変わっていません。商品によってはもはや恵方巻の範疇から完全に逸脱か(笑)

恵方巻パンフ2010年
〔コンビニの恵方巻パンフレット、2010年〕

■7-11の寿司アイテムは実質1種類に収束
なぜか毎年続けている(勢いで続けざるを得なくなっている?)恵方巻の話(07年08年09年その109年その2)の2010年版です。今年もコンビニ各チェーンのパンフを集めて比較をしてみました。あくまでも品揃えとプロモーション(と商標)の話であって、味の比較ではありませんので悪しからず。

昨年はサークル・ケイ・サンクス(CKS)がトルティーヤで当たった気配があった(?)ので、「次は惣菜系が増えるだろう」と予測しました。実際、とんかつなど揚げ物を巻いた恵方巻もどきが、寿司系以外のチェーンで少しずつ広まっているようです。しかしセブンイレブン(7-11)以外のコンビニチェーンは特に追いかけてはきませんでした。

7-11は、「牛しぐれ煮恵方巻」という、明らかに惣菜系に分類できる商品を出してきました。その代わり(サイズ違いやセットを無視すると)本来の太巻き寿司はついに実質1種類に収束することとなりました。対してデイリーヤマザキ(D-Y)やファミリーマート(FM)は、本来の太巻き寿司が中心になっています。とはいえ、恵方巻寿司のアイテムは、今後もうあまり増えそうにありません。

■全面展開型のCKS、周辺商品依存型のLawson
以下、各チェーンの商品について横並び比較、昨年の比較をしてみます。「寿司」「蕎麦」「スイーツ」「その他」それぞれの商品アイテム数を下に列挙しました。

アイテムは、共通して“松” “竹” “梅”で表現することにします。

梅:長さが15~18cmの長いもので、恵方巻としてスタンダードな商品
竹:大半が“海鮮”を売りにしているもの。7.5cmから9cmのハーフサイズがほとんどで、短い分、梅と単価はさほど変わらないか、もしくは安い場合もあります
松:竹に何らかのプラスがされた贅沢版で、やはりハーフサイズがほとんどです

実際には必ずしも上中下の差がないかもしれませんし、チェーンによって横並びできない感もありますが、便宜的にこのように記させてください。また、以下の説明で「3本セット」「2本セット」といった商品は、アイテムとして一切数えていません。

◇サークルケイサンクス(CKS)…計10アイテム(寿4、蕎2、ス2、他2)
全面展開型。昨年に続き最も商品種が多いチェーンです。寿司は松竹梅と梅ハーフの4アイテム。蕎麦の種類が昨年から2減の2アイテムとなったかわりに、ロールケーキ1増とすきやき丼が加わり、トータル10アイテム。

昨年に続き「トルティーヤ」があるのがこのチェーンの特徴です。ただし昨年のトルティーヤは長さ14cm×直径5cmだったのが、今年は15.5cm×3.5cmと細長くなりました(理由は不明)。新たに加わったロールケーキ「黒豆と栗の和ロール」は、昨年からLawsonが出している黒豆入りのロールケーキと少し似ていますが、スポンジの生地が海苔のように黒くなっているあたりがユニーク。

また、どうでもよい話題かもしれませんが、CKSのパンフレットがほんの少しだけ昨年より凝った作りになっています。A4判2つ折ですが、中心から折らずに「ご予約特典」が書かれた部分が折っても見えるような工夫がされています(冒頭写真中央下あたり)。

◇セブンイレブン(7-11)…計7アイテム(寿2、蕎3、ス1、他1)
話題作り型。昨年の有名人路線(森公美子プロデュース恵方巻)を踏襲し、今年はグッチ裕三監修の「牛しぐれ煮恵方巻」が前面に出ています。すでに触れた通り、これは本来の寿司ではなく“惣菜系”に分類できます。本来の「丸かぶり寿司」はレギュラーとミニサイズの2種類こそあれ、実質的には1種類(竹)しかなくなってしまいました。あとはほぼ昨年と同様の商品構成ですが、昨年あった「とん汁」がなくなり7アイテムとなりました。

◇ローソン(Lawson)…計7アイテム(寿2、蕎3、ス2、他0)
周辺商品依存型。昨年と同じ7アイテムで、内容的にはほとんど違いはありません。寿司は竹と梅の2アイテム。ただし、商品名が「丸かぶり寿司」から「恵方巻」に変わりました。バンフは昨年の2つ折り(見た目にはA5判サイズ)からA4判を折らない体裁に変わりました。個人的な感想ですが、ここが最も(本来の)恵方巻寿司に力を入れず、スイートと蕎麦に頼っている気がします。

◇スリーエフ(3F)…計6アイテム(寿3、蕎1、ス2、他0)
中庸型。昨年と同じ6アイテム。寿司は松竹梅の3種。ロールケーキの価格などが変わった以外、ほとんど違いがありません。パンフレットの体裁も見事に同じで、写真も昨年と同じものを全くそのまま使っています。いや、だから悪いというのではなく、定番化したらあえて金かけて毎年内容や写真に手を加えなくてもいいじゃないか、という意味でむしろ納得します。

なお3F系列の生鮮コンビニq’smart(キューズマート)でも、同じ恵方巻を扱っていました。ただし松と蕎麦(と3本セット)以外の4アイテムのみ。パンフはやはり3Fのものを流用していますが、片面印刷にしてコストを抑えています。なんだか、片面に情報が集まっているq’smartのパンフほうがかえってわかりやすい気がします。

生鮮コンビニで恵方巻を扱っていたチェーンは、確かめた限りではq’smart以外になかったようでした。「100円コンビニ」の路線とは合わないであろうことは容易に想像できますが…

◇エーエムピーエム(ampm)…計6アイテム(寿3、蕎1、ス2、他0)
中庸型。寿司は松竹梅の3種で大きな変化はありませんが、ロールケーキのプレミアム版が新たに加わり、昨年より1アイテム増の6アイテム。しかしこのプレミアム版は直径6.5cmと極太で、すでにかぶりつくものではなくなっているようです。単に切って食べるロールケーキを便乗して加えているだけと思われます。なお、報道されている通り、ampmはFMに吸収合併されました。現在の商品構成は今年で終わりとなるかもしれません。

◇ミニストップ(MiniS)…計4アイテム(寿2、蕎1、ス1、他0)
小規模型。商品構成もパンフも体裁も、昨年とほとんど同じ。寿司は竹と梅。

◇ファミリーマート(FM)…計3アイテム(寿3、蕎0、ス0、他0)
原点回帰型。3本入りセットの価格のみ若干値下げされていますが、それを除けば、価格や具の内容まで昨年とまったく同じの松竹梅。昨年も書きましたが、このチェーンは本来の寿司に特化している点で、CKSやLawsonと全く違う方針をとっています。

■サラダ巻! 穴子!
もう1件、昨年まで全然チェックしていなかったチェーン。

◇デイリーヤマザキ(D-Y)…計6アイテム(寿4、蕎1、ス1、他0)
原点重視型。松竹梅のほかに「丸かぶり寿司 サラダ巻」というものがあります。ツナとカニかまは入っているけど、下手に穴子とかもたれそうな海鮮モノを満載していないスッキリ感に好印象を持ちます。もしかしたら、このチェーンが最も「寿司」の王道を行っていそうな感じがあります(昨年以前の状況はまったく把握していません)。

さらにもう一つ、当サイトでしか注目しないくだらない視点(笑!)、「穴子が入っていない商品」を挙げると以下の通りです(なぜ穴子なのかについては、過去の記事とコメントを参照)。

→ CKSの竹、3Fの竹、ampmの竹、MiniSの竹、FMの松と竹、D-Yの竹とサラダ巻

先に触れたD-Yのサラダ巻を別にすると、これらのほとんどが「海鮮○○」で、サーモン、ししゃも、漬けマグロあたりが主役となった商品です。

*  *  *

恵方巻関連のこの春のニュースとしては、すでに09年その2のコメントで触れたように、「招福巻」商標に関する控訴審でイオンが鮨萬(すしまん)に逆転勝利したことでしょうか。コンビニ以外の恵方巻の件と商標の件は、記事を改めて書くことにします。

▽関連記事:
恵方巻2010(つづき)

恵方巻2009(コンビニ)

節分に発売される恵方巻。スイーツやトルティーヤへと商品範囲が広がっていますが、肝心の寿司はアイテム数が微減です。コンビニ・チェーンにより対応の違いもみられます。商標についてはあらかた結論が出たようです。

恵方巻パンフ2009年
〔コンビニの恵方巻パンフレット、2009年〕

■恵方巻の種類はやや減
一昨年の「恵方巻」商標は登録ならず。安心して使えそう、昨年の恵方巻商戦は定着したのかに続く記事です。コンビニ各社の恵方巻ビジネスと商標利用の様子をあらためて確かめてみました。

首都圏主要7社(冒頭パンフ参照)の予約販売パンフおよびニュースリリースをみると、節分の予約可能商品のアイテム数が毎年増えています。といっても、スイーツや蕎麦類が加わって増えているのであり、寿司としての恵方巻のアイテム数は減少気味です。概ね次の3アイテムで打ち止めのようです。

・スタンダード(ロングサイズ)…並
・ハーフサイズ(主に海鮮巻)…中
・ハイグレード(大きさはハーフ)…上

セブンイレブン(7-11)は有名人プロデュース版に走りましたが、アイテム数は1減です。スリーエフ(3F)も1アイテム減。ローソン(Lawson)は昨年出した「上海鮮」がなくなり1減で2アイテムに。ミニストップ(MiniS)はもともと2アイテム。サークルKサンクス(CKS)のみがスタンダード版にロングサイズとハーフサイズがあり計4アイテムになっています。

増えているのが節分蕎麦の種類。CKSは4アイテムもあります。一方、一昨年から注目されている恵方もどきスイーツ商戦にエーエムピーエム(ampm)が参戦し、7社中ファミリーマート(FM)を除く6社に1~2アイテムのロールケーキが準備されています。

■恵方トルティーヤの次は何だ!
さらにCKSは「恵方トルティーヤ」なる新製品を加えました。この恵方トルティーヤが今年の“当たり商品”と評判で、予約状況は好調とのこと。まちがいなく来年は、この手の惣菜ものを他のチェーンも出してくることでしょう。恵方トルティーヤではないかもしれませんが、恵方タコスか、恵方ピザか、はたまた恵方コロッケロール、恵方ホットドッグ、恵方しゅうまい、恵方シシカバブ…(???)。

まとめてみると、次の通りです(セットを除く)。
CKS…計10アイテム(寿4、蕎4、ス1、他1)
7-11…計8アイテム(寿3、蕎3、ス1、他1)
Lawson…計7アイテム(寿2、蕎3、ス2、他0)
3F…計6アイテム(寿3、蕎1、ス2、他0)
ampm…計5アイテム(寿3、蕎1、ス1、他0)
MiniS…計4アイテム(寿2、蕎1、ス1、他0)
FM…計3アイテム(寿3、蕎0、ス0、他0)

FMだけが“律儀に”恵方巻文化の王道を守っているかのようです(笑)。以前あった蕎麦はとうにリストから外れていますし、関連商品として用意しているらしいスイーツ(チョコデニッシュロールとチョコバナナロール)も、パンフの予約販売品としては掲げていません。流行り廃りに変に惑わされた方針をとることが少ないこのチェーンらしさを感じます。

■パンフが大きくなった
消費者にはどうでもよいことかもしれませんが、FM、3F、Lawsonなどのパンフのサイズが、昨年のB5またはA5判からA4判へと大きくなりました。7社中6社がA4判サイズです(ampmのみA5判)。アイテム数が増えたことと関連しているのかどうか。あるいは恵方巻だけの問題ではなく、標準的なパンフを入れるラックの大きさに関係しているのか、真相は確かめていません。

一昨年と昨年でパンフの体裁がほとんど変化なかったこと(昨年の記事参照)と比べると、今年は各社とも恵方巻商戦のPR方法を少し練り直している気配があります。今後も、毎年ではなく2年くらいのサイクルでパンフの体裁の変化があるのかもとか、くだらぬ予測をしてみます。

■すし「恵方巻」はOKだが「恵方」はNG?
もともとこのサイトで恵方巻を採り上げたのは、恵方巻そのものに対する興味というより、「恵方巻」という名称が防御的な立場から商標出願され、その登録が07年1月に拒絶→(出願者の思惑通り)事実上普通名詞として認められた、というニュースを書いたことにありました(一昨年の記事参照)。

ここ数年について各社のニュースリリースから判断すると、商品の基本表記は次の通り。3Fのみがズバリ「恵方巻」表記を続けています。

7-11…「丸かぶり寿司(恵方巻)」
FM…「まるかぶり寿司」
Lawson…「丸かぶり寿司」
CKS…「丸かぶり恵方寿司」
3F…「恵方巻」
MiniS…「幸福恵方巻」
ampm…07年まで「節分丸かぶり寿司」→08年「恵方巻」→09年「節分恵方巻」

ampmを除き各社5年位変化はありません。「恵方巻」派より「丸かぶり」派が多数を占めますね。ampmのみここ2年微妙に動いています。
また、ミツカングループが権利者とした商標

・「丸かぶり」(区分29,30、ただし「すしを除く」 登録#5000706)

の登録が2006年に成立していることを昨年の記事で触れましたが、やはり同じミツカングループが次の登録をしていました。

・「恵方」(区分29,30 登録#5044683)

出願が06年2月、登録が07年4月なので、昨年の記事執筆時点ですでに公開されていたはずですが、当方では見落としていたようです。「丸かぶり」が「すし」について他者からの異議申立の審査を通じて商標登録が取り消されたのに対し、「恵方」についてはそのような情報は見当たりません。つまり寿司として「恵方巻」や「丸かぶり」の商品名は安心して使えますが「恵方」とすると商標権者の権利に引っかかる可能性があるということになります。ホントかな。

■「恵方ロール」表記はNGか?
ほかに関連した登録商標としては次のものが見つかりました。

・「恵方ロール」(区分30 ロール状の菓子及びパン 登録#4820803)
権利者は「倉田包装株式会社」(東京都台東区)。04年11月登録。
・「サザエ\恵方巻」(区分30 巻きすし、いなり 登録#5109502)
・「百味千菜\恵方巻」(区分30 巻きすし、いなり 登録#5109501)
いずれも権利者は「サザエ食品株式会社」(札幌市)。08年2月登録。

「恵方ロール」については今後注意が必要そうですね。といっても、絶対的に価値のある名称ではないでしょう。いまさらこれらの商標利用が不如意になったとしても、ビジネスに影響はほとんどないだろうと予測します。

もう1つ、「招福巻」という登録商標があります。これに関して係争が起こり、昨年10月に出た判決では、被告である大手スーパーイオンが敗訴しました。この件については、記事をあらためて書くことにします。

▽関連記事:
スーパーマーケットの恵方巻

恵方巻商戦は定着したのか

今年も恵方巻商戦が華やかでした。1年前に「「恵方巻」商標は登録ならず…」という記事を書きましたが、その後大きな変化はないようです。各社知恵を出して付加価値をつけた恵方巻商品を出しているようですが、少し迷走している気がしないでもありません。

恵方巻パンフ2008年
〔コンビニの恵方巻パンフ、2008年〕

■昨年とほとんど変わらないパンフ
ちょうど1年前に「「恵方巻」商標は登録ならず。安心して使えそう」という記事を書きました。「恵方巻」商標(区分30 すし)が出願されたが、登録されなかったこと。出願は寿司関連の業界団体と関連のある企業が防御的な立場から出願したもので、「特定企業などに独占させない」が目的だったこと。結果的にその目的が達せられ、この言葉を誰もが安心して使えるようになったことを説明しました。

今年の節分もまた、いろいろな企業が恵方巻のお客さん獲得に奔走しています。1年経って何か変わったかというと、商品名がらみではほとんど変わりないようですね。「恵方巻」と呼ぼうが「まるかぶり寿司」と呼ぼうが、いまさらあまり大きな問題ではないのでしょう。コンビニ各社についていえば、エーエム・ピーエムが商品の名称を「まるかぶり寿司(恵方巻)」から「恵方巻」に変えたことくらいです。昨年のパンフと今年のものを比べてみても、ほとんど違いがないようです。

そもそもコンビニ各社の恵方巻パンフは、キャッチコピーばかりでなく、パンフの体裁や写真の撮り方までもほとんど昨年と同じ。“面倒なので昨年のやり方をそのまま踏襲しました”という雰囲気です。営業的にもルーチン化しているのでしょう。

商標登録に関して、昨年ご紹介したものほかに、次のようなものがあるようです。

・「恵方巻き」(区分30 菓子)
出願人は岡山の源吉兆庵という和菓子の製造販売の会社のようです。昨年紹介した「恵方巻」商標が拒絶された2007年1月16日のすぐ翌日、1月17日に出願しているあたりに何らかの意図も感じさせますが、これも昨12月21日に拒絶査定がでています。

・「丸かぶり」(区分29、区分30)
ミツカングループが権利者で、登録は2006年に成立しています。多数の商品ジャンルが対象になっているようですが、「すしを除く」とのことです(※)。

(※) どうもこの件は、「すし」についてのみ、異議申立の審査を通じて商標登録が取り消されたようです。
参考:商標審決データベース

■ロールケーキ増える
コンビニ商品で変わったという意味では、各社の商品種が増えています。傾向は次の2点。

・“上”ランク
ファミリーマートの「上恵方巻」、サークルKサンクスの「極(きわみ)の恵方寿司」、ローソンの「ふっくら煮穴子の上海鮮丸かぶり寿司」。いずれも高級なバージョンです。昨年までに各社からほぼ出揃っていたハーフサイズの「海鮮恵方巻」や通常の「恵方巻」とあわせ、“上” “中” “下”のようなランク付けが定着したということなのでしょうか。

・甘党向きのケーキ
昨年セブン・イレブンとスリーエフが恵方巻と似たロールケーキを発売しましたが、今年はローソンとサークルKサンクスが追いかけ、同じような「節分ロールケーキ」を発売しています。スリーエフについては、昨年の「丸かぶりロール」に加え「プレミアム丸かぶりロール」なる“ケーキの上”バージョンが加わり2種類出しています。

■太巻きでなくなりつつある?
なおセブン・イレブンは恵方巻にあたるものは昨年と価格も商品名もまったく同じですが、「節分手巻寿司3本」というハーフサイズよりさらにわずかに小ぶりの普通の巻き寿司がパンフに加わっています。普通すぎて恵方巻と名付けるほどでもないのでしょうか。であれば、わざわざ「恵方巻」と名付けられていなくても、通常の巻寿司なり何なりを食べればよいような。

市場で受け入れられる恵方巻を追求したら、ケーキになってしまったり、短くなったり、細くなったり…。コンビニではなくダイエーの話ですが、今年出した恵方巻は「京都の清水寺で祈祷した海苔」を使っていることを売りにしているとか…。付加価値のつけ方もいろいろあるようですが、少し迷走している気がしないでもありません。

ともあれ、今年も恵方巻商戦の前線では、ノルマを達成するために何本も買い、数日間恵方巻を食べ続ける人がいることでしょう。まぁ、イベント物となれば、恵方巻に限らない話かもしれませんが。

コンビニ 7-新業態店の撤退とその後

昨年から今年にかけてコンビニの新型店舗が次々に開店していましたが、そのうちのいくつかが相次いで閉店してしまいました。もともと実験的で早期の撤退が予想できたものもありましたが、やはり“屍累々”といった様子です。

CVS閉店写真
〔撤退したCVSや近隣業態の店舗〕

■店先に「閉店のお知らせ」
飽和したといわれるコンビニ業界では、少し前から新業態の開発に躍起になってきました。ローソン、サンクス、am/pmなど、それぞれ昨年の間に新型店をいくつも開店しています。大きく分けて

・女性向けコンセプトの店舗
・生鮮100円ショップ型の店舗

があることを、本サイトでも「コンビニ 1-新業態、増える」「コンビニ 2-付加価値型の“実験店”」「コンビニ 3-生鮮品揃えと均一価格」と記事をまとめました。また、近隣業態からのコンビニに近い店舗進出も目立ちました(コンビニ 5-低くなった業界の垣根)。

これらのうちいくつかが、すでに撤退してしまいました。もともと実験店舗、つまり新しいチャレンジとしての位置付けのものも少なくないのですぐ変化するだろうとは思いましたが、やはり時間の流れは速いようです。

→am/pmが開いた女性向けコンビニとして注目された「HAPPILY(ハピリィ)」は、07年5月末に閉店
→同じくam/pmの生鮮型100円ショップ「FoodStyle」は、エリアフランチャイズ制をとっている広島の数店を除き07年夏にほとんど撤退
→ローソンの「ナチュラルローソン ベーカリー」は07年8月末に閉店
→ドンキホーテの「パワーコンビニ 情熱空間」5店舗は07年10月10日に閉店
といった有様です(写真)。

■客層が絞られすぎた
「HAPPILY」は当初から相当苦戦したようです。当初の24時間営業から、夜間は閉店に変えるなど工夫した様子もありました。店の狙いを絞るとしても、結局は顧客が絞られたことで売上減を招いたとの見方が一般的です。多店舗化の構想があえなく挫折した事例といえます。

am/pmについては、生鮮100円ショップ型の「FoodStyle」も撤退しました。他社ではそこそこ商圏に根付いているようにも見える“生鮮型コンビニ”ですが、am/pmは真っ先にあきらめたことになります。アドバンテッジパートナーズという投資会社出身の経営者が就任したこともあり、過去の投資が見直されているのは自然なことでしょう。

最も先鋭的に新業態店のチャレンジをしているローソンについては、はじめから試行錯誤の意図があるのでしょう。銀座の「ナチュラルローソン ベーカリー」は実験店と位置付けされていましたので、ひっそりと閉店しても、まぁ別に驚きません(すぐ近くの「ナチュラルローソン」は営業を続けています)。開店時と違い、閉店時にはニュースリリースの一つもありません…

日本橋にあった「ハッピーローソン」については、そもそも日本橋の土地利用が期間限定だったこともあり、計画とおり半年で閉店。そのかわり、入れ替わりで横浜にハッピーローソン山下公園店がオープンしています。

「パワーコンビニ 情熱空間」は、外からの参入組として一時かなり注目されたドンキホーテの事業でしたが、続きませんでした。開店していた期間は最も古い渋谷西原店でも1年2カ月。最も新しかった八王子横山町店は半年経っていません。正直、以前渋谷西原店を訪れたときの、広い割に閑散とした店内の様子を思い起こすと、さもありなんと思います。

ドンキホーテのニュースリリースによると「異なる業態を同時に推し進めるのではなく、経営資源を集中すべきとの結論」とのこと。閉店のニュースリリースを出している分、ひっそり閉店していくより潔いかもしれません。

■失敗の中から学ぶ?
以前の記事でも触れましたが、Shop99を展開している九九プラスはローソンの傘下に入りました。ローソンストア100はその関係で出展方法を見直し。Shop99といずれ運営形態が近づいていくのでしょう。“力ずく”による一番手確保かもしれませんが、いちおうは勝ち組としてよいのでしょうか。

新業態のチャレンジ失敗も、業界全体としてみると良い経験なのでしょう。事業ですから、失敗を繰り返してレベルも上がっていくことと、前向きに捉えたい所です。

最大手のセブンイレブンと(それに次ぐ?)ファミリーマートは新業態に目もくれていない様子ですが、基本型店舗の充実の延長で、各社の失敗、成功を取り入れようとしていることでしょう。

基本的には、中央集権的な考え方から個店の個性尊重の考え方に少しずつ変化しているように見えますが、本当のところまだよくわかりません。少し前までどのコンビニでも売っていたお気に入りの商品だったのに、あるときからぱったり、どのコンビニに行っても売っていない… そんなことがよくあります。なかなか個店尊重は遠そうな気がします。

コンビニ 6-“本部には内緒にしてね!”

コンビニでも個店重視の動きが高まっているようです。しかしチェーン一律均一のFCシステムで、個性を出すことは可能なのでしょうか。システム作りの過程で、電子マネーもその一翼を担うことになるのでしょう。

CVSマップ3
〔システム作りを踏まえた小売店舗チェーン作り〕

■店オリジナル? のファスト・フード現わる
コンビニ 4-個性の追求は難しいで、「コンビニは、標準化された便利さの代わりに、個々の商店の個性や面白さを犠牲にしている」といったシニカルな表現をしました。

しかし、このところの各コンビニ本部の動きをみると、地域や個々の環境によって店作りに違いを出そうとする方向性が強まっています。まだまだ胎動期かもしませんが、コンビニ・チェーンの将来像を示唆しているのでしょう。

つい最近セブン-イレブンのある店内で見かけたのが、ストア・オリジナルとも思わせるあるファスト・フード。
「当店だけで扱っている商品です。本部には内緒にしてね」
という手書きのPOPが掲げられていました。全国的に一律で販売されている商品だけではなく、その店でしか売っていない商品もあるようにアピールされると、やはりその店に足を運んでみたくなるものです。

もっともこのケースでは、POPにあるような「本部には内緒」ではなかったはずです。本部のスーパバイザーは頻繁に店に訪れその商品を目にするはずですし、もし本当に店の独断でオリジナル商品を売りたかったらそんなPOPを掲げるはずもありません。その店はセブン-イレブンでも日販100万円近くいく優良店と思われます(※注)ので、たぶん本部(少なくとも地域の統括部)もグルになった実験的な試みだったのだろうと思われます。

※ セブン-イレブンの場合、都市の標準的なモデル店舗で日販60万円強、それ以外のコンビニ・チェーンでは日販45万円前後という。

■セブン-イレブンが個店対応の動き
コンビニの店作りについて、コンビニ 1-新業態、増えるコンビニ 2-付加価値型の“実験店”コンビニ 3-生鮮品揃えと均一価格、といった事例を記事にしてきました。しかし業界リーダーのセブン-イレブン(およびファミリーマート)は安易な新業態作りには踏み出さず、「コンビニ基本型」育成に注力しているようです。生鮮食料品やファスト・フード(対面カウンターから提供するという意味で「カウンター・フード」と呼んでいるらしい)についてそれぞれ既存店で実験しているようですが、それによって新業態を立ち上げようとはしていません。

だからといってセブン-イレブンが保守的というわけではありません。飽和状態のコンビニの将来が悲観的にみられるなかで、鈴木敏文セブン&アイ会長はマスコミのインタビューに答えて「コンビニはまだまだ未完成である」といった旨の発言をしているようです。これは例えば生鮮小売店なりファスト・フードなり、その他個性のある小売店が日常的に提供しているサービスのなかで、今のセブン-イレブンが役割として提供できていないものがあることを認識しているからでしょう。

今セブン-イレブンが力を入れているのは
・デリバリーと御用聞き
・カウンター・フード
・電子マネーnanacoの普及
でしょうか。あと、日本ではありませんが、中国に進出したセブン-イレブンの店では
・量り売り
も実現されているようです。

大きくみれば、個々の店の個性作り(その前提として個々の顧客への対応力、付加価値型のオペレーション充実)に方向性が向いているのではないかと推測します。

■コンビニのシステム作りはまだまだこれから?
冒頭の図〔上〕のマップは、コンビニ 4で作成した図と同じものです。

生鮮コンビニはある一定数の店舗が展開されていますが、“提供している商品・サービスの価値が不十分”であることが常に課題になっています。ローソンは生鮮コンビニのSHOP99(99プラス)に資本提携したことで、「ローソンストア100」の展開は“打ち止め”となりました。「Gooz」や「ForkTalk」は、“コンビニ派生型”という枠の外に行ってしまった感があります。女性向けコンビニ「Happily」は、ターゲットの絞りすぎなどが原因で“売上を落とした店”と認識されているようです。ようするに数々出現したコンビニ新業態は、結局コンビニと基本的に別の業態になるか、または基本型に舞い戻るかのどちらかに向かっていると思われます。

これらと違ってセブン-イレブンは、冒頭の図〔下〕のようなイメージでアプローチしているように思えます。つまり、他業態の成功をみて平面的に展開しようとしたローソン、サークルKサンクス、am/pm、スリーエフと異なり、「基本型のさらなるシステム化」を追求し、図で言うと“業態の平面”から抜けて立体的な仕組み作りをすすめている。そしてワープしたように個性重視型店舗を出現させる。それが結果的に生鮮小売店やファスト・フードに対抗できるような店になっている…。

なんて言うとセブン・イレブンばかり優れた戦略をとっているかのような言い方になってしまいますが、そう言いたいのではありません。ようするに「コンビニはまだまだ未完成である」という鈴木会長の言葉はおそらく正解で、高度になったと思われているコンビニのシステムも、小売システムとしてはまだまだ不十分なものということなのだと思います。

今後、とくに電子マネーnanacoは、セブン-イレブンの店舗個性作りに大きな役割を担うのかもしれません。「商品」を切り口に売れ筋の分析をしてきたPOSの機能と併せて、「顧客」を切り口にニーズ分析する機能を持ちうるわけですから。

もっともそれは売る側からみたときのメリットにすぎません。顧客からみたらnanacoを所有することの価値はどこまであるのか、かなり疑問もあることでしょう。