節分に発売される恵方巻。スイーツやトルティーヤへと商品範囲が広がっていますが、肝心の寿司はアイテム数が微減です。コンビニ・チェーンにより対応の違いもみられます。商標についてはあらかた結論が出たようです。
〔コンビニの恵方巻パンフレット、2009年〕
■恵方巻の種類はやや減
一昨年の「恵方巻」商標は登録ならず。安心して使えそう、昨年の恵方巻商戦は定着したのかに続く記事です。コンビニ各社の恵方巻ビジネスと商標利用の様子をあらためて確かめてみました。
首都圏主要7社(冒頭パンフ参照)の予約販売パンフおよびニュースリリースをみると、節分の予約可能商品のアイテム数が毎年増えています。といっても、スイーツや蕎麦類が加わって増えているのであり、寿司としての恵方巻のアイテム数は減少気味です。概ね次の3アイテムで打ち止めのようです。
・スタンダード(ロングサイズ)…並
・ハーフサイズ(主に海鮮巻)…中
・ハイグレード(大きさはハーフ)…上
セブンイレブン(7-11)は有名人プロデュース版に走りましたが、アイテム数は1減です。スリーエフ(3F)も1アイテム減。ローソン(Lawson)は昨年出した「上海鮮」がなくなり1減で2アイテムに。ミニストップ(MiniS)はもともと2アイテム。サークルKサンクス(CKS)のみがスタンダード版にロングサイズとハーフサイズがあり計4アイテムになっています。
増えているのが節分蕎麦の種類。CKSは4アイテムもあります。一方、一昨年から注目されている恵方もどきスイーツ商戦にエーエムピーエム(ampm)が参戦し、7社中ファミリーマート(FM)を除く6社に1~2アイテムのロールケーキが準備されています。
■恵方トルティーヤの次は何だ!
さらにCKSは「恵方トルティーヤ」なる新製品を加えました。この恵方トルティーヤが今年の“当たり商品”と評判で、予約状況は好調とのこと。まちがいなく来年は、この手の惣菜ものを他のチェーンも出してくることでしょう。恵方トルティーヤではないかもしれませんが、恵方タコスか、恵方ピザか、はたまた恵方コロッケロール、恵方ホットドッグ、恵方しゅうまい、恵方シシカバブ…(???)。
まとめてみると、次の通りです(セットを除く)。
CKS…計10アイテム(寿4、蕎4、ス1、他1)
7-11…計8アイテム(寿3、蕎3、ス1、他1)
Lawson…計7アイテム(寿2、蕎3、ス2、他0)
3F…計6アイテム(寿3、蕎1、ス2、他0)
ampm…計5アイテム(寿3、蕎1、ス1、他0)
MiniS…計4アイテム(寿2、蕎1、ス1、他0)
FM…計3アイテム(寿3、蕎0、ス0、他0)
FMだけが“律儀に”恵方巻文化の王道を守っているかのようです(笑)。以前あった蕎麦はとうにリストから外れていますし、関連商品として用意しているらしいスイーツ(チョコデニッシュロールとチョコバナナロール)も、パンフの予約販売品としては掲げていません。流行り廃りに変に惑わされた方針をとることが少ないこのチェーンらしさを感じます。
■パンフが大きくなった
消費者にはどうでもよいことかもしれませんが、FM、3F、Lawsonなどのパンフのサイズが、昨年のB5またはA5判からA4判へと大きくなりました。7社中6社がA4判サイズです(ampmのみA5判)。アイテム数が増えたことと関連しているのかどうか。あるいは恵方巻だけの問題ではなく、標準的なパンフを入れるラックの大きさに関係しているのか、真相は確かめていません。
一昨年と昨年でパンフの体裁がほとんど変化なかったこと(昨年の記事参照)と比べると、今年は各社とも恵方巻商戦のPR方法を少し練り直している気配があります。今後も、毎年ではなく2年くらいのサイクルでパンフの体裁の変化があるのかもとか、くだらぬ予測をしてみます。
■すし「恵方巻」はOKだが「恵方」はNG?
もともとこのサイトで恵方巻を採り上げたのは、恵方巻そのものに対する興味というより、「恵方巻」という名称が防御的な立場から商標出願され、その登録が07年1月に拒絶→(出願者の思惑通り)事実上普通名詞として認められた、というニュースを書いたことにありました(一昨年の記事参照)。
ここ数年について各社のニュースリリースから判断すると、商品の基本表記は次の通り。3Fのみがズバリ「恵方巻」表記を続けています。
7-11…「丸かぶり寿司(恵方巻)」
FM…「まるかぶり寿司」
Lawson…「丸かぶり寿司」
CKS…「丸かぶり恵方寿司」
3F…「恵方巻」
MiniS…「幸福恵方巻」
ampm…07年まで「節分丸かぶり寿司」→08年「恵方巻」→09年「節分恵方巻」
ampmを除き各社5年位変化はありません。「恵方巻」派より「丸かぶり」派が多数を占めますね。ampmのみここ2年微妙に動いています。
また、ミツカングループが権利者とした商標
・「丸かぶり」(区分29,30、ただし「すしを除く」 登録#5000706)
の登録が2006年に成立していることを昨年の記事で触れましたが、やはり同じミツカングループが次の登録をしていました。
・「恵方」(区分29,30 登録#5044683)
出願が06年2月、登録が07年4月なので、昨年の記事執筆時点ですでに公開されていたはずですが、当方では見落としていたようです。「丸かぶり」が「すし」について他者からの異議申立の審査を通じて商標登録が取り消されたのに対し、「恵方」についてはそのような情報は見当たりません。つまり寿司として「恵方巻」や「丸かぶり」の商品名は安心して使えますが「恵方」とすると商標権者の権利に引っかかる可能性があるということになります。ホントかな。
■「恵方ロール」表記はNGか?
ほかに関連した登録商標としては次のものが見つかりました。
・「恵方ロール」(区分30 ロール状の菓子及びパン 登録#4820803)
権利者は「倉田包装株式会社」(東京都台東区)。04年11月登録。
・「サザエ\恵方巻」(区分30 巻きすし、いなり 登録#5109502)
・「百味千菜\恵方巻」(区分30 巻きすし、いなり 登録#5109501)
いずれも権利者は「サザエ食品株式会社」(札幌市)。08年2月登録。
「恵方ロール」については今後注意が必要そうですね。といっても、絶対的に価値のある名称ではないでしょう。いまさらこれらの商標利用が不如意になったとしても、ビジネスに影響はほとんどないだろうと予測します。
もう1つ、「招福巻」という登録商標があります。これに関して係争が起こり、昨年10月に出た判決では、被告である大手スーパーイオンが敗訴しました。この件については、記事をあらためて書くことにします。
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