2017年に行われた南硫黄島調査をうけ、調査隊の隊員諸氏が集まって発表を行うシンポジウムが開かれました(2019年1月13日)。日本最後の“完全な島”。 東京都の担当課長からの挨拶が万雷の拍手を呼びました。
山の話、海の話、霧の話、虫の話、鳥の話。小笠原諸島中でも最も海洋島らしく、かつ人の手が入っていない島として、南硫黄島が素晴らしいところであることがよくわかるシンポジウムでした。東京都、首都大学東京、NHKの3者の合同プロジェクトです。
■日本で唯一の“自然島”?
小笠原や沖縄は多数の島で構成されますが、ほとんどの島は人の手が入っていて、自然の生態系が残された島はわずかしかありません。本質的に「島(海洋島)は、“欠如の生態系”で成り立っている」(川上和人氏、森林総合研究所、鳥類学者、今回の調査における研究コーディネーター、今回のシンポジウムの司会)とともに、大陸にはなく島でしかみられない貴重な生態系がある場所。しかしながら、外来の哺乳類(ネズミ、ネコなど)や爬虫類(トカゲなど)の侵入が、海鳥や固有種を絶滅に追いやってしまう歴史が繰り返されています。
調べてみると、外来哺乳類の侵入が防げている島は日本では南硫黄島が唯一とのことです。北硫黄島もかつては未侵入だったようですが、すでにクマネズミが入って来ていて、生態系は荒れてしまったそうです。火山列島3島(北硫黄島、硫黄島、南硫黄島)のうち、平らな硫黄島(先の戦争での激戦地)はもちろん、北硫黄島も人が居住した歴史があります。
南硫黄島のみ人や動物が容易に上陸できない絶壁で囲まれています。今回行われた科学的な調査(生物が持つ同位体の検査)からも、南硫黄島のみが外来哺乳類未侵入だった根拠が見いだせたとのことで、その内容も発表されました。
■行政からの挨拶に心のこもった拍手が!
内容についてはこれ以上あまり紹介する言葉を持たないので、解説は他に譲ります(それでいいのか? 笑)。しかし何より、シンポジウムの最後にあった東京都の担当課長からの挨拶が万雷の拍手を呼びたことが印象的でした。
「これからもこうした調査を、全力で取り組みさせていただきます」
そう言葉を書いただけでは全く想いは伝わらないかと思います。限られた予算をこのプロジェクトに投入していくだけの価値があるという意味を、実感として感じられたシンポジウムの現場だったのです。
南硫黄島の学術調査は、前回の2007年から数えて10年ぶり。過去、1982年に行われた調査を含めてわずか3回目。今回初めてわかった自然、生態系の事実は数多くありますが、「こうした調査は繰り返し行い、モニタリングしなければいけない」ことが伝わってきます。
写真、パネル展は都庁ホールにて30日まで開かれています。NHKでも引き続き、いくつか南硫黄島に関連した番組が予定されています。
(参考:シンポジウムに参加された方のレポート)
行ってきました!「南硫黄島シンポジウム」