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身体を測る 10-「最新・疲労の科学(医学のあゆみ)」

“疲労を科学的に測る”手法が、結構身近になりつつあります。テレビの科学番組などでも採り上げられることが増えました。研究論文がまとめられ、専門医学誌に特集として「疲労の科学」が掲載された号をご紹介します。

「最新・疲労の科学」
【「最新・疲労の科学」医学のあゆみ第228巻・第6号、2009年2月7日、医歯薬出版刊】

■疲労のメカニズムから疲労回復のためのサプリまで
先日、大阪市立大学21世紀COEプログラム「疲労克服研究教育拠点の形成」主催(大阪産業創造館 共催)の「疲労を斬る!! ~疲れない、疲れを取るための商品・サービスづくりを目指す~」という公開シンポジウムを聴きに行き、その時に購入した本です。副題は「日本発:抗疲労・抗過労への提言」。同シンポジウムの発表内容などが満載された論文集です。

まず「疲労とは何か」という漠然とした問いかけに対し、現時点での科学的な考え方といくつかの仮説が提示されます。次にいくつかの代表的な疲労計測方法について、その手法と研究結果が示されています。さらに、疲労と疾患との関係や、診断・治療の指針または可能性に関する論文数本。最後に、疲れを取るためのサプリメント(トクホ商品)開発などの取り組みが、きちんとした研究データをもとに語られています。

医学関連の専門研究者だけでなく、健康ビジネスやスポーツに携わる方々などにとっても、「疲労の科学」の最新情報、基礎的データを得られるという意味で、役立つ情報源だと思われます。

〔目次(概略)〕
・疲労の科学とメカニズム
疲労のメカニズム/中枢性疲労の動物モデルと睡眠誘導メカニズム/ヒト脳疲労…
・疲労の計測
質問票法による疲労の評価/疲労の生理学的計測/疲労のバイオマーカー…
・疲労の臨床
慢性疲労症候群の診断の実際/ストレス関連疾患/疲労と精神医学…
・抗疲労・抗過労食薬環境空間開発
抗疲労食品開発プロジェクト/産業疲労特定検診…
・付録 抗疲労臨床評価ガイドライン

■自律神経の測定、アミラーゼの測定
最近のNHKテレビ「サイエンスZERO」でも、例えば疲労を測る手段として次の2つが紹介されていました。もちろんこれらの説明についても、本誌に示されています。

a.自律神経の計測
b.唾液のアミラーゼ量の計測

aは本サイトの「身体を測る 08-心拍はゆらぐ」および「身体を測る 05-健康状態がわかる睡眠シート」で、bは「身体を測る 09-ストレスの強さを測る」で、それぞれ睡眠品質の測定とストレス測定というテーマの中で紹介したやり方にほかなりません。

シンポジウムの情報やテレビでの取り上げられ方をみていくと、疲労測定が意外に早く実用化し、かなり我々の生活に近づいていることを感じます。体脂肪測定が今はごくあたりまえに家庭の体重計でできるようになったことと同様、上記2種類(a、b)の疲労測定法も、もしかしたら個人が家庭でも簡単に利用する時代になっていくのかもしれません。

■小型の脈波計測システム
シンポジウムの会場ではいくつかのデモンストレーションが行われ、私も自律神経の計測器を用いた疲労測定(上記a)を受けることができました(サービスの提供元:産業疲労特定検診センター、システムの販売元:ユメディカ)。片手の指を計測器にはさみ脈波を測り、拍のゆらぎ(LFとHF成分:「身体を測る 08-心拍はゆらぐ」参照))を分析する装置を用いた診断です。計測器は小型で扱いやすいもののようなので、もしこれが量産されていけば、安価に手に入る健康測定器(単独またはPC接続用)として広まることも考えられます。

ちなみに、当日の私は朝から動いてかなり疲れていたうえに、シンポジウムの客席では数時間聴講。シンポジウムは結構盛況だったようなので混んでいて、座っているだけで疲れが倍加し、夕方には気持ち的に疲労困憊状態でした。その状態で疲労計測したため、交感神経の発揮度(緊張のしやすさ)を表す指数LF/HFが相当に悲惨な数字としてでてしまいました。

…普通状態では1.5~2.5位、基準値として5.0以下のところ、私は「13.32」

いやはや、何よりおとなしく長時間狭い椅子に座っているのが私にはかなり苦痛だったもので…、見事にその状態が数字として計測されてしまったようです(笑)。

宇宙飛行士選抜(NHKスペシャルより)

NHKスペシャル「宇宙飛行士はこうして生まれた~密着・最終選抜試験~」。宇宙飛行士の選抜試験にテレビカメラが入ったのは初めてだそうです。閉鎖環境試験で個々の受験者が評価されていく様子など、興味深い番組でした。

Nスペ宇宙飛行士選抜
〔NHKスペシャル 宇宙飛行士選抜試験〕

■テレビカメラで見る選抜の様子
10年ぶりに行われたJAXAの宇宙飛行士選抜試験の内容が、NHKスペシャルで報道されました(NHKの番組宣伝ページ)。最終選考に残ったのは10人。うち2人、油井さんと大西さんが選抜されたことが先日報道されたばかりですが、その選抜の一端が画像で示されました。

前回(10年前)の宇宙飛行士選抜時の際、最終選抜まで残った白崎修一さんという方が大変興味深い本を著しています。本サイトでもその本を紹介「中年ドクター 宇宙飛行士受験奮戦記」させていだたきました。その他「閉鎖空間の人間関係(NBonlineより)」など、宇宙飛行士選抜と一般企業でのマネジメントを絡めながらいくつか記事を書いてきました。

JAXAとしては、選抜で重視する内容が毎回変わってきていることでしょう。今回の選択では、宇宙ステーションでリーダーとなって働けるコマンダーの選抜を目指しているようで、番組でも閉鎖空間でのリーダーシップのとり方を評価している様子が特に強調されていました。

■最終選抜まで残ったのは10人
番組によると、今回の選抜は次のステップで行われたとのこと。

0 応募:理科系のバックグラウンドと実務経験 →963人が応募
1 英語力や仕事の実績審査 →230人に絞られる
2 物理や化学などの専門知識の審査 →50人に絞られる
3 医学検査、および面接 →10人に絞られる
4 閉鎖環境試験、NASAでの面接、最終面接 →2人合格

最終面接に残ったのは、パイロット4人(油井氏、大西氏、S氏、D氏)、医師2人(E氏、K1氏)、科学者・技術者4人(A氏、U氏、K2氏、Y氏)。正直、この人たちがすでに持っているキャリアの内容を聞くだけで、我々一般人はため息をついてしまいそうです。それほど超優秀な方々が選ばれています。おそらく、この段階になると誰でも十分に宇宙飛行士になる資質を持っている方ばかりなのでしょう。

■閉鎖試験で測られる資質
宇宙飛行士に必要な資質としては、次の4点ほどが説明されていました。

1 リーダーシップ
2 ストレス耐性
3 場を和ませる力
4 緊急対応力

これらを閉鎖環境の中で測るための試験は20種類以上行われたとのこと。うち
・ロボットの設計と製作
・折り紙(多数の鶴を折り続ける)
・特技の披露
などが映像で示されていました。その後米国NASAに出向いて行われた面接試験、日本での最終面接などが紹介されていました。

正直いってテレビで紹介された試験の内容はごく一部に過ぎません。先に触れた白崎さんの本「中年ドクター 宇宙飛行士受験奮戦記」の方が詳しいと思われます。しかし、実際に映像でこれらの様子が見られるのは、やはりインパクトがあります。

そして最後に受験者に問われるのはやはり「覚悟」だとのこと。これはたぶん宇宙飛行士だけでなく、他の職業でも基本的な同じことなのだろうと推測します。

「管理能力開発のためのインバスケット・ゲーム」

インバスケット・ゲーム(未決済の情報をみて、その処理方法を考えさせる演習)という技法を、マネジメント能力育成に主眼を置いて解説した専門書。この手法の理解のほか、前提となる個人特性(パーソナリティ)についての説明も役立ちます。

インバスケット・ゲーム
「管理能力開発のためのインバスケット・ゲーム [改訂版]」
【槇田仁、伊藤隆一、小林和久、荒田芳幸、伯井隆義、岡耕一(著)、2008年刊(初版は1988年刊)、金子書房】

■管理能力開発の一手法
いわゆる未決箱(インバスケット、in-basket)に入っているさまざまな情報を取り出して、限られた時間内にその対処法を考え、処理していく演習のことを「インバスケット法」といいます。企業などの架空ケースを想定して、その条件の下でいかに適切に処理できるかを文章で回答する演習です。個人の能力測定(アセスメント)に使うときは「インバスケット・テスト」、能力開発に使うときは「インバスケット・ゲーム」といった言い方をします。

いわゆる「ケーススタディ」「ケースメソッド」とは異なる手法ですが、事例演習という大きな枠組みで見れば同類のものといえるでしょう。20世紀半ごろに米国で開発された教育・訓練、測定技法で、本書によると「アセスメント・センター方式の演習として最も予測力がある演習とみなされている」そうです。

本書は、管理者能力開発の手段としてインバスケット法を用いるときの、その題材の開発方法、活用方法を具体的に示した専門書です。インバスケットの考え方のベースとなる概念フレーム、さらには性格・能力・適性といった特性の意味についても、本書前半(第I部)で詳しく説明しています(※)。

〔目次〕
第I部 管理能力とパーソナリティ
パーソナリティ
管理能力
管理能力の発見と開発
第II部 「インバスケット・ゲーム」開発の史的瞥見ならびに現状
「インバスケット技法」とは
日本のインバスケット技法
インバスケット技法の特徴の吟味ならびに活用法の検討
第III部 管理能力開発のための「インバスケット・ゲーム」
管理能力開発技法の検討
インバスケット・ゲームの作成法ならびに活用法
T電力版インバスケット・ゲーム
研修の進め方
追跡調査

(※)本書では、パーソナリティ(個人特性)の構造を大きく
・環境 ・身体 ・能力 ・性格 ・指向
の5種類に分けるとともに、そこから表出される管理能力を
・アドミニストラティブ・スキル(狭い意味での管理技能)
・ヒューマン・スキル(対人関係技能)
・テクニカル・スキル(職能分野における実務知識・技能など)
の3種類に整理しています。

■「苦情が来たゾ。お前が責任もって処理せよ!」(by上司)
インバスケットで与えられる課題のごく一例を挙げると、次のようなものです。

・懇親会出席の依頼書…スタッフの誰かを外部の会合に出してくれ!
・緊急連絡メモ…仕入先の一つが倒産したゾ!
・顧客からの苦情…この苦情をおまえのところで責任もって処理せよ!(上司の命令)
・総務からの依頼…恒常化した時間外勤務を削減せよ!

たとえば懇親会出席の依頼書に対しては、適切な出席者を選び、指示をして、必要であれば代替案を作っておく。倒産情報に対しては、確実な情報収集を行うとともに、並行してその業者への支払残などを確認しておく…。そうした想定回答を用意しておきます。

想定される対処法など適切な記述が書かれていれば加点、手の打ち方がピントはずれだったり、あらかじめ想定した条件からみて非現実的だったりすると減点です。かりに対処方法そのものは的を射ていても、関係者への配慮なしに独断で処理してしまったりすると、「テクニカル・スキルは○だが、ヒューマン・スキルは×」などといった採点が可能です。

■題材の開発・保守は相当に困難か
インバスケット法を用いた演習ツールは、うまくはまると実践的な訓練になると思われます。中堅管理職の能力育成に頭を痛めている経営者や人事関連の方にきっと参考になるでしょう。インバスケット法というものを言葉で知っていたがその内容まで知らない方にも、本書の実例を見ると納得できるかもしれません。

ただ、一般的なケーススタディ題材よりもさらに細かい設定、分析、予測、作りこみが必要です。たとえ企業規模の少し大きな企業であっても、わざわざ自社向けに演習題材を作るとなると、手間がかかりすぎるものだと思われます。もしインバスケット演習を取り入れたければ、一般企業の立場としては、インバスケット演習を提供している教育機関(セミナー会社)を探し、それらの中から選ぶしかないといわざるを得ません。本書はインバスケット演習の「開発」まで視野に入れた記述になっていますが、プロのセミナー会社などを除くと手を出さないほうが賢明です。

本書の記述を読むと、演習題材を一度作ってそのまま修正なしに継続させるというより、常に対象企業の状況に合わせて「改訂を続けてきた」とあります。たしかに、経済状況の変化、価値観の変化、意図しない回答などにあわせて保守していく手間が相当かかるであろうことは容易に想像できます。その意味では企業の枠を超えた客観的なアセスメントテスト(測定ツール)として機能するより、教育目的、能力開発が主眼になることが多いのかと推測します。

かなり専門性のある高価(8500円+税)な本です。先に触れた、本書の前半部分(個人特性の説明など)がすっきりした解説になっていて、あるいはこのあたりの記述が一般的に最も役立つのかもしれません。

閉鎖空間の人間関係(NBonlineより)

宇宙飛行士の閉鎖空間実験に実際に関わっているJAXAの専門家へのインタビューが掲載されています。実験とはいえ、途中で人間関係の重大なトラブルが発生してしまった例などが語られています。

NBonline画面
〔日経ビジネスオンライン当該記事の冒頭画面〕

■専門家が語る、宇宙空間のストレス
日経BP社のサイトNBonline(日経ビジネスオンライン)に掲載された、JAXA(宇宙航空研究開発機構)井上夏彦氏のインタビューを興味深く読みました。

シリーズ「ストレス革命~ビジネスパーソン再熱化計画」
閉鎖空間のストレス・マネジメント術~井上夏彦氏 前編後編
(冒頭ページ以外は、会員登録した人のみが読める)

当サイトではこれまで、宇宙飛行士の人間関係の話(a)、ストレスなどの身体測定の話(b)、組織とリーダーシップの話(c)などをいくつも書いてきました。

(a)「ドラゴンフライ」2-宇宙空間で危険な諍い「中年ドクター 宇宙飛行士受験奮戦記」
(b)身体を測る 09-ストレスの強さを測る身体を測る 05-健康状態がわかる睡眠シート
(c)フォロワーシップ(follower ship)「組織行動の「まずい!!」学」

なんだかテーマに脈絡がなく書き散らかしているサイトと思われるかもしれません。が、記事を書いている方としては無関係にテーマを選んでいるというわけでは必ずしもなく、かなり共通した問題意識の下にあります。今回ご紹介するインタビューはその問題意識の“ど真ん中にヒット”しているかのような記事でした。

■われわれの普段のイライラなど、たかが知れたもの
インダビューイーの井上氏は、宇宙飛行士の精神心理支援のプログラムを作成しているとのこと。記事には、ミール宇宙ステーションの事例ほか、日豪加露の模擬的な閉鎖環境実験のなかで起こったトラブルの話が簡単に語られています。「文化の違いからくる誤解」「リーダーやフォロワーのあるべき姿」「宇宙飛行士のストレスの客観的な計測」「精神的支援の具体策」「クルー・リソース・マネジメント」などが少しずつ語られています。現在行われている新しい宇宙飛行士選抜の話にも少しだけ触れています。

また、国際宇宙ステーションに搭乗する宇宙飛行士が持つべき精神心理的スキルが、「異文化適応ができる」「リーダーシップ、フォロワーシップがある」など8項目にまとめられて明示されています。この8項目は、一般の組織においても大変役立つ指針のように思われます。

記事自体は前後編併せてもさほど長いものではなく、また一般向けに語られているので、本当に専門的といえそうな事象説明まではありません。少し物足りないので、できれば何か別の機会に、このテーマで掘り下げた記事か何かがあればと、勝手に希望したいところです。

普段の生活で、われわれは他人との協業、折衝、コミュニケーションを通じ、うまく折り合いやペースが合わず、時にイライラし、ストレスを感じるものです。しかしそんなもの、周囲にウマが合わない人がいたとしても、閉鎖空間での多国的な文化の衝突に比べれば、“たかが知れたもの”。しかも、日常生活ではちょっとした諍いで生命の危険にさらされることもまれなので、宇宙空間より“ずっと安全” !

そんな当たり前のことを認識するだけで、何よりわれわれのストレス対策になるような気が… しませんか?

技の伝承と人材育成4(人材育成状況判断テスト)

今回試みた指標化を参考に、個別の企業や部署の人材育成状況を判断するための簡単なテストを作ってみました。人材育成に関わるアイデア発見につながるでしょうか。技の伝承はアートかサイエンスか…、あらためて考えてみたいものです。

分析図4
〔図4 “技能者育成指標”計算例〕

■アート的な伝達…サイエンス的な伝達
前回の記事まで3回にわたって、企業の人材育成が「個人力」(暗黙知的に人から人へ伝える方法に適したもの)と「集団力」(形式知化、マニュアル化により共有できるもの)のどちらの傾向を持っているかを示す指標を作ってみました。元になった調査は、JILPT(労働政策研究・研修機構)の調査報告書(※1)です。

別の記事「NASAを築いた人と技術」では、「属人的(≒アート的)手法」と「脱人格的(≒サイエンス的)手法」の衝突、が重要な視点だと書きました。ここでいう「個人力」がアート的手法による技の伝達に、「集団力」がサイエンス的な手法による技の伝達に、それぞれ対応させることができるかもしれません。

どの企業にとってもおそらく2者択一なのではないでしょう。例えばあるものづくり企業において
・基礎的・初歩的な技能は、集団力→脱人格的な手法→off-JTや小集団活動、で養成する。そのためのマニュアル作りをする
・顧客の要望に応じた“一品モノ”製造のための技能は、個人力→属人的な手法→日常的指導、計画的OJT、ジョブ・ローテーション、で長期的な視点で養成する
といった使い分けをすることがふさわしいのでしょう。

しかし時には、基礎的な技能に限って(わかりきっていることだけに)、マニュアル化を軽視して「見て覚えよ」と形式知化を怠ってしまう可能性があります。逆に、“一品モノ”の製造や顧客単位で高度なサービス提供が求められる部分に限って(その非効率さを実感しているだけに)、無理やりの標準化・形式知化を導入しようとする例もあるのではないでしょうか。

■単純なアセスメント・テスト
これまで挙げた指標は、「ある企業集団に対してYes/Noアンケートをとった、そのYes回答の平均値」を変数として指標を計算していました。なので本来は、個別の企業や部署に当てはめてこの指標を計算させることはできません。

しかし、かえって単純に考えて、個々の企業・事業所に対し今回の指標に近いものを当てはめてみることもできましょう。例えば、次のようなやり方で自社・自部門の「技能者育成指標」を計算してみてはどうでしょうか。一種のアセスメント・テストです。

質問
「あなたの会社(事業所)では、技能系正社員を対象にどのような教育訓練を実施していますか」

これに対する7つの選択肢
(A群)
1 外部の教育訓練機関などが実施している研修を受講させる
2 定期的な社内研修を実施
3 自己啓発を奨励し、支援体制をとっている
4 改善提案や小集団活動への参加を奨励
(B群)
5 やさしい仕事から難しい仕事へジョブ・ローテーションを実施
6 上司が部下を、先輩が後輩を日常的に指導
7 指導者を決めるなど計画的OJTを実施

それぞれに対し、
・かなり実施している→2点
・少し実施している→1点
・ほとんど実施していない→0点
といった採点をしてみます。

A群、B群ごとに点数を合計し、
評点1 = A+B (0点~14点)
評点2 = B-A (-8点~6点)
という評点を作ります。

評点1は、教育訓練の取組みの熱心さ
評点2は、これまでずっと解説してきた“技能者育成指標”
にほぼ該当するとみなします(※2)。

冒頭の図がこの計算例です。この例では「取り組みの熱心さは8点、取り組みの方法を示す指標は-2点」などと数値化されるわけです。

ずいぶん、いい加減に作ったものです(笑)。でも、ここで計算された「評点2」について、前回の記事で挙げた「事業所特性別の指標」(図3-3、図3-4)と比べながら、自社の技能者の育成や技の伝承方法を検討してみることが多少なりともできるかもしれません。

■測定値はゴールでなくスタートライン
なお、蛇足ながら…。今回のように統計数値から導いた何らかの計算結果、あるいは組織/人事アセスメントで測定した何らかの属性・数値、その他もろもろ定量化した結果は、そのまま「結論(ゴールライン)」と捉えるべきものではありません。「数字が出たから安心して考えを止めてしまう」と、時に思考停止になりかねません(別記事「人事測定と人事評価の違い」参照)。

出てきた数字(およびそのプロセス)は、むしろ現実世界に考えをめぐらす「手がかり(スタートライン)」なのです。「数字で考える」には、数字で結論付けることより、数字から新たな課題を見つけるといった姿勢が大事なのではないでしょうか。

【注】
※1 「ものづくり産業における人材の確保と育成-機械・金属関連産業の現状-」:JILPT「調査シリーズ No.44」

※2 この計算方法は、もちろんJILPTさんによる研究ではありません。あくまでもこのWeb記事の筆者の私的な試みにすぎませんので、ご留意ください。