宇宙飛行士の閉鎖空間実験に実際に関わっているJAXAの専門家へのインタビューが掲載されています。実験とはいえ、途中で人間関係の重大なトラブルが発生してしまった例などが語られています。
〔日経ビジネスオンライン当該記事の冒頭画面〕
■専門家が語る、宇宙空間のストレス
日経BP社のサイトNBonline(日経ビジネスオンライン)に掲載された、JAXA(宇宙航空研究開発機構)井上夏彦氏のインタビューを興味深く読みました。
シリーズ「ストレス革命~ビジネスパーソン再熱化計画」
閉鎖空間のストレス・マネジメント術~井上夏彦氏 前編、後編
(冒頭ページ以外は、会員登録した人のみが読める)
当サイトではこれまで、宇宙飛行士の人間関係の話(a)、ストレスなどの身体測定の話(b)、組織とリーダーシップの話(c)などをいくつも書いてきました。
(a)「ドラゴンフライ」2-宇宙空間で危険な諍い、「中年ドクター 宇宙飛行士受験奮戦記」
(b)身体を測る 09-ストレスの強さを測る、身体を測る 05-健康状態がわかる睡眠シート
(c)フォロワーシップ(follower ship)、「組織行動の「まずい!!」学」
なんだかテーマに脈絡がなく書き散らかしているサイトと思われるかもしれません。が、記事を書いている方としては無関係にテーマを選んでいるというわけでは必ずしもなく、かなり共通した問題意識の下にあります。今回ご紹介するインタビューはその問題意識の“ど真ん中にヒット”しているかのような記事でした。
■われわれの普段のイライラなど、たかが知れたもの
インダビューイーの井上氏は、宇宙飛行士の精神心理支援のプログラムを作成しているとのこと。記事には、ミール宇宙ステーションの事例ほか、日豪加露の模擬的な閉鎖環境実験のなかで起こったトラブルの話が簡単に語られています。「文化の違いからくる誤解」「リーダーやフォロワーのあるべき姿」「宇宙飛行士のストレスの客観的な計測」「精神的支援の具体策」「クルー・リソース・マネジメント」などが少しずつ語られています。現在行われている新しい宇宙飛行士選抜の話にも少しだけ触れています。
また、国際宇宙ステーションに搭乗する宇宙飛行士が持つべき精神心理的スキルが、「異文化適応ができる」「リーダーシップ、フォロワーシップがある」など8項目にまとめられて明示されています。この8項目は、一般の組織においても大変役立つ指針のように思われます。
記事自体は前後編併せてもさほど長いものではなく、また一般向けに語られているので、本当に専門的といえそうな事象説明まではありません。少し物足りないので、できれば何か別の機会に、このテーマで掘り下げた記事か何かがあればと、勝手に希望したいところです。
普段の生活で、われわれは他人との協業、折衝、コミュニケーションを通じ、うまく折り合いやペースが合わず、時にイライラし、ストレスを感じるものです。しかしそんなもの、周囲にウマが合わない人がいたとしても、閉鎖空間での多国的な文化の衝突に比べれば、“たかが知れたもの”。しかも、日常生活ではちょっとした諍いで生命の危険にさらされることもまれなので、宇宙空間より“ずっと安全” !
そんな当たり前のことを認識するだけで、何よりわれわれのストレス対策になるような気が… しませんか?