昨年から今年にかけてコンビニの新型店舗が次々に開店していましたが、そのうちのいくつかが相次いで閉店してしまいました。もともと実験的で早期の撤退が予想できたものもありましたが、やはり“屍累々”といった様子です。
〔撤退したCVSや近隣業態の店舗〕
■店先に「閉店のお知らせ」
飽和したといわれるコンビニ業界では、少し前から新業態の開発に躍起になってきました。ローソン、サンクス、am/pmなど、それぞれ昨年の間に新型店をいくつも開店しています。大きく分けて
・女性向けコンセプトの店舗
・生鮮100円ショップ型の店舗
があることを、本サイトでも「コンビニ 1-新業態、増える」「コンビニ 2-付加価値型の“実験店”」「コンビニ 3-生鮮品揃えと均一価格」と記事をまとめました。また、近隣業態からのコンビニに近い店舗進出も目立ちました(コンビニ 5-低くなった業界の垣根)。
これらのうちいくつかが、すでに撤退してしまいました。もともと実験店舗、つまり新しいチャレンジとしての位置付けのものも少なくないのですぐ変化するだろうとは思いましたが、やはり時間の流れは速いようです。
→am/pmが開いた女性向けコンビニとして注目された「HAPPILY(ハピリィ)」は、07年5月末に閉店
→同じくam/pmの生鮮型100円ショップ「FoodStyle」は、エリアフランチャイズ制をとっている広島の数店を除き07年夏にほとんど撤退
→ローソンの「ナチュラルローソン ベーカリー」は07年8月末に閉店
→ドンキホーテの「パワーコンビニ 情熱空間」5店舗は07年10月10日に閉店
といった有様です(写真)。
■客層が絞られすぎた
「HAPPILY」は当初から相当苦戦したようです。当初の24時間営業から、夜間は閉店に変えるなど工夫した様子もありました。店の狙いを絞るとしても、結局は顧客が絞られたことで売上減を招いたとの見方が一般的です。多店舗化の構想があえなく挫折した事例といえます。
am/pmについては、生鮮100円ショップ型の「FoodStyle」も撤退しました。他社ではそこそこ商圏に根付いているようにも見える“生鮮型コンビニ”ですが、am/pmは真っ先にあきらめたことになります。アドバンテッジパートナーズという投資会社出身の経営者が就任したこともあり、過去の投資が見直されているのは自然なことでしょう。
最も先鋭的に新業態店のチャレンジをしているローソンについては、はじめから試行錯誤の意図があるのでしょう。銀座の「ナチュラルローソン ベーカリー」は実験店と位置付けされていましたので、ひっそりと閉店しても、まぁ別に驚きません(すぐ近くの「ナチュラルローソン」は営業を続けています)。開店時と違い、閉店時にはニュースリリースの一つもありません…
日本橋にあった「ハッピーローソン」については、そもそも日本橋の土地利用が期間限定だったこともあり、計画とおり半年で閉店。そのかわり、入れ替わりで横浜にハッピーローソン山下公園店がオープンしています。
「パワーコンビニ 情熱空間」は、外からの参入組として一時かなり注目されたドンキホーテの事業でしたが、続きませんでした。開店していた期間は最も古い渋谷西原店でも1年2カ月。最も新しかった八王子横山町店は半年経っていません。正直、以前渋谷西原店を訪れたときの、広い割に閑散とした店内の様子を思い起こすと、さもありなんと思います。
ドンキホーテのニュースリリースによると「異なる業態を同時に推し進めるのではなく、経営資源を集中すべきとの結論」とのこと。閉店のニュースリリースを出している分、ひっそり閉店していくより潔いかもしれません。
■失敗の中から学ぶ?
以前の記事でも触れましたが、Shop99を展開している九九プラスはローソンの傘下に入りました。ローソンストア100はその関係で出展方法を見直し。Shop99といずれ運営形態が近づいていくのでしょう。“力ずく”による一番手確保かもしれませんが、いちおうは勝ち組としてよいのでしょうか。
新業態のチャレンジ失敗も、業界全体としてみると良い経験なのでしょう。事業ですから、失敗を繰り返してレベルも上がっていくことと、前向きに捉えたい所です。
最大手のセブンイレブンと(それに次ぐ?)ファミリーマートは新業態に目もくれていない様子ですが、基本型店舗の充実の延長で、各社の失敗、成功を取り入れようとしていることでしょう。
基本的には、中央集権的な考え方から個店の個性尊重の考え方に少しずつ変化しているように見えますが、本当のところまだよくわかりません。少し前までどのコンビニでも売っていたお気に入りの商品だったのに、あるときからぱったり、どのコンビニに行っても売っていない… そんなことがよくあります。なかなか個店尊重は遠そうな気がします。