「身体を測る」カテゴリーアーカイブ

身体を測る 08-心拍はゆらぐ

心臓の鼓動には思った以上に身体のいろいろな情報が含まれていて、自律神経の活性度などが分析できるそうです。

心電図
[心電図の模式図]

■健康な人のR-R間隔は適度に変動する
心臓はもちろん自律神経(交感神経と副交感神経)の支配を受けて動いているので、その支配の影響が脈拍に現れます。脈拍を調べて分析すると自律神経の活性度がわかり、そこからストレスの大きさ、睡眠の深さ、全身持久力の強さなどが計測できるそうです。その計測のカギともいえるのが、脈の強さとか頻度ではなく、脈の“ゆらぎ”だというのが興味深いところです。

心電図をとると、上のように心臓の鼓動に合わせて電圧が上下するグラフが得られます。グラフの横軸は時間です。通常、心臓は規則正しく脈を打っていて、1拍の中にP、Q、R…、というさまざまな波が含まれます。うち最も大きなピークであるR波の間隔が「R-R間隔」、つまりは一つひとつの脈の速さを意味する時間です。たとえばあるときに測ったR-R間隔が1秒だとしたら、その時の1分間の脈数は60秒÷1秒=60(拍)です。

健康な人の脈は毎回ほぼ規則正しく打たれるわけですが、面白いことにこのR-R間隔は常にごく微妙な変化をする、つまり“ゆらぐ”そうです。「R-R間隔変動」といって、通常は必ずこうした脈のゆらぎがあるそうです。一方心筋梗塞や糖尿病などの疾病がある場合、運動やストレスで心拍が高くなった場合、または年をとった人の場合など、この心拍のゆらぎは減ってしまうそうです。

我々一般人の常識からすると、心拍のゆらぎというとなんとなく“不整脈”のイメージを持ってしまいますが、そうではないのですね。考えてみると、人を興奮させる作用を持つ交感神経と、落ち着かせる作用を持つ副交感神経が、常に身体に影響を及ぼしているわけですから、それら自律神経が正常であれば心拍にすぐさま反応するというのも納得いきます。

■心拍の様子から身体の状態を測る
研究によると、心拍変動には相当に複雑な要素が含まれていて、生理学的な制御機能が長短さまざまな周期を持つ成分と関係しているとのこと。つまりR-R間隔変動はいくつもの種類の波の合成と見ることができるようです。

うち、周期が長い(周波数の低い)LF成分と周期が短い(周波数が高い)HF成分の2つがかなりはっきり認められます。LFは主に血圧調整の機能と関連しているゆらぎで交感神経と副交感神経の両方に影響を受け、HFは主に呼吸活動からくるゆらぎで副交感神経と強い関係があるとされます。

ゆらぎの大きさ(ばらつきの度合い)をそれぞれ「LF」「HF」としたとき、
・LF/HF =アクセルの利きのよさ(交感神経の活性度)
・HF =ブレーキの利きのよさ(副交感神経の活性度)
として指標化できるという解釈になっています。

さらにこれらの指標(LF、HF)と実際に計測したい何らかの状態(値「X」)との相関関係が証明できれば、
X = f (LF, HF)
といった関数(式)を導くことができることになります。

(1)人のR-R間隔を、何らかのセンサーを使って実測する
(2)R-R間隔からR-R間隔変動の値(LFとHFの値)を計算する
(3)LFとHFの値から、式にあてはめてXを計算する

という手順で、身体の何らかの状態(ここでは「X」)を測定できるということになります。

上記のうち(2)は一見難しそうに思えますが、数値処理をすることは技術的には難しくありません。「スペクトル解析」などといった純粋に数学的な処理なので、応用分野に関わらず定型的に計算できます。(1)は、ある状態の心拍をかなり精度良く計測できるセンサー技術が必要になります。(3)は、つまるところその応用分野で実用的な変換式や変換テーブルができるかどうかという話になります。現実に商品化するにあたっては、(1)と(3)を実用レベルでうまく組み合わせることができるかどうかがポイントになってくると思われます。

■自律神経から睡眠状態を測る
以前の記事「身体を測る 05-健康状態がわかる睡眠シート」で、寝ている間の睡眠の深さを測ることができる商品例をご紹介しました。具体的には、布団の下にシートを敷くだけでREM睡眠、浅いノンREM睡眠、深いノンREM睡眠…、をリアルタイムで判別できます。生体測定 製品・サービス一覧にそのちょっとしたリストがあります。

睡眠の深さとR-R間隔変動とは深い関係があるらしく、いくつかの商品はまさにこの応用で睡眠の深さを測定しています。すべて詳しく調査したわけではもちろんありませんが、リストに挙げたもののうちスリープシステム研究所(旧社名:シービーシステム開発)とジェピコの製品はこの種に該当するようです。他の睡眠シートや睡眠センサーは異なる方法(たとえばイビキの大きさ、体動の様子などからの判定法)をとっているか、もしくは公表されている情報だけからは仕組みが十分に判断できないものでした。

余談ですが、眠りの深さは自律神経系のデータから判別できるものの、最も浅い眠り(…正確な表現ではありませんが)である「REM睡眠」と「覚醒」状態の判別はできないらしいことです。睡眠の深さという高度な判断ができる一方、「起きているか/(REM睡眠として)眠りに入ったか」「目覚めたか/夢を見ながらまだ寝ているか」という、目で見ればわかるような簡単な違いをこの方法だけで判別するのが難しいというは、なんだか少し意外な気がします。結局「REM睡眠」と「覚醒」の判別は、体動や呼吸といった別の信号を加味して判断する場合が多いようです。

なお、眠りの状態を判断してアラームがなる腕時計「スリープトラッカー」(ウェザリージャパン)という商品が一部で話題となったようです。ただしこれは睡眠深度測定をしているというより、起きる時間に近づくと体動を感知して鳴らすタイミングを判断しているというものと思われます。上記リストにも挙げてありますが、「睡眠モニター」ではなく「加速度計」の一種として分類するのが適当でしょう。

■安静時の心拍変動には豊富な情報が含まれる
身体を測る 06-メタボリ症候群と全身持久力」では、最大酸素摂取量VO2maxの測定の話をしました。一般にVO2maxを測定するにはトレッドミルなどで目いっぱいの運動をして呼気などを測定しなければなりません。

しかしここでも、心拍変動からVO2maxを測定しようとする理論があるらしく、実際にハートレートモニターの大手POLAR(ポラール)社が、Own Indexという独自の分析手法を盛り込んだ商品をすでに発売しています。(「生体測定 製品・サービス一覧」リストにも掲載しています)。

ポラール「Sシリーズ」に備わっている「フィットネステスト」がそれで、「VO2maxと同等の数値が計測できる」としています。面白いことに、運動したときの心拍を測るのではなく「5分間の安静時心拍」を測って割り出します。心拍変動は安静時に最も情報が安定して得られるらしいので、おそらくそうした理論と臨床的研究から編み出されたノウハウなのでしょう。

ビッグブルー(ポラール心拍計専門店)
ポラール

ただしポラールの「フィットネステスト」は、心拍データだけから直接的に計測するというより、「年齢」「性別」「身長」「体重」「運動習慣」を入力した上で割り出すようです。家庭用体組成計で体脂肪率を計測するのと同じようなイメージですね。とすると、(よくわかりませんが)精度についても「家庭用体組成計程度」ではないかと推測されます。

スポーツ愛好者などもう少し詳しく心身の状態を測定したい向きには、もう一歩踏み込んで、たとえば運動中のR-R間隔変動をリアルタイムで測定してその時のリラックス度/ストレス度を表示してくれたり、あるいはLF値、RF値を連続で記録してくれたりすると役に立ちそうな気がします。1拍ごとのR-R間隔を計測できる機能を持つ高機能なハートレートモニターもあるので、あとは計算すればよいだけではないかと思われますが、やはり運動時の心拍変動を精度高く計測するのは難しいものなのでしょうか。

心拍変動は、ストレスの測定などにも使われている例があるようです。無侵襲で身体の豊富な情報を導くことができる切り口として、さまざまなセンサーやアイデアが今後実用化されていくのではないかと予想されます。

「体力・運動能力測定法」

ビジネス書ではありませんが、本blogの「身体を測る」および「人事測定」というテーマつながりでご紹介します。

tairyokusokutei_s.jpg
「スポーツ選手と指導者のための 体力・運動能力測定法 ― トレーニング科学の活用テクニック」
【鹿屋体育大学スポーツトレーニング教育研究センター(編)、2004年刊、大修館書店】

■理論と実践
ジャンル分けをすれば「専門書」なのでしょうが、人の身体や運動を測るさまざまな仕組み、および測定の実践手法をわかりやすくまとめてある本です。全体で180ページ弱、章にして全21章、1トピック(1章)あたり7~8ページとコンパクトな構成。もちろん理論的な話も書かれていますが、専門的過ぎず、結構幅広く一般に役立つのではないでしょうか。本blogでは適当にしか説明していない体組成率とか乳酸、全身持久力などの背景と理論がきちんと解説されています。

〔目次〕
第1部 身体のかたちを知る
形態計測
体脂肪量
骨密度
第2部 身体の機能を知る
運動機能(筋力、持久力)
運動生理(血糖、乳酸、スポーツ心臓)
栄養
第3部 身体の動きを知る
バイオメカニクス(速度、動作、ジャンプ力、地面反力)
第4章 筋・感覚機能・心の動きを知る
筋機能(筋電図)
感覚(運動視機能)
心理
第5部 身体活動と環境の関係を知る
環境生理(高所トレーニング、水中の身体機能)
第6部 トレーニング計画を立てる
トレーニング学(医科学サポート、トレーニング計画・実際)

■測定の基礎概念はビジネスにも役立つ
「測定器」を用いた身体の物理的測定に加え、心理測定についても簡単に触れられています。ここではスポーツ選手に必要な心理テストの紹介が主ですが、メンタル面からどのように人間を把握していくかという基本的な考え方が役立ちます。

たとえば
・「特性」(その人の一般的な行動傾向など。日々変化するものではなく安定した数値として計測されるもの)

・「状態」(ある特定の場面での反応など、むしろ刻々と変化しうる測定値)
とを概念的にはっきり区別し、それらを選手育成にいかに活かせばよいかなどが解説されています。

一般企業の人事評価の場面でも、意外にこうした基礎概念をあいまいにしてしまいがちです。その結果、あまり意味のない評価に至ったり、被評価者に納得されない結果がでてきたりする危険があります。非常に基本部分だからこそ(かつ、成果が数字で見えやすいスポーツという世界での話でもあるので)、ビジネスパーソンでもはっと思い至るところがあるのではないかと思います。

身体を測る 07-心肺機能の測定とスポーツ

メタボリック・シンドロームを防ぐためだけではなく、スポーツ競技者の競技力向上にも、心肺機能の測定は有効です。

fig_at_vo2max.jpg

■さまざまな測定方法
一つ前の記事「身体を測る 06-メタボリ症候群と全身持久力」で、メタボリック症候群に関連して基礎代謝量や全身持久力の測定について話をしました。そもそも全身持久力というのがわかったようでよくわからない概念ですが、ここでは単純に、次のような指標(身体から測定できる値)を指すことにします。

・基礎代謝量:安静時に消費されるエネルギーの量
・無酸素性作業閾値(AT値):運動していて急につらくなるレベルにおける(酸素摂取量または血中乳酸濃度または心拍数などの)値
・血中乳酸蓄積開始点(OBLA):血中乳酸濃度が「4ミリmol/L」となる点
・最大酸素摂取量(VO2max):限界まで運動したレベルにおける酸素摂取量の値

上図で、運動強度を上げたときに線が折れ曲がっているところがありますが、ここが「AT」です。「OBLA」は、スポーツ競技者などが運動強度を見極めるときにAT値より参考になる運動レベルのことです。

厳密には、酸素摂取量、二酸化炭素排出量、血中乳酸濃度、心拍数がすべて同じ時点で連動して変化するわけではなく、ATについても「換気性作業閾値(VT)」とか「乳酸性作業閾値(LT)」とか呼び分けるようですが、ここではあまり区別せずにAT値という言葉で代表させてしまうことにします。

それぞれの運動強度の時に、このうちのどれかを測ればよいということなのですが、前回も説明したとおり、「酸素摂取量(または二酸化炭素排出量)」を調べるには大掛かりなシステムが必要で、体力測定サービスなどに頼らざるをえません。

「心拍数」は大変簡単に、常に調べることができます。スポーツジムなどで運動強度の目安を確かめるときには心拍数で判断することがほとんどでしょう。ただし、本当にAT、OBLA、VO2maxを意味する値がどこなのかは、体調や運動種類によって異なってくるため、必ずしも正確ではありません。

■無侵襲で乳酸を測定したい
スポーツ関係者にとって、科学的にかつ比較的手軽に測定できるのは「乳酸」かもしれません。ポケット型の乳酸測定器が1~2種類出回っていて、利用されているようです。代表的なものとして、次の商品が挙げられます。

ラクテートプロ(アークレイ社)
→http://www.arkray.co.jp/product/sports.html

しかしこの測定法でも、ほんのわずかですが指などから小さな針などで血液を出して測る必要があります。糖尿病の方がよく利用する簡易血糖値計とほぼ同じ方法ですね。被測定者に負荷があるという点だけでなく、血液を通じた感染症の感染などの観点からも、これだけで一般的には少し敬遠されてしまうものだと思われます。

以前も書きましたが、血液を直接摂取しなくても、血中酸素濃度を測るパルス・オキシメータのように、指などにクリップをはさむだけで(「無侵襲」で)乳酸濃度や血糖値が測ることかできる装置の登場が待たれます。というまでもなく、すでに無侵襲型乳酸計の研究はあちこちで行われているようです。

■安静時の呼吸測定
ATなどは測ることができませんが、安静時の呼吸測定なら、次のような小型の呼吸ガス測定器が商品化されています。

MedGem(エムピージャパン社)
→http://www.mpjapan.co.jp/product/medgem/medgem.html

この測定器は、手で持って口にマウスピースをあてることで、正確な酸素消費量を測定でき、基礎代謝量を割り出せるとしています。もっとも、こんな小型の測定器でも医療用具認証された業務用の測定器なのでかなり高価です(担当の方によると、価格は700万円?とかいうレベルの話でした)。

米国では、パソコンやPDAにPCカードとして直接差し込んで測定する、一種の“パソコン周辺機器”という形態で、面白い身体測定器がいくつか発売されています。次のものが「肺活量計」ですが、実用性はどうなのでしょう。実際に経験された方はいませんですかね。使用感などがあれば知りたいところです。

SpirCard(米QRSダイアゴノスティック)
→http://www.qrsdiagnostic.com/NewFiles/SpiroCard.html

身体を測る 06-メタボリ症候群と全身持久力

自らの基礎的な運動能力(基礎代謝量や全身持久力)を測ることは、一般人からスポーツ選手まで代謝状況を判断する上で重要なことだと考えています。

fig_metaboli.jpg

■メタボリ体質≒“黒字”体質?
“メタボリック・シンドローム”が流行言葉になっています。「内臓脂肪症候群」と意訳できるのでしょうか。日頃運動不足の人、見た目にはわからなくてもおなかの中に脂肪がついてしまっている人…。身体が消費するエネルギー量より摂取するエネルギー量のほうが多い生活を続けていくと、身体のどこかに余った脂肪がついてしまうという簡単なことです。
続きを読む 身体を測る 06-メタボリ症候群と全身持久力

身体を測る 05-健康状態がわかる睡眠シート

寝ている時の睡眠の深さがわかる、ベッドに敷いているだけで身体の状態を測定するシートが実用化しはじめました。

sleepmon01_s.jpg

■大げさな睡眠測定装置だと眠れなくなる?
現代人の4人に1人はなんらかの睡眠障害を持つともいわれています。不眠、睡眠リズムのずれ、睡眠時無呼吸症候群などさまざまな障害があります。一応健康な人であっても、夜きちんと眠れたかどうかは結構気になるものでしょう。床に入っていた時間くらいなら簡単に記録できますが、できれば睡眠の“質”という観点からも自分の健康状態をつかんでおきたいと思いませんか。

睡眠の深さや状態を測定する機械というと、研究所などで頭に電極をつけて測る本格的なシステムを思い起こします。そのシステムを「PSG」(睡眠ポリグラフ、またはポリソムノグラフィ)と呼ぶそうで、頭、額、目、あご、心臓などに電極をつけて脳波と心電図を測るほか、鼻と口の気流をみて呼吸を測定し、睡眠状態を分析します。

しかし、言うまでもなくPSGのような大げさな睡眠測定装置で検査するとなると、専門の医療機関や研究所まで出向いて、1~2泊して、(場合によっては研究員の終夜立会いのもとで)測定しなければなりません。しかも前述のように、実験台で張り付けにされたように、身体のあちこちにセンサーをつけることが求められます。いつもと違う状態で、いかめしい実験台の中におかれると、結局良く眠れないとか、少なくとも自宅で寝る時と異なる睡眠状態となってしまいがちです。どんな状態でも簡単に眠ることができる人ならともかく、そもそも睡眠障害の疑いのある人がそんな状態で正確な測定ができるものではなかなかありません。

ここで挙げる睡眠シートは、いわば“いつもどおりの”睡眠環境で測ることができるセンサーといってよいでしょうか。寝床の下(商品によっては、敷き布団のさらに下においてもよいタイプのものもある)に敷くだけで呼吸と心拍を中心に計測でき、その結果から睡眠の質などを分析することができます。写真はスリープシステム研究所開発のもので、介護支援システムなどにすでに実用化しているタイプのシートです。

■介護、看護に応用
PSGのように、たとえば覚醒/REM睡眠/浅いノンREM睡眠~深いノンREM睡眠というような何段階もの綿密な測定ができるものもあり、それらはPSGの代わりに本格的な睡眠測定に応用することができます。しかしさすがにそこまで綿密な測定を要する場面でなければ、もう少し簡易化された睡眠シートのほうが安価で、いくつかの場面に応用が利きます。

とくに応用の範囲が広そうなのが介護や看護の分野です。たとえば、高齢者や身体を悪くしている患者さんのベッドに睡眠シートを敷いて離れた場所からウォッチすれば、その人が夜中に突然体調が悪くなった時の緊急の対処とか、逆にベッドにいない(またはいても寝ていない)ことのチェック、さらには健康障害が出る前に察知しての対処とか、いろいろな対策に役立てることができます。

そのような用途から、睡眠測定シートの利用は老人ホームや病院など事業者中心の利用がほとんどです。さすがに個人で簡単に導入できるというものではなさそうですが、睡眠チェック機能のあるベッドなどを導入したいとするニーズは結構あるのではないかと思われます。

一例ですが、松下電工は「快眠システム」という触れ込みで、部屋そのものを睡眠に合わせて自動制御するシステムを提案しています。睡眠・覚醒のリズムに合わせて光の強さと室温を変化させ、たとえば起きる時間に近づいたら徐々に照明を明るくするといった制御ができる部屋作りが可能です。その自動制御の一つのパーツとして、やはりベッドに敷く睡眠センサーシートが用意されています。しかし、これはまたこれで“大げさ”ですよね。数百万円とか数千万円とかかけてそうした寝室を作りこむのは、一部の富裕層や高級ホテル以外ではありえないでしょう。

■心拍や呼吸から異常を感知できる
前回の記事と同じく、このテーマに関連する商品例を、
生体測定 製品・サービス一覧
に一覧として挙げました。リストは今後もupdateする予定です。

リストをみただけではよくわからないかもしれませんが、商品によって、身体の動きを監視することが主なもの、睡眠の深さを精度良く監視できるものなど差があります。また、いずれの商品も単体で機能するというものではなく、データを解析するソフトウェアや連動するシステムがあってこそ有効に利用できるものであることにご注意ください。さらにはどんな睡眠状態のときに危険があるのかの判断などは、それぞれの提供元が持つ専門的なノウハウにも依存することになります。

なお「対象者がベッドにいるかどうかだけ判断する」ためには睡眠モニターまでは必要なく、たんに圧力の“on/off”だけが信号として届けばよいわけで、そのためには「離床センサー」と呼ばれるシートを使えば十分です。ただしこの場合、仮に寝床で被験者が亡くなって動かなくなってしまった場合、それを判断することはできません。呼吸や心拍を測定しているセンサーならば、その異常状態を感知できます。

この記事でのテーマ“身体測定のパーソナル化”となるまでは少しだけまだ時間が必要かもしれませんが、睡眠測定が結構身近な環境まで近づいていることは確かなようです。