身体を測る 06-メタボリ症候群と全身持久力

自らの基礎的な運動能力(基礎代謝量や全身持久力)を測ることは、一般人からスポーツ選手まで代謝状況を判断する上で重要なことだと考えています。

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■メタボリ体質≒“黒字”体質?
“メタボリック・シンドローム”が流行言葉になっています。「内臓脂肪症候群」と意訳できるのでしょうか。日頃運動不足の人、見た目にはわからなくてもおなかの中に脂肪がついてしまっている人…。身体が消費するエネルギー量より摂取するエネルギー量のほうが多い生活を続けていくと、身体のどこかに余った脂肪がついてしまうという簡単なことです。

「メタボリック」とは新陳代謝を意味します。筋肉や臓器に蛋白質やエネルギーが供給されて大きくなることを「アナボリック」、逆に筋肉や臓器から成分が分解されてエネルギーなどとして使われるのを「カタボリック」といいます。この2つの作用は常に同時に働いて新陳代謝が進むわけですが、メタボリック・シンドロームとはこのうち主にアナボリックな作用が長期的に勝り、かつ筋肉は増えずに内臓に脂肪がついていき、結果として肥満、高血糖、高血圧、心肺系の疾患など生活習慣病と呼ばれる症状が引き起こされている状態をいうようです。

蓄えられるエネルギーを資産(お金)としてみたとき、企業の損益計算書に喩えると、次のようになります。
・アナボリック:収入(摂取エネルギー)>支出(消費エネルギー)
 →黒字体質、キャッシュイン・フローが多い
・カタボリック:収入(摂取エネルギー)<支出(消費エネルギー)
 →赤字体質、キャッシュアウト・フローが多い

なんだい、それじゃ黒字体質(アナボリック優勢≒メタボリ体質)のほうがいいじゃないか、といいたくなりそうですね。ある意味その通りです。

■身体の“貸借対照表”を改善する
ここで「消費エネルギー量」とは、日常活動で自然に使われるエネルギー量(基礎代謝量)に大きく左右されます。同じ身長・体重でも、筋肉質な人は黙っていても筋肉で使われるエネルギーがあり、基礎代謝量は高くなる傾向があります。一方体脂肪が多い人は動いている筋肉が少ない分、基礎代謝量が低くなります。

今度は企業の貸借対照表に喩えてみましょう。
・筋肉質:利益に直結する資産が多く、流動的である
 →総資産利益率が高い、固定比率が低く流動比率が高い
・脂肪体質:利益に直結する資産が少なく、流動的でない
 →総資産利益率が低い、固定比率が高く流動比率が低い

望ましいのは、自前の資産(肉体)を元手に、できるだけ効率良く高い利益(エネルギー)を得て、黒字(アナボリック)体質を継続し、質の良い資産と自己資本(筋肉)を蓄積することでしょう。

望ましくないのは
(a) 利益率が低く、赤字(カタボリック)体質が続くこと
(b) 利益につながらない資産や負債(余分な脂肪)が増えること
でしょう。

メタボリック症候群とは、このうち(b)に近い意味といえばよいでしょうか。肥満気味だからといってたんに摂取エネルギーを減らすだけでは、短期的な対策としては間違っていないものの、上記(a)の方向を向いていることにほかなりません。いわば“損益計算書”をさらに悪化させるようなものです。メタボリック症候群への取り組みとは、企業会計でいうところの“貸借対照表”改善を意味するものだということができます。

■筋肉質の体質作りとは
バランスのよい定常的な状態の身体であれば、メタボリックとカタボリックのバランスがとれた中間状態にあるということになります。先に「アナボリック優勢≒メタボリ体質」とか書きましたが、正しい図式とはいえません。

もしかしたら広い意味では、アナボリック優勢でもカタボリック優勢でもどちらにしても新陳代謝に不都合が出ている場合すべてをメタボリック・シンドロームと呼ぶのかもしれません。でも、一般的にいわれているメタボリ症候群を図式化してみると、冒頭のようになるのではないでしょうか。人の身体の体質だけでなく企業会計との比較も入れてみました。

メタボリック体質だからといって、たんにダイエットしただけで身体の“貸借対照表”を改善しなければ、図のように「最悪の」メタボリ体質になってしまいかねません。基本的には筋肉の増大または維持を目指すことが必要です。筋肉が減少しないような方法できちんとエネルギーもとらなければなりません。そのためにも、自らの基礎代謝量や全身持久力のレベルを知っておくに越したことはないわけです。

■心肺機能と全身持久力
話が「身体の測定」から少し離れてしまいました。メタボリック症候群に該当するかどうかはともかく、できれば自分の身体の“貸借対照表”の伴う指標を測定してみたいところです。体脂肪率もその一つですが、特に次のような心肺機能に関わる指標が重要と思われます。

・肺活量
・基礎代謝量
・最大酸素摂取量(VO2max)
・無酸素性作業閾値(AT)

これも無理やり企業会計に置き換えてみると、
・肺活量…総資産(総資本)
・基礎代謝量…資産回転率(資本回転率)
・最大酸素摂取量…最大限の力を発揮した時、瞬間的に実現できるはずの総資産利益率
・無酸素性作業閾値…強い事業へと成長するために必要な総資産利益率
とでもなりましょうか(すみません、かなり喩えに無理があるのはわかっています…)。

なお、無酸素性作業閾値(AT値)とは、スポーツをしている人には重要な指標の一つです。ごく単純な説明としては、AT値より低い運動強度をエアロビクス運動、AT値より高い運動強度をアネロビクス運動、といいます。エアロビクス運動を続けることで脂肪の消費が進み、アネロビクス運動をすることで筋肉や心肺機能が増強するといわれます(VO2maxやATについては、次回あらためて触れます)。

■全身持久力を測るさまざまな方法
身体の全身持久力の測定は、結構いろいろなやり方があります。

基礎代謝量は、体重と体脂肪率(+α)から一応理論的に換算できます。家庭用の体組成計でも換算値を表示できるものがよくあります。しかし、これは理論値に近いもので、誤差はかなり大きいようです。正確に測るには、マスクを使って呼吸ガスを集めて測り、酸素摂取量などを実測する必要がありそうです。

VO2maxやAT値を直接的に測るには、トレッドミル(いわゆるルームランナー)で走ったりエルゴメーター(いわゆるバイクマシン)をこいだりしながら、やはりマスクを使って呼吸ガスを実測するのが普通です。AT値については、血中の乳酸を測定する方法もかなり有効です。

VO2maxやAT値は、心拍数から間接的に推定する簡便な方法もあります。急につらくなってくる時点の心拍数(AT)、またはこれ以上できない時点の心拍数(VO2max)を見つければ、実測値ではないにしても普段の運動で自分の身体にどの程度負荷をかけられるのかが判明します。しかし、ATはともかく、VO2maxは“極限状態まで無理して身体を動かす”ことが求められますので、下手をしたら身体に重大な支障を生じる可能性があり、医師などがいない場で無理に計測するのは危険です。

■測定サービス
全身持久力を正確に測ることができる「パーソナルな身体測定器」はなかなか準備できそうにないですね。でも、医療機関・保健機関・スポーツ関連施設で、体力測定などの形でまれにそうした全身持久力の測定サービスを実施しているところがありますので、探して受けてみるのも一つの手です。東京では、次のサービスが比較的安価に受けられます。

東京体育館の体力測定サービス(要予約) http://www.tef.or.jp/tmg/guide/consul.html

この全身持久力測定サービスはやはり手軽さが一部で注目されているようで。インターネット上に測定を受けた様子がいくつも報告されています。ただし特に「直接法」は希望者が多く、なかなかすぐに予約できないのが難点です。私も先日、(1カ月前に予約した上で)実際に直接法で測定を受けてきましたが、初めてだったためか、測定されるだけでも少し疲れてしまいました。

正確な持久力測定には、呼吸ガス、心電図、連続的な心拍・血圧の測定といった大掛かりな測定システムが必要である上、医師および専門家の立会いが必要なため、なかなかこうしたサービスは実施できないものかもしれません。でも競技指向のスポーツ関係者はもちろん、健康志向の一般人にも確実にニーズはあるとみています。

心肺機能、全身持久力の測定に関して、パーソナルとまではいきませんがいくつか面白い商品例があります。今回それらを紹介するつもりだったのですが、具体例に行き着く前の前置きが長くなりすぎてしまいました。次回に続きます。


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