Toshi Matsuyama のすべての投稿

恵方巻商戦は定着したのか

今年も恵方巻商戦が華やかでした。1年前に「「恵方巻」商標は登録ならず…」という記事を書きましたが、その後大きな変化はないようです。各社知恵を出して付加価値をつけた恵方巻商品を出しているようですが、少し迷走している気がしないでもありません。

恵方巻パンフ2008年
〔コンビニの恵方巻パンフ、2008年〕

■昨年とほとんど変わらないパンフ
ちょうど1年前に「「恵方巻」商標は登録ならず。安心して使えそう」という記事を書きました。「恵方巻」商標(区分30 すし)が出願されたが、登録されなかったこと。出願は寿司関連の業界団体と関連のある企業が防御的な立場から出願したもので、「特定企業などに独占させない」が目的だったこと。結果的にその目的が達せられ、この言葉を誰もが安心して使えるようになったことを説明しました。

今年の節分もまた、いろいろな企業が恵方巻のお客さん獲得に奔走しています。1年経って何か変わったかというと、商品名がらみではほとんど変わりないようですね。「恵方巻」と呼ぼうが「まるかぶり寿司」と呼ぼうが、いまさらあまり大きな問題ではないのでしょう。コンビニ各社についていえば、エーエム・ピーエムが商品の名称を「まるかぶり寿司(恵方巻)」から「恵方巻」に変えたことくらいです。昨年のパンフと今年のものを比べてみても、ほとんど違いがないようです。

そもそもコンビニ各社の恵方巻パンフは、キャッチコピーばかりでなく、パンフの体裁や写真の撮り方までもほとんど昨年と同じ。“面倒なので昨年のやり方をそのまま踏襲しました”という雰囲気です。営業的にもルーチン化しているのでしょう。

商標登録に関して、昨年ご紹介したものほかに、次のようなものがあるようです。

・「恵方巻き」(区分30 菓子)
出願人は岡山の源吉兆庵という和菓子の製造販売の会社のようです。昨年紹介した「恵方巻」商標が拒絶された2007年1月16日のすぐ翌日、1月17日に出願しているあたりに何らかの意図も感じさせますが、これも昨12月21日に拒絶査定がでています。

・「丸かぶり」(区分29、区分30)
ミツカングループが権利者で、登録は2006年に成立しています。多数の商品ジャンルが対象になっているようですが、「すしを除く」とのことです(※)。

(※) どうもこの件は、「すし」についてのみ、異議申立の審査を通じて商標登録が取り消されたようです。
参考:商標審決データベース

■ロールケーキ増える
コンビニ商品で変わったという意味では、各社の商品種が増えています。傾向は次の2点。

・“上”ランク
ファミリーマートの「上恵方巻」、サークルKサンクスの「極(きわみ)の恵方寿司」、ローソンの「ふっくら煮穴子の上海鮮丸かぶり寿司」。いずれも高級なバージョンです。昨年までに各社からほぼ出揃っていたハーフサイズの「海鮮恵方巻」や通常の「恵方巻」とあわせ、“上” “中” “下”のようなランク付けが定着したということなのでしょうか。

・甘党向きのケーキ
昨年セブン・イレブンとスリーエフが恵方巻と似たロールケーキを発売しましたが、今年はローソンとサークルKサンクスが追いかけ、同じような「節分ロールケーキ」を発売しています。スリーエフについては、昨年の「丸かぶりロール」に加え「プレミアム丸かぶりロール」なる“ケーキの上”バージョンが加わり2種類出しています。

■太巻きでなくなりつつある?
なおセブン・イレブンは恵方巻にあたるものは昨年と価格も商品名もまったく同じですが、「節分手巻寿司3本」というハーフサイズよりさらにわずかに小ぶりの普通の巻き寿司がパンフに加わっています。普通すぎて恵方巻と名付けるほどでもないのでしょうか。であれば、わざわざ「恵方巻」と名付けられていなくても、通常の巻寿司なり何なりを食べればよいような。

市場で受け入れられる恵方巻を追求したら、ケーキになってしまったり、短くなったり、細くなったり…。コンビニではなくダイエーの話ですが、今年出した恵方巻は「京都の清水寺で祈祷した海苔」を使っていることを売りにしているとか…。付加価値のつけ方もいろいろあるようですが、少し迷走している気がしないでもありません。

ともあれ、今年も恵方巻商戦の前線では、ノルマを達成するために何本も買い、数日間恵方巻を食べ続ける人がいることでしょう。まぁ、イベント物となれば、恵方巻に限らない話かもしれませんが。

日の出と月光

日の出と月光

まだ暗い街中。昇った太陽の光がビルの窓で反射しています。
上空に写っているのは太陽でなく、満月に近い月。
同じ太陽の光の反射に違いはありません。

【撮影データ】
Panasonic DMC-FX1
ISO200, SS:1/8s, F2.8 (Auto mode)
画像ソフトで輝度調整とトリミング

年末の築地の街

築地はどんどん変わっています。場外市場は中層ビルが増えるとともに、路面に面した店舗は入りやすくなりました。場内は店の看板も昔と様変わりし、商品の単品売りも増えています。年末の休日ということもあってか、子ども連れ一般客も目立ちました。

新しくなった吹田商店
〔新しくなった吹田商店〕

■近代化のなかに特徴を出した店舗作り
1年半ほど前に「脱皮を目指す?築地周辺の商店」および「築地場外の半値市」という記事を書きました。「半値市」の記事で晴海通りに面した吹田商店さん(昆布の専門店)の建物が建て替え工事に入ると書きましたが、その吹田商店さんの店舗は10月に新装開店しています。写真のように、店舗というよりその一角が一つの大きなビルに変貌しています。

1年半前(06年5月)の写真と今回(07年12月)の写真と見比べてみてください。アングルが逆なので少しわかりにくいかもしれませんが、晴海通り沿いを中心に築地場外市場は古い街並みから中層のビル群へと変わっています。今回の写真右上にも見えるように、屋上には大きな看板が増えています。一言で言えば“近代化”が進んでいます。

と同時に、店舗作りとしては、むしろ古くから馴染んでいる店構えの雰囲気を踏襲していることがわかります。吹田商店さんの場合は、店正面の看板や構成が過去のものとほぼ同じ。店内も、旧店舗で使われていた部材の一部をそのまま再利用したそうです。昔の大福帳(?)を吊るすなどして雰囲気を出し“レトロ感”が感じられます。

落ち着いた店内の様子
〔落ち着いた店内の様子〕

ここ数年の間に改築された他の店舗にも言えますが、概して1階の店舗は間口が広まったとともに、老舗としての落ち着いた雰囲気を保っています。一般客が入りやすくなっているのは確かです。

■場内も様変わり、子ども連れ一般客も
変わったのは場外だけではありません。場内の店舗も少し見ない間にずいぶんきれいになったようです。以前は玄人専門の生鮮市場らしく、“わかる人だけわかればよい”といった雰囲気が満ち溢れていました。今ももちろん従来と変わらず骨太な店舗の集合であることに間違いはないのですが、一部の中卸業者の看板デザインは相当きれいになっています。写真のように、ファサード(前面)にインターネットのURLが書かれている店もあります。

築地場内の看板
〔築地場内の看板〕

商品も、思った以上に小分けされたロットで用意されていました。訪れた日が年末の休日(臨時開場日)、つまり場内・場外とも年の瀬で一般の買い物客が最も増える時期だったので当然なのかもしれませんが、それにしても「1匹100円」とか「1箱1000円」といった単位で魚があちこちに並んでいたようです。

お客さんで特に目についたのが親子連れです。市場場内の奥の方にさえも、小さい子ども連れの家族が多数みられました。ターレットが走り回る場内に小さな子がいると危なくて心配になりますが、あるいはこうした現場を小さいうちに見ていると、市場の活気を肌で感じたり、魚を食べることに親近感を持ったりするものなのかもしれないとふと思います。

築地市場本体の建物は、天井の様子(写真右上)からもわかるように、相当に老朽化しているのでしょう。しかし個々の店作りを見ていると、それぞれの商人らしさや活力があり、やはり「一つの商店街として生きている」と感じられるところです。市場本体の豊洲移転問題がどう決着していくか不透明ですが、どう転んだとしても、官の無意味な政策のごり押しにより商人の活力が圧迫されないことを願いたいところです。

「魚河岸野郎 – カジキ日和」

サイト紹介。当サイトでもたびたび築地の話を書かせていただいていますが、当方など及びもつかない本格的な築地事情の専門サイトです。築地の歴史が連載されていたblogは「打止め」となったようですが、続きをぜひ期待したいところです。

カジキ日和 画面
〔サイト「カジキ日和」の画面〕

■89回にわたる築地昔物語
この「カジキ日和」というblogの存在をどこかで触れたいと思っていましたが、運営の都合なのか、とりあえず更新が「打止め」になった模様です。元のサイトは継続されています。

築地の魚河岸野郎 http://www.uogashiyarou.co.jp/
魚河岸野郎 http://www.sakanaya.co.jp/

発信人はこの世界で知る人ぞ知る方なので、魚河岸関連のお仕事をされている方なら多くの方がご存知かもしれません。「昔がたり」だけでも89回続いていました。

築地魚河岸昔がたり(89) つかのまの繁栄

さまざまな文献、またご自身が先達から直接見聞きした事柄を踏まえて、実に面白く、生き生きとした築地の歴史が描かれています。「昔がたり」以外の情報も多数あります。ここの情報が今後どのような形で記事がまとめられるのか、このまま記事は残るのか、わかりません。ご興味のある方はぜひ訪れてみてください。

こうした話が、新しい装いでこの先も続くことが期待されます(一読者として強く期待しています)。

「著作権法」中山信弘著

著作権を考えるときの基本的な視座の提示、著作権というものを理解するための体系の提示、豊富な実例をもとにした社会の動き…。おそらく専門家から初学者まで、多くの人に指針を与えるような教科書なのだろうと思います。

中山信弘氏「著作権法」
【中山信弘(著)、2007年刊、有斐閣】

■著作権法の中に異物が増殖し、のたうち回っている?
著者は、知的財産権の分野で第一人者と言われています。その著者が書き下ろした新刊。著作権に関する専門書は多数あるかと思いますが、この方の教科書を待っていた方は少なくないと思います。序章を読むだけでも、少し考え方が整理されていくようなところがあります。

たとえば著作物は一般に「人の思想・感情を表現したもの」と説明されます。しかしここでは、著作物と媒体との違いを明確に意識して、「著作物を情報として捉えることにより、著作権法の世界が明確に見えてくる」(p.12)といった視点がまず提示されています。この分野に詳しい方々には当たり前のことかもしれませんが、はっきりとこうした説明がされていることで、著作権を考えるうえでの実に良い軸になると思われます。

また、1980年代以降コンピュータ・プログラムを著作権の保護対象に含めるようになったことをはじめ、経済的な財産が著作権法の中に続々と入り込んできました。これを

「著作権法の欠陥というよりは、著作権法の懐が余りに深いために、近年急増している産業的な著作権を取り込んでしまった結果、異物が異常増殖し、制度自体がのた打ち回っているというのが実態」(p.25)

と説明されています。「なるほど」と思わせる面白い表現に思えます。

〔目次〕
序章 著作権法の意義
第1章 著作物(著作権の客体)
第2章 著作物の主体
第3章 著作物の内容
第4章 取引の対象としての著作権
第5章 著作物の発生・消滅と保護期間
第6章 著作者人格権
第7章 著作隣接権
第8章 侵害と救済

ぜひきちんと読んでみたいと思っていますが、正直に言いますと、私はまだ序章しか読んでいません。先をきちんと読むには少し覚悟も要りそうなので、なかなか簡単に読み進めるというわけにはいかなそうです。まだまともに読んでいないのに書評(らしきもの)など書くな、と言われそうですが、ファースト・インプレッションとしてお許しください。