著作権を考えるときの基本的な視座の提示、著作権というものを理解するための体系の提示、豊富な実例をもとにした社会の動き…。おそらく専門家から初学者まで、多くの人に指針を与えるような教科書なのだろうと思います。
【中山信弘(著)、2007年刊、有斐閣】
■著作権法の中に異物が増殖し、のたうち回っている?
著者は、知的財産権の分野で第一人者と言われています。その著者が書き下ろした新刊。著作権に関する専門書は多数あるかと思いますが、この方の教科書を待っていた方は少なくないと思います。序章を読むだけでも、少し考え方が整理されていくようなところがあります。
たとえば著作物は一般に「人の思想・感情を表現したもの」と説明されます。しかしここでは、著作物と媒体との違いを明確に意識して、「著作物を情報として捉えることにより、著作権法の世界が明確に見えてくる」(p.12)といった視点がまず提示されています。この分野に詳しい方々には当たり前のことかもしれませんが、はっきりとこうした説明がされていることで、著作権を考えるうえでの実に良い軸になると思われます。
また、1980年代以降コンピュータ・プログラムを著作権の保護対象に含めるようになったことをはじめ、経済的な財産が著作権法の中に続々と入り込んできました。これを
「著作権法の欠陥というよりは、著作権法の懐が余りに深いために、近年急増している産業的な著作権を取り込んでしまった結果、異物が異常増殖し、制度自体がのた打ち回っているというのが実態」(p.25)
と説明されています。「なるほど」と思わせる面白い表現に思えます。
〔目次〕
序章 著作権法の意義
第1章 著作物(著作権の客体)
第2章 著作物の主体
第3章 著作物の内容
第4章 取引の対象としての著作権
第5章 著作物の発生・消滅と保護期間
第6章 著作者人格権
第7章 著作隣接権
第8章 侵害と救済
ぜひきちんと読んでみたいと思っていますが、正直に言いますと、私はまだ序章しか読んでいません。先をきちんと読むには少し覚悟も要りそうなので、なかなか簡単に読み進めるというわけにはいかなそうです。まだまともに読んでいないのに書評(らしきもの)など書くな、と言われそうですが、ファースト・インプレッションとしてお許しください。