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“アジア人材を考える勉強会”より

「日本人と違い、どこそこの国の人の性格はこうだ」といった表現がよくあります。実際、国や地域で共通する性質があるのは事実だと思いますが、それ以上に個人の資質や状況の違いを無視してはいけません。パターン化したイメージに囚われていけないのは、国内外を問わないということでしょう。

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〔研究会の資料抜粋〕

「アジアスタンダードを考える企業の人材育成」(NPO法人 アジアITビジネス研究会)(Mar.27)より。

講師は中川直紀氏(グローバル人材活性化プロジェクト代表)。研究会をリードする吉村章氏(台北市コンピュータ協会駐日代表)の解説とともに、示唆に富んだ意見交換がなされていました。中川氏のblog「ふすまを開けて世界に出よう!」に発表の内容が記されています。

同研究会に参加することができましたので、少しメモを残しておきます。以下は発表者の表現そのものでなく、例によって本blog(松山)のフィルターを通じて編集したものですので、その点ご承知おきください。

■異文化の理解に向けて
“ハイコンテキスト理論”によると、文化には次のタイプがある。
(1)ハイコンテキスト:多くの情報・言葉を軸にするというより、聴き手が話の文脈・隠れた意味など読み取ってコミュニケーションをとっていく
(2)ローコンテキスト:曖昧な表現や表情に頼らず、明示的に言葉に出し、情報を示すことでお互いのコミュニケーションをとっていく

一般に欧米はローコンテキスト文化、日本はハイコンテキスト文化で、そこにコミュニケーション上の誤解が生じると言われる。アジアの国でも、例えばインドネシアなどはハイコンテキストの文化だ、といった表現がある。それはその通りかもしれないが、よく見ればハイコンテキストの米国人もいるし、ローコンテキストの日本人もいる。個人の性格でかなりの違いがある。

ようするに、“異文化”は(海外といわず国内でも)どこにでもある。アジアでのビジネス展開や人材確保を考えるときにも同様である。国という属性だけでパターン化した見方をしてはいけない。

グローバルビジネス感覚は、MBAとかで学べるものではなく、現場で苦い経験をしながら得ていくものだ。ただ、背景は違っても、同じ土俵で戦うことは重要。ビジネスの共通項としてのルールがある。日本では(社会に出る前にほとんど教えられていないので)Off-JTによる研修でそうしたルールを学ぶことが肝要。

■国単位、組織単位、個人単位、それぞれの理解を
チームワークの形やリーダーの役割の違いを見ると、例えば日本と中国とインドネシアを比較しても、それぞれ大いに違う。欧米の場合と比べて、軸の取り方はかなり違うのではないだろうか。

ハイコンテキスト(→集団主義など)、ローコンテキスト(→個人主義など)という切り口についても、国単位で一括りに判断はできない。会社単位での性格(企業文化など)もあるが、それだけでも不十分。個人単位での理解も必要となる。

異文化を理解する切り口にはいくつかあるが、今までの切り口でアジアを判断できるかというと、再考する余地がある(中川氏、吉村氏をはじめとして、「グローバル人材活性化」のためのスタンダード作りを進めておられるとのことです)。

*  *  *

この「アジアITビジネス研究会」は吉村氏を中心に興味深い研究会を長く続けておられ、安価な参加料で勉強会に参加できるようです。私もこの日の研究会のほか、その前週「台湾活用型によるビジネス展開の有効性/現場の事例から」に参加させていただきました。現場からの興味深い報告を聴くことができます。アジアビジネスを検討されている方に参考になろうかと思います。

“fabcross Meeting”より

デジタル・ファブの世界が広がっていく中での“ものづくり”。興味深かったのは、背景にある“ひとづくり”が最重要キーワードになっていたこと。従来のアナログ技能の世界で繰り返し語られたことが、デジタル技術の進化があっても根底でほとんど変わりがないことを意味しているのでしょう。

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「fabcross Meeting ~ブームで終わらせない『次世代ものづくり』のあり方」 (Mar.23 2014)

デジタル・ファブリケーションの世界が広がっていく中での、新しいものづくりの担い手、環境などについて話し合われました。例によって、私の個人的なメモを数点、以下に残しておきます(発言者省略)。

・昨年来、やたら3Dプリンターばかりに興味が向いていたのは、「一般の人がいかにものづくりに詳しくないか」の表われだろう。いくら出力機があっても、やりたいことを自ら分からず、3Dデータを用意できず、何を出力しようというのか。

・3Dデータを扱うということがどういうことなのか、特に年配の人には概念そのものがなく、わかってもらえない。誰でも3Dモデリング作業ができるようになるわけではないが、何かを創りだそうというモチベーションがある人なら、本当は身につけて欲しい。(かつて“ワープロを使えない上司が、手書きで原稿を書いて誰かに入力させた”などという馬鹿げた方法のようにならないよう)

・これからのものづくり人材養成に向いた教育機関は、高専ではないだろうか。高専では(高校などと違って)高いレベルの実践教育が受けられる。技術・技能だけでなく、ものづくりのチーム・マネジメントなども経験できる。

fabcross.jpさん主催のトークイベントでした。
https://fabcross.jp/event/fabcross_meeting_0323.html

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人材活性化と個人のキャリア自律

「社内で人材を育て定年まで企業が面倒見る」といった人材管理のあり方はとうに崩壊しているはずですが、そのわりに企業の人材流動化が進んでいないことが日本経済の一つの課題とされています。要因は、組織・企業側にも、個人の意識の側にも、どちらにもあるようです(経産省のシンポジウムより)。

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[シンポジウムの資料抜粋]

■産業構造の変化に応じた人材流動化の必要性
“組織人材の活性化”と“個人の自律的なキャリア形成”を促す経産省の政策で「多様な『人活』支援サービスの創出・振興」というものがあります。事業の詳細や成果については、経産省のサイトでご確認いただくとして、ここでは先月行われた成果発表に位置付けられるシンポジウム
「新たな人材の流れを促す『人活』支援サービスの可能性~ミドルの自律的キャリア形成と移動がもたらす企業価値の向上」(Mar.18, 2014、主催:経産省、事務局:みずほ情報総研)
より、いくつかメモを書き出してみました。

この事業は、民間の人材紹介等会社を介し、「人材が豊富な経済セクターから、その人材の力を必要としている経済セクターへの、人の移動促進」を促すようなサービスの成功事例をつくろうという試みです。

あえて語弊のある表現をすると、次のような狙いがあるといえます。
・大中企業が持て余している40代~50代ミドルを、中小企業へ転職させる
・成熟企業に定年までしがみつこうとする社員を、成長産業へ転職させる
・組織の都合優先でヒトを考える企業に、個人主導のキャリア形成策を考えさせる
・社内育成した人材の外部流出に消極的な企業に、外部を含めた人材戦略を考えさせる

■政府予算を使った、丁寧な“お見合い”
この事業はH24年度に調査研究がまとめられ、その後に実証事業を展開。昨H25年度に3.5億円、今年度は2.9億円の政府予算がついています。H25年度は実施事業者(サービス提供会社)が8社、プログラム参加者(転職または出向を検討し、研修に参加した人)が約150人、受入候補企業(転職先または出向先として手を挙げた企業)が約270社・約400ポストだったとのこと。

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[『人活』支援サービス創出事業の概要]

単に転職希望者と求人案件を集めるだけではなく、例えば、
・海外勤務経験やグローバルな事業展開に関わった経験がある人
・新規事業創出や事業撤退などの修羅場経験がある人
といった人材条件を決めて、
・主に大企業の人事部門にもちかけて出向希望者を募集
・参加者に「学び直し塾」や「成長分野実践研修」といった研修プログラムを実施
・一つひとつの案件に対して丁寧にマッチング提案をする
といったステップを踏んでいます。その結果、実施事業者のうち(株)インテリジェンスでは11人、(株)パソナでは3人、実際に成約に至った模様です。

シンポジウムでは、守島基博一橋大学教授の基調講演、経産省からの政策背景説明、実施事業者からの成果発表、そしてパネルディスカッションが行われました。パネルディスカッションでの登壇者は以下の通り。
(ファシリテーター)
 原正紀 氏(クオリティ・オブ・ライフ 代表取締役)
(パネリスト)
 守島基博 氏(一橋大学教授)
 高橋俊介 氏(慶大特任教授)
 平岡智信 氏 (インテリジェンス キャリアディビジョン 再就職支援事業部長)
 堂前隆弘 氏 (パソナ グローバル事業部 チーム長)

議論で出た発言を、発言者省略でいくつか下に記します。
(※以下は正確な発言そのものではなく、複数の発言趣旨をまとめたり、表現を調整していることをお断りします)

■社員の転職が外部ネットワークを広げる

この事業がアウトプレースメント(不要となった人材の削減)とは違うのか、という質問がよく来る。次の2点で違う。
 (1)組織として不要な底辺を押し出すことが目的ではない。組織として必要な優秀な人材でも、場合によって、大きな観点から流動化させることを意味する
 (2)組織が社員に約束していたはずの雇用契約を破るような(肩たたきのような)転職勧告ではなく、雇用責任は重視したうえで、人材戦略に沿って展開する

転出元と良い関係を保って外に出る(転職する)人材が一定程度いる会社は、外部ネットワークができやすく、長い目で見て組織としてのメリットも大きい。
一方、退職率が高いといっても、元の組織と良い関係が築けないまま退職させてしまう企業は、(ブラック企業的であり)良い訳はない。
ミドル以降の年齢になると、(転職による)採用機会が本当に少ない。それを整備する中でわかるのは、中小企業が大きな受け皿となりうること。海外進出などを目指し、グローバル人材を求めている。
求職側(受け入れ側)からの引き合いがある一方、転出元企業(またはチャレンジする人)の方が少ない。

■多様なキャリア形成
受け入れ側の中小企業にも、ダイバーシティ対応が問われる。つまり異文化で仕事をしてきた人材を受け入れられる環境がないと、せっかくの転職者(出向者)を生かせない。特に若い成長企業の場合、年配・ベテランをなかなか使いこなせない。逆に、これに対応できると、成長企業にとって大きなプラスとなるだろう。

現在のミドル個人個人は、自分のキャリアを自分でデザインしにくい時代になっている。そのためか、非常に功利的に(損得の問題として)キャリアを考える傾向がある。キャリア自律という言葉を大いに誤解しているのではないだろうか。若いうちから自ら仕掛けていく経験を踏むことが必要か。
研修では、語学や財務のようなスキル研修より、自己理解研修といった内容への反響が大きかった。今までキャリアの棚卸しをしたことがなかった人が多かったためと思われる。

転職は、決してドロップアウトでなく、多様なキャリアの一つであると捉えるべし。
産業構造の変化により、多人数の職種転換が必要となる。何も対策せずにいると、今の40代くらいの世代はあと10-20年経った時に(居場所がなくなり)、大問題になリかねない。

■企業の人材戦略の考え方が問われている
特定の技術知識・市場知識を身につけさせることは、(研修により)対応可能なことが多い。一方、もっと抽象性の高い能力(例えば、その人の持っている意識・性格に強く関連する部分)は、すぐに身につけられないものである。マッチングにあたっては、その見極めが重要。
マッチングにおいて重要なのは、“思い込み”をしないこと。個々の人ができる仕事の内容を分解し、例えば「ある地域で発揮した能力を、他の地域でも応用可能」と判断できることがある。
“To Be Hired”的(あるべき人材能力を厳格に規定してそれに合う人のみを採用する)な人材採用ではなく、今いる人材をこうして活かしていけばよいではないか、という提案がもっと必要だ。

人活産業としては、求人マッチングそのものより、その前工程部分(企業に対する人材コンサルティングや、就業者のキャリア自律支援)にどう取り組むべきかが重要となるだろう。

  *   *   *

以上、あまりまとまっていませんが、もっとあってしかるべき人材流動化に対し、企業側にも個人側にも課題があることがわかります。個人的な感想として、
「企業は、社員を強くコントロールできて当然などと誤解してはいけない」
「個人は、キャリアを積み上げる責任が自分自身にあることを意識せよ」
といったメッセージが聴こえる気がします。

消費税改訂では「仕訳辞書」にも留意

会計ソフトと消費税率改訂に関するちょっとしたメモ。「仕訳辞書」について、勘定科目の消費税率変更見落としに注意! 既登録の仕訳パターンの税率を、早めにすべて残らず設定し直した方がよいと思われます。

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[会計ソフトの仕訳辞書登録例]

4月から消費税率が改定されます。消費税改訂対応の会計ソフトであれば、伝票日付などを元に税率の初期値が「8%」となる設定になっているかと思います。もちろん、仕訳ごとに5%か8%か異なる事がありますので、その初期値を仕訳入力時に確認し、訂正する事になろうかと思います。

このあたりまでは経理処理上、当然皆さん注意されるでしょう。ただ、「仕訳辞書」を使っている場合、その辞書の内容を変更しないと、4月以降の税率変更を意外に見落としてしまう危険がありそうです。これまでと同様に仕訳辞書を呼び出して安心して伝票入力してたのに、実は税率5%のままで入力されていた…、なんてことに後から気づくことになるかもしれません(システムの仕様によるので、一概にはいえませんが)。

システムによってはかなりの数の仕訳パターンが元から登録されているでしょう。自ら登録したものもあるでしょう。これら既登録の仕訳パターンの税率を、早めにすべて残らず設定し直した方がよいと思われます(写真は、仕訳辞書設定の画面例)。もちろん、仕訳入力時に確実に確認できるなら問題ないのですが、ずっと後になって、ごくたまにしか発生しない仕訳について仕訳辞書に頼るといった可能性があります。ふと見落とす可能性がありそうですよね。

仕訳辞書など全く使わない、といったユーザーには関係ないかもしれません。でも仕訳辞書は、使いようによって、会計ソフト上の仕訳データベースを使いやすく整理させる効果を得られます。例えば「仕訳パターンの摘要欄に同じキーワードなどを登録しておくことで用語を統一し」「あとで間違いを見つけやすく」また「キーワード検索して管理会計上役立つ会計資料を作る」といった使い方ができるわけです。そうして便利に使っている方なら、念のため確かめておくことをお薦めします。

神田川と丸ノ内線

神田川の中から撮影した写真です。小高い丘を、江戸の初期に人工的に掘り取って治水した結果、本郷台と駿河台の間が結構深い谷川になっています。よく知られているように、そこを地下鉄丸ノ内線が横切ります。

神田川と丸ノ内線
[神田川と丸ノ内線]

あけましておめでとうございます。
 当社は、郵便による年賀状を省略しています。
 このサイトにて、皆様にご挨拶させていただきます。

今年は、地下鉄が通り過ぎるところ。比較的真近から撮影することが出来ました。ここのわずか下流は、本blogで以前にご紹介したことのある旧万世橋駅(交通博物館閉館)。少し前に新しい商業施設に生まれ変わりました。また、少し上流に行くと、周囲のビルがほとんど見えず、都会とは思えない深い森のような風景が現れます(私のfacebookに写真を掲載しました)。テレビドラマ「仁 JIN」でJIN先生が飛び降りたとされる辺りです。神田川クルーズは、なかなか不思議な風景を見せてくれます。

当方からの情報発信は主に松山のFacebookで行っており、本blogはごくたまにしか更新していませんが、これからもまとめ記事やお知らせなどに使っていく予定です。
今後とも宜しくお願い申し上げます。