「ビジネス能力検定1級テキスト」

「マネジメントの基本」という副題がついています。単なる検定試験用の教科書ではなく、いくつか実践的に役立つ内容が盛り込まれています。

Bken1級テキスト
「ビジネス能力検定1級テキスト2007年版 マネジメントの基本」
【財団法人専修学校教育振興会(監)、2007年、日本能率協会マネジメントセンター刊】

■問題解決法、コーチング、交渉術、財務計画書…
ビジネス能力検定(略して「B ken」。1級、2級、3級)は、もうすでに結構長い間行われている検定試験です。毎年この試験用の教科書が各級別に発行されていますが、2006年に大改定がありました。当社では、1級テキストの一部について少しだけお手伝いさせていただきました(内容の大半は別の方が執筆されています)。

〔目次〕
第1編 マネジメントの基本とビジネス技法
1 課題解決と知的技法
2 情報力と提案力
3 キャリアマネジメント
第2編 組織とリーダーシップ
4 職場を変革するリーダーシップ
5 ビジネス交渉術
6 活力ある組織の運営
第3編 事業プランニング
7 マーケティングと経営戦略
8 事業推進のための財務
9 経済・経営の一般知識

目次にあるようにカバーしている分野は広範囲ですが、実践的な情報や事例および今日的な話題がいくつか盛り込まれています。たとえば、コーチングの進め方、外部との交渉術、目標管理制度、ビジネス法務、内部統制システムの仕組み、ビジネスプランや財務計画書の作り方など、入門的な内容とはいえ、多くの一般ビジネスパーソンに役立つところがあるでしょう。

■ドキュメンテーションのイロハから、体系だった提案書まで
以前の記事(書評)「RFP入門 ― はじめての提案依頼書」で、ビジネス・ドキュメントの題材が実践面で役立つことに触れました。本書では、提案依頼書より多くの人が作成に携わるであろう「提案書」について、8ページほど使って構成例が解説されています。冒頭の写真がその一部です(小さくて読めないと思いますが…)。

このテキストシリーズは、1級から3級までこうしたビジネス・ドキュメントの実例が示されていることが一つの特徴といえるかもしれません。文書作りの“イロハ”である定型的文書から、級が上がる順に複雑で非定型的な文書へとステップアップしていくことになります。

・3級テキスト
(社内向)業務日報、議事録、通知書、報告書
(社外向)請求書、業務依頼書、照会書、挨拶状、招待状、礼状、年賀状
・2級テキスト
(社内向)議事録、報告書
(社内外向)企画書
(社外向)督促状、詫び状、謝絶状、見舞状
・1級テキスト
(社内外向)提案書

かなり長い間ビジネスの世界にいても、日々の業務は意外と限られた範囲にとどまっていて、あらためてこうした文書作成に直面すると戸惑ってしまう経験が誰にもあるものです。文書の書き方は組織や環境によって“流儀”が大きく異なるものなので、文書例によっては「ずいぶん古臭い書き方だ」とかいろいろ感じる部分もあるかもしれません。でも、文例集とは違った意味で役立つ書物になっているように思われます。

昭和レトロ 2-多店舗展開する居酒屋

懐かしい昭和風の店舗を形式化して、フランチャイズ展開を始めている企業があります。

半兵ヱ

■フランチャイズに足を進める
以前の記事「昭和レトロ 1-昭和風の外食店増える」で、秋葉原UDXビルの「アキバ・イチ」を例に挙げて、昭和レトロ風の趣が強い外食店および商店街が増えていることを書きました。そんな昭和レトロを切り口にして繁華街に店を持ち、本格的なフランチャイズ(FC)展開まで足を進めている外食チェーンが現れています。

冒頭の写真は、居酒屋「半兵ヱ」渋谷店の店内。半兵ヱは、秋田に本拠を持つドリームリンクという会社がチェーン展開をしています。直営店20店のほか、すでにFC店が10店。半兵ヱ以外にもテーマパーク型居酒屋(銀座カンカン)、駄菓子バー、ラーメン店などの外食業態を開発していて、それらを併せると、2007年1月時点で直営店35店、FC店50店とのことです。

半兵ヱ http://www.hanbey.com/index.html
(株)ドリームリンク http://www.dreamlink.co.jp/

半兵ヱのエリア・フランチャイズ制による多店舗化を目指して、この1月から各都道府県のエリア本部募集を開始しました。

外食チェーンのFC展開自体はもちろん珍しいものでなく、事業拡大の一歩と位置づけられるでしょう。やはりここで注目したいのは、「昭和レトロ」の定番作りに踏み出していることです。同社にFC本部(フランチャイザー)としての実力がどの程度あるかは何も確かめていませんが、直営からFC、さらにエリアFCへと体制を構築できるということは、とにかくも店舗の運営をフォーマット化(標準化)していると考えられます。

■ひと月に21回訪れた客がいた
店内の様子は見ての通り。壁は多数のポスターや看板(日活映画、ソース・醤油、洗剤・薬、赤玉スイートワインの有名な女性ポスター…)でいっぱいです。止まった時計、映らないテレビ、コカコーラの250ml復刻缶、鉄腕アトムの人形など、小物・大物がそこかしこにあります。BGMはもちろん昭和の歌謡曲、童謡の類で、次々に懐かしい曲が流れてきます。

メニューは実に多種多様。焼き鳥、串焼き、おでん、鉄板焼き、刺身、漬物、揚げ物、駄菓子、酒(ホッピーや電気ブランから定番ウイスキーまで各種)…。「のりたまご飯」(卵ではなく「のりたま」がかかっているご飯)「永谷園のお茶漬け」「大塚のボンカレー」など、目を惹くものだけでも挙げればきりがありません。

値段は、焼き鳥1本50円、目玉焼90円、“高級ねこまんま”180円、ウイスキーのショット290円、よっちゃんイカ30円…。客単価は2000円前後と一般の居酒屋より安く、酒抜きなら1000円強で済ませることもできるでしょう。「酒を飲みに行く」という感覚より「夕食を食べに行く」気持ちにもなろうものです。

実際、ある店ではひと月に21回も来店した“サラリーマン”(あえて「ビジネスパーソン」という表現を使ってません)がいたそうです。店の人も心得たもので、そのお客さんが「いつものください」と言うだけで、ちゃんと「その人にとっての定番メニュー」が出てくるようになったとか…。ここまでくれば、もう「馴染みの定食屋」を超えて「夕食を食べる別邸」というような存在かもしれません。

お客さんは、昭和を懐かしむオジサンだけでなく、けっこう若い人や女性もいるようです。私が訪れたときには、高校生かと思われるカップルが(もちろん酒ではなく)食事しに来ていました。基本的には昼は店を開けず午後5時以降の開店のようです(店によって違うかも)。2時間の時間制限あり。

■オペレーションに工夫
FC本部の資料によると、「素人でもできるシンプルなオペレーション」で「1カ月の研修で開業可能となる」とのこと。たとえば“お通し”については、生キャベツがテーブルに始めからゴソッと置かれていて客が勝手に好きな量を食べることになっています(自動的にお通し各人380円ナリ)。焼き鳥など料理が出てくる入れ物は、なんて呼べばよいのでしょうか、弁当箱の蓋に網を置いたような金属製の皿です。多くの食材を同じ入れ物で提供できるようにしながら、洗い場の面倒もかけないような工夫がみられます。

オペレーションを単純化しながら多数の「昭和の本物」に近いメニューを提供できる仕組みを工夫して作り上げている様子が伺われます。一つの収支モデルとして、次のような数字が同社の資料に示されています(数字は簡略化し、一部丸めている。1カ月)。

売上高 ――――――― 400万円
売上総利益 ――――― 280万円
人件費 ――――――― 100万円
その他一般管理費 ――  75万円
営業利益 ―――――― 105万円

■濃いレトロ、薄いレトロ
あくまでも外部から見た感想に過ぎませんが、いくつか懸念材料も感じられます。

メニューが非常に多いこと、および薄利多売であることなどからは、厨房で調理をする人の労働負担にかなり頼っているところがありそうです。お客の数がさほど多くない時間帯でも、少し注文が重なると、料理が出てくるのが遅くなってしまったりする可能性があるでしょう。単品の焼鳥屋さん、お好み焼き屋さん、バーとかならカウンター越しにさっと注文してさっと食べることができるのと比べ、顧客にいらいらさせてしまう頻度が高くなってしまうことはないのでしょうか。

もう1つの懸念は、店の運営ではなく店舗コンセプトに関してです。昭和レトロのポスター、料理、小物が、これでもかと店内に満ち溢れているととても面白いのですが、一つ間違って“やりすぎ”にならないかと心配します。単独店で少数の固定客を長くつなぎとめることに成功している店ならともかくも、繁華街を中心に多店舗展開して広く顧客を集めるとしたら、際立って面白い作りは濃すぎて、逆に“飽き”を生じさせるもとになるのではないかと思われます。

つまり、いままでの昭和レトロが「特に意識して訪れる場」「遊園地のように遊びに行く場」つまり“ハレ”の場として注目されていたものだとしたら、「飽きのこない日常集う場」「安心して毎日定食を食べられる場」つまり“ケ”の場としての店舗開発をしていくことが、息の長いフォーマットとして根付くための重要な視点ではなかろうかと思うわけです。「ナンジャタウンの福袋商店街」や「台場1丁目商店街」とは求めるものが少し違うはずです。

でもまあ、それは次のステップなのかもしれません。今は少し尖がっていた方が注目も浴びるし、まだまだ飽きもこないでしょうから…。

■多店舗展開しやすいフォーマットはどれか
他に昭和レトロ居酒屋として次のようなところが挙げられます。

・ハッピー
五反田と新宿(2店、うち1店は立ち飲み店)の計3店。NKG & アソシエイツという会社がプロデュース。マスコミによく取り上げられる店としてはこちらもかなり有名です
NKG & アソシエイツ http://www.nkg.gr.jp/shop/happy.html
五反田ハッピー店長blog http://g-happy.cocolog-nifty.com/blog/
・まんぷく食堂 有楽町コンコース
・朝日食堂 六本木
・ラッキー酒場 麻布十番
・三茶氣 三軒茶屋。経営はエイジア・キッチン
・昭和横丁 蒲田

これも挙げればきりがありません。web上の情報とかを見る限り、“昭和度”の濃さ/薄さ、酒中心/食事中心、価格帯など違いがあります。多店舗化を考えるかどうかは経営者の考え方によるでしょうが、標準フォーマットとして成立しやすい業態はどのあたりにあるのでしょうね。

「RFP入門 ― はじめての提案依頼書」

発注者自らが、求めるシステムやサービスの仕様・条件をドキュメントとしてまとめきるのは、けっこう労力が必要です。

RFP入門・表紙
RFP入門 ― はじめての提案依頼書
【Bud Porter-Roth(著)、渡部洋子(監訳)、2004年、日経BPソフトプレス刊】

■ドキュメント化の重要性
Request for Proposal(RFP)とは、「システムなど何か複雑なものを導入・購買する際に、提供してくれる業者を選ぶため(入札するため)発注者が用意するドキュメント」とでもいえばよいでしょうか。安直な表現をすれば「提案書を書いてもらうためのガイドライン」です。

中小企業や小規模な調達実務を想定すると、業者から提案書さえ受けるとは限らず、場合によると口頭説明と見積書だけで済ませてしまうことも多いものです。提案書を出す前に発注側から「提案依頼書」を出すとなると、「少し大げさ」と感じられる場合もあるでしょう。

でも、特に技術的内容を含む取引では、相互の意思疎通の過程をドキュメントとして残すことの重要性は高いものです。記録として残す習慣があることで、ビジネスの進め方もシステマチックになっていくものと思われます。当ブログの別の記事(※など)で、マニュアル化を重視することで成功したNASAの仕事の進め方について触れました。宇宙に飛ぶロケットや人工衛星となると、それこそ膨大な技術ドキュメントが必要となり、業者の選択では多くのRFPが用意されてプロジェクトが進んでいることでしょう。

「日本企業はNASAの危機管理に学べ」

本書は、RFPの書き方を具体的に説明した実用書です。事務的事項、管理的事項、技術的事項それぞれについて、文書例、必要条件、注意事項などがまとめてあります。本書の事例では、情報システム構築プロジェクトのようなものが想定されています。

■RFPの章立て構成
本書では、RFPの枠組みとして次のような構成例が挙げられています。ただし、以下は本書に書かれている内容そのものでなく、一部を(ブログの筆者である私が)勝手に取捨選択しているとともに、タイトルなど本書に書かれている用語をそのまま使わず“意訳”しています。

[RFPの章立て例] …本書自体の目次ではありません
第1章 概要説明と事務的事項
当社の現状
プロジェクトの背景
提案してもらいたい事項
言葉の定義
提案書の書き方
入札の締め切りと当社の質問窓口
採用決定通知までの手順
第2章 技術的な仕様詳細
プロジェクトの目的と目標
現在のシステムおよび業務の内容
提案書に求められるシステムおよび業務の技術的要件の詳細
機能・性能・業務範囲等に関する条件
第3章 管理面での仕様詳細
現在想定しているプロジェクト計画案
提案書に求められる管理的要件の詳細
(日程、投入する人員・リソース、手法など)
スケジュール全体・納品・保守・文書化等に関する条件
第4章 参加資格
入札に参加できるための条件、資格
第5章 提案者の企業情報
提案書とともに提供してほしい企業情報について
(企業沿革、財務情報、組織人員体制、過去の実績など)
第6章 価格提示のための書式
価格を算出・提示するための明細項目
価格を算出するための注意点説明
契約 契約書(購買契約、保守契約、機密保持契約など)の書式または要件
付録 ワークフローや検討資料、Q&A

中心部分は、第2章と第3章です(本書自体の目次でいうと、第4章と第5章にそれらの説明がある)。「広すぎず狭すぎず、具体的でありながら硬直化していない条件を表現する」ことで、発注者としての意図をきちんと示すことができるでしょう。こうした枠組みと実例が、実際にRFPを書くために参考になると思われます。取引の内容により構成や表現はさまざまであるべきなので「このサンプルのまま使っちゃあかんで…」という意味の注意が書かれていますが、場合によってはここで書かれている実例をなぞるだけでうまくRFPをまとめられるかもしれません。

同時に、読んで試して書いてみるほどに、サンプル文章の言葉の入れ替えだけでは提案依頼書が書けないことも実感できます。こうしたドキュメントをまとめきるには、やはり何度も同様のドキュメントを過去に作った経験がものをいうことでしょう。

■ビジネス・ドキュメントの実用題材に
本書は海外本の訳書のため、直訳したような言葉が多いのが難点です。ビジネスの現場では正直ピンとこない言い回しがけっこうあり、文章の意味を解釈するのに時間がかかることがあります。この本を使いこなすには、書かれている言葉をあらためて実践的な言い回しに頭の中で“翻訳”するステップが必要かもしれません(上に示した[RFPの章立て例]のように…)。

それでも、この種のビジネス・ドキュメントを書いたことがない若手ビジネスパーソンなどにも、構造的なビジネス・ドキュメントの枠組みとか、要件の記述方法とかを学ぶよい題材になると思われます。システマチックにドキュメントを書くことの少ない「ベテラン」より、本書をつてにして構造的に文書を構成しようとする経験不足の若手ビジネスパーソンのほうが、案外良い提案依頼書や提案書を書けるかもしれません。

コンビニ 5-低くなった業界の垣根

コンビニから他業態への業態拡大とともに、外の業態からコンビニ周辺へ進出も目立ちます。関連流通業をまきこんだ、企業買収・業界再編の動きも注目です。

「まいばすけっと」とローソンのベーカリー
〔イオンのサテライト型店舗と、ローソンのベーカリー〕

■店舗立地の妙と物流の強み
これまでコンビニ(標準型)がほぼ独占していた顧客を、他の業態がいろいろな形で侵食しています。まあ、最近始まった話というわけではなく、もう何十年も繰り広げられている争奪戦の一つと考えた方が良いのかもしれませんが…。

イオンが展開を始めている「まいばすけっと」も競合店の一つでしょう。写真の青物横丁店はイオン品川シーサイド店から歩いて7~8分の場所に立地しています。この店は、イオン(総合スーパーであるジャスコ)の近くにサテライトのように店を構えているところが特徴です(まいばすけっとの別の店は、必ずしもサテライトというわけではなさそうです…)。

イオン本体との間に国道を挟んでいることや、私鉄の駅からみるとイオンや他の地元食品スーパーと逆方向にあることなど、「ちょっと駅向こうのスーパーまで行くにはおっくうだな」と心理的に感じる地域の消費者をうまく吸引できる位置にあると思われます。

また、この店からイオンと逆方向に10分ほど歩くとJR大井町駅があり、イトーヨーカドー、西友、アトレ、丸井などがひしめいています。通勤経路の関係などからヨーカドーや西友を使うことが主になっている中間地点の消費者に対して、空白の一部を埋めるような意図が感じられます。

売場面積約150m2、取扱品目数3000品目と、“コンビニ仕様”よりわずかに大きめ。営業時間は7時から24時。入り口を入るとすぐに生鮮品(パック含む)がドンと目に入ることや、飲料や日配品がイオンと同じ価格で手に入ることが、周辺に4~5店あるコンビニとの大きな違いです。

いわゆるサテライト店の類は、これまでも外食チェーンなどで試みられてきましたが、結果的に大きな成功を収めたといえるものは少ないのではないかと思われます。しかし、生鮮に進出したコンビニよりもともと生鮮を扱うスーパーの小型化の方が、消費者からみるとまだ安心して買える気がします。物流の点でも大きな負担はなさそうです。今後どのように変化していくのか、ウォッチしたい店の一つです。

「まいばすけっと」のほか、ドンキホーテの「情熱空間」(広さ180m2、品目数1万2000品目、24時間営業)、小型100円ショップ、駅中コンビニ(キオスク含め)など、コンビニとの競合は増えるばかりです。

■コンビニが併設する“パン屋さん”
少し話の内容が異なってしまいますが、ローソンが12月に開いたばかりの「ナチュラルローソン ベーカリー」は、すぐ近くにあるナチュラルローソン店舗のサテライトのようにみえます。飲料など同じ商品が売られているとともに、普通のコンビニでは対応できていない「焼きたてパン」をきちんと提供する機能を持っています。

同社のニュースリリースには「“焼きたてパン”の新商品開発や、お客さまの動向を調査するテストマーケティングを行う」と書かれています。つまりここで大きな収益をあげたり多店舗展開するというより、売れる商品を作り上げその成果を標準化して他店に広げていくことが眼目のようです。

しかし、逆の発想はできないものでしょうか。標準化した商品開発をコンビニ独自に行うのではなく、例えば各地にあるベーカリーや惣菜店、おにぎり屋さん、和菓子店といった専門店と個々に(または地域ごとに)提携して、それらの専門店をサテライトのように(互いに)利用すればいいではないか? と。

この場合、コンビニ本部が無理に商品標準化を推し進める必要はありません。提携する専門店の商品の特徴を生かすことで、かえってコンビニ個店の強みにつながるはずです。問題は、そうした外部との提携、商品の選択、予定販売数量の予測といったオペレーションとソフトウェアの部分でしょう。地元企業との販売提携にはリスクもあるでしょう。しかし、その部分こそノウハウ化していければいいのではないかとも思うわけです。コンビニが小売チェーン店としての強さを発揮する一方策ではないかと想像します。

■業界再編近い? コンビニ業界
コンビニ業界は、いま少しキナ臭さがあります。少なくとも何らかの企業買収やグループ化が進むだろうと予測されています。7-11、FM、ローソン、サークルKサンクスの4大チェーンがそのまま今後も続くかどうかわかりませんし、それに続く中堅チェーンとなると、いつどこに買収されてもおかしくありません。

いま業界内の噂としては、am/pmが“売り”状態にあるとか。am/pmは「牛角」など外食産業で大きくなったレックス・ホールディングスの傘下にありますが、そのレックスは昨年(2006年)くらいから業績が低迷し始め、11月にMBO(経営者による企業買収)→上場廃止、となりました。戦略建て直しの中で、am/pmおよび高級スーパー「成城石井」といった小売分野は手放すのではないかと噂されているわけです。

もう一つ注目されているのが、コンビニ側からみて強力な競争相手であるSHOP99。ここはプリント基板設計・製造の(というより企業再生のための投資事業会社?)キョウデンという会社が親会社です。基本的には成長段階にあるSHOP99ですが、さすがに出店ペースは鈍っており、そろそろどこかの流通グループに売却されるのではないかと噂されています。

イオン、イトーヨーカドー(セブン&アイ・ホールディングス)、ドンキホーテなど、多かれ少なかれSHOP99に興味を持っていることでしょう。“何でも欲しがるイオン”が有力だとか業界では噂されています。意外とこれまで日本勢の後塵を拝してきた米ウォルマート(&西友)が獲得するなんてこともあるのではないかと個人的には思えます。“Everyday Low Price”のウォルマート式とSHOP99とは相性がよさそうに思えますが、どうなのでしょうか。

(これらの買収話はあくまでも「噂」にすぎません。念のため)

▽追加記事:
SHOP99は、ローソンと資本・業務提携に踏み込んだようです。ローソンストア100とSHOP99は統合に向けて検討されるとのことです。

・ローソンのニュースリリース(2007年2月28日)
http://www.lawson.co.jp/company/news/1171.html

▽関連情報:
・napparaのスーパーなひとりごと
その時、イオンは何をしてたのか?(まいばすけっと)
http://blog.livedoor.jp/nappara48/archives/50345472.html

・外資系経営コンサルタントの論理的思考メモ #052「新たな段階を迎えたコンビニ業界」
http://earthborn.blog12.fc2.com/blog-entry-140.html

「人間特性データベース」

サイト紹介:製品評価技術基盤機構が公開している、身体寸法や体力などの測定結果データベース。無料で利用できます。

http://www.tech.nite.go.jp/human/
nite人間特性データベース画面例

「標準的な人間の身体特性」をWeb上で検索することができます。快適な生活を送るための製品作りや生活空間作りなどに役立てることが主目的とされています。当ブログでは「身体を測る」をテーマの一つにしていますが、実際に存在する人の具体的な測定結果を簡単に確認するのに便利なサイトでしょう。

データベースの各項目を選ぶことで、平均値や標準偏差などの統計値を簡単に確認できます。元データをダウンロードすることも可能です。

データベースに掲載されている項目は、次の通りです。

・人の身体寸法(身長、体重、体脂肪率、身体の各部位の長さなど)
・体力測定(肺活量、血圧、握力、視力、聴力など)
・最大発揮力(手、肩、肘、足、腹など曲げたり伸ばしたりする力)
・手足の関節の動く角度(自力、および外からの力を加えた場合)
・指や手で押したりひねったりする力

やや心配なのは、このデータベースは数年前から公開されているわりに、その後あまり拡充されているようにみえないことでしょうか。測定項目や検索条件は少し充実されたかもしれませんが、全体のデータ件数は約1000件(人)程度であまり増えていないようです。例えば年齢、性別などいくつかの属性で絞り込むと、検索されるデータ数がすぐに2~3件とかになってしまい、統計的な数字は意味を成さなくなります。昨今、公的団体の活動は予算面などでなかなか難しいところがあるのかとも推測しますが、社会的に価値あるデータベースになっていくことを期待したいところです。

▽追加情報
・AIST人体寸法データベース(産業技術総合研究所 デジタルヒューマン研究センター)http://www.dh.aist.go.jp/AIST91DB/
・高齢者対応機器の設計のための高齢者特性の解明に関する調査研究(人間生活工学研究センター)http://www.hql.jp/project/funcdb2000/