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コンビニ 3-生鮮品揃えと均一価格

これまで弱点だった生鮮品に力を入れたコンビニ新業態のニーズは確かにありますが、既存のコンビニ・フォーマットと結局あまり差がなくなるかもしれません。

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[生鮮型のコンビニ新業態 3種]

■多店舗化が始まる“生鮮型”のコンビニ
記事「コンビニ 1-新業態、増える」でコンビニの新業態を次の3種類に分類しました。

A コンビニ基本型の補強
B ファストフード型
C 生鮮ショップ型

このうち「B型」については、前回の記事「コンビニ 2-付加価値型の“実験店”」で触れました。では「C型」はどうでしょうか。具体的に挙げると、次のようなものがあります。
・LAWSON STORE100(ローソンストア100)…ローソン
・Food style(フードスタイル)…am/pm
・99イチバ(キューキューイチバ)…サークルKサンクス
・q’s mart(キュウズマート)…スリーエフ

前々回の記事で「多店舗化まで踏み込めた新業態は『A型』のみ」と説明してしまいましたが、「C型」もいつのまにか結構多店舗化しているチェーンがあります。

■100円、99円、98円…、の均一価格
LAWSON STORE100は2005年5月に第1号店がオープンし、06年11月末ですでに76店舗になりました。ローソン本部は、標準のローソンおよびナチュラルローソンと並ぶ3つ目の主要フォーマットと位置づけています。商品の多くは、価格が税抜100円で均一です(弁当などは200円~400円程度)。ローソンのPB商品(100円対応)がいくつも目に付きます。店によって若干品揃えが異なるかもしれませんが、昔からある“地元の何でも置いている店”(または八百屋さん)を少しだけシステマチックにしたといった感じです。ようするに「雑貨店+超小型スーパー」ですね。

Food styleがオープンしたのは05年3月で、写真の下目黒店が第1号店。06年12月時点で39店舗。首都圏が主ですが、広島県にもすでに複数店進出しています。もちろん生鮮品を置いてあることが大きな特徴ですが、かといって生鮮主体というわけではなく、むしろ日用品・雑貨が結構幅広くある100円ショップ(正確には税抜98円)といった感じです。たとえば下目黒店はすぐ近くに24時間営業の食品スーパーがありますが、そこと比べると生鮮品による集客力は限りなく弱いと言わざるを得ません(あたりまえか…)。「小型100円ショップ+α」といったほうがよいような気がします。

99イチバは06年2月に第1号店オープン。06年12月現在で16店舗です。ここも、やはり全体から見ると生鮮品の比率が高い印象は必ずしもありません。税抜99円の商品が多い(資料によると80%)とはいっても、価格はかなりバラけていて一定していないように見えます。1コインショップのような打ち出し方をしていますが、オペレーション自体が普通のコンビニに近いのではないかとも思われます。

■SHOP99に近づきたいのか、それとも…
生鮮コンビニの分野では、言わずと知れた先駆者「SHOP99」があります。ただしSHOP99は、初めから生鮮“コンビニ”になろうとしたというより、同社が小型食品スーパーのあり方を考えていくなかで、結果的にコンビニと100円ショップを組み合わせたような業態になっていったとされています。

そしてそれらの成功を見たコンビニ各社が、我々にもできるかもしれないとこぞって進出したのが「生鮮型コンビニ」ということになるのでしょう。

コンビニ側が作ろうとしている新業態は、「生鮮」の強みより「均一価格オペレーションの強み」作りが主眼ではないかとも考えられます。しかしそれにしては均一価格も不完全ですし、本部システムの視点からすると、コンビニ基本型の運営システムとどこまで相乗作用があるか、かなり不透明な気もします。

もともと一般のコンビニでも、とくに北海道を地盤としたセイコーマートや、ヤマザキパン系のデイリーヤマザキなどがずっと以前から生鮮品を積極的に扱っています。また、ファミリーマートは、コンビニ基本型の店舗の中に生鮮(基本野菜、キット食材など)の棚を入れる「ファミマフレッシュ」本格展開を発表しました。セブン・イレブンも、いくつかの既存店で生鮮の扱いを実験しているようです。

結局、多店舗化できる「生鮮型」フォーマットは、実質的に上記分類で言う「A型」(コンビニ基本型の補強型)に収束していくのではないかとも予想できます。

▽追加情報
スリーエフも、全店で生鮮品の取り扱いができるよう、生鮮品の集荷機能を物流センターに持たせることにしたそうです。q’s martとは違い、小パックの野菜や精肉などが中心になるようです。(日経MJ 2006/12/18号より)

コンビニ 2-付加価値型の“実験店”

オフィス街や女性のニーズ、付加価値サービス、昼食のバリエーションに応えようとしたとき、コンビニはやけに“すまし顔”になるようです。


[付加価値型のコンビニ新業態 3種]

■女性が主役だと、何もかもが贅沢になる?
1つ前の記事「コンビニ 1-新業態、増える」で、コンビニ新業態を次の3種類に分類しました。

A コンビニ基本型の補強
B ファストフード型
C 生鮮ショップ型

このうち「B型」を具体的に挙げると、次のようなものがあります。
・Gooz(グーツ)…スリーエフ
・HAPPILY(ハピリィ)…am/pm
・ForkTalk(フォークトーク)…サークルKサンクス

安易に「ファストフード型」と呼んでしまいましたが、これはGoozとForkTalkのイメージからくるものです。店内または店先に客席があるイート・インの店作りで、購入したばかりの食事類や飲食類を座ってすぐに食べることができます。

これらの店の最大のターゲットは20代~30代の女性。女性陣の要望にきちんと応えようとすると、どうしてもいろいろなところに贅沢さがでてきます。

■好きなコーヒーの種類を選べる
今年(2006年)5月に開店したGooz渋谷3丁目店は、一見スターバックスのようなコーヒーショップのようにも見えます(Goozの第1号店は2004年2月に横浜でオープン)。売り場面積130m2で、混雑時以外店内はゆったりしているようです。置いてある商品の多くは付加価値モノ(要するにやや高め)。そしてセルフのコーヒー・コーナーで多くの種類(17種類?)から好きなコーヒーを選ぶことができるというあたりが特徴的です。一言で言うと「スタバ+コンビニ」でしょうか。

同9月にオープンしたForkTalk八重洲通り店は、コーヒーショップというイメージはあまり強くありません。20席強の客席はゆったりしていて、長居したくなるほどです。店内調理でパスタなどをサービスできるのが特徴。店内調理品もすべてテイクアウト可。もちろん、カップラーメンなどインスタント食品を買って客席で食べても構いません。「小型パスタ店+コンビニ」といったイメージでしょうか。

HAPPILY(2005年12月オープン)は、上記2フォーマットとはかなり違います。イート・インはなく、広い店舗に約7000アイテムの商品を並べているようです(オープン時資料より)。コンビニ基本形が約3000アイテム、ForkTalkが約2000アイテムですから、品目はかなり多いことになります。惣菜類やデザートなども多数揃えていますが、“女性のためのコンビニ”と強く謳っているように、化粧品関連が非常に充実しているところが目立ちます。少し偏った表現かもしれませんが「小型ドラッグストア+コンビニ」のようにも思えます。

■実験店舗の域を脱出できるか
イート・インは、以前からミニストップが実践してきました。しかし、少なくとも都会ではどうしても広い客席を用意することができず、オフィス街で、もしくは女性が安心して利用する形にはなっていませんでした。多種類のコーヒーとか調理パスタなどは期待されていなかったわけです。その他、女性誌、アイスクリーム、サプリメント、あぶらとり紙(!)、など女性向けの商品があふれて“すまし顔”の各店は、それぞれの店の近場で働くビジネス・ウーマンにある程度支持されることでしょう。

しかし、これらすべては「実験店舗」。車で言えばコンセプトカーのような位置付けなのでしょう。都心ではあまりにも空間効率が悪すぎるでしょうし、商品戦略も明らかに試行錯誤をしているようです。これらの店がこのままのフォーマットで多店舗化されることは考えにくいでしょう。実際、一部はすでにフォーマットの見直しを進めているとも伝えられています。

東京日本橋では、託児所併設のコンビニ新業態「ハッピー ローソン」が今(12月15日)まさにオープンしようとしています。これも形を変えた「付加価値型の実験店」といえそうですね。土地利用の関係もあり、約6カ月の限定営業とのこと。ローソンは1年ほど前からこのタイプの店舗開発を発表していたことからすると、実験店の開店にたどり着くまでにも、予定より長い準備期間を要したようです。

実験店だからこそ挑戦できる試みは多いことでしょう。でも、もしかしたらフォーマットを試行錯誤した結果、“普通のコーヒー・ショップ”、“普通のパスタ店”、“普通のドラッグストア”、“普通の託児所”が店の軸足となるかもしれません。もちろんそれでも、トライする価値は多分にある…、と思っています。

▽関連情報
太田美和子の取材日記 Gooz渋谷3丁目店
http://blog.goo.ne.jp/momoboom/e/0754ed437af90f2980a2462096cc4774
…Goozに限らず、小売などに関する第三者的な記事多数

次世代コンビニの情報は『次世代コンビニブログ☆』 Fork Talk(フォークトーク)
http://ameblo.jp/next-conveni/entry-10018129447.html
…Fork Talkに限らず、各コンビニ店、コンビニチェーンの記事多数

小さな石ころの上で 女性のためのコンビニ「HAPPILY(ハピリィ)」
http://blog.fujii.org/?eid=405661
…HAPPILYに限らず、小売流通ほかビジネス情報各種

コンビニ 1-新業態、増える

転換期といわれるコンビニの業態に、いくつもの新パターンがでてきました。しかし特徴を出そうとすると、結局既存の他業態に近づいていくようです。

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[CVS新業態の位置づけ1]

■いよいよ飽和状態となったコンビニ
コンビニの優位性は、ある一定のフォーマット(店舗形式や商品構成)とある標準的なオペレーションで、生活のさまざまな用途に適した商品、サービスを提供できることにあります。もちろん見かけのオペレーションだけでなく、コンビニ本部の商品開発システム、物流システム、情報システムなどに裏打ちされて、あの業態が成立します。

しかし、現在、国内のコンビニの店舗数は約4万店。特に都市部では相当の飽和状態にあります。一説では、国内の店舗数の限界は5万店程度だろうとも噂されていて、各コンビニ・チェーンは頭をしぼってその生き残りを模索しているところです。

そうした現状が、各コンビニ・チェーン本部に、さまざまな新業態の開発を促しているといえましょう。ただし最大手セブン・イレブンは基本型の店舗フォーマットと異なる業態開発に懐疑的で、既存店舗内での実験にとどめています。

■生鮮コンビニ、100円コンビニ、シティ型コンビニ
マスコミでいろいろ報道されているように、コンビニの新業態には次のようなものがあります。

A 基本コンビニの補強型
コンビニ基本型とほとんど変わらないが、少し凝った特別な商品群が用意されている。
B ファストフード型
「A」よりさらに品揃えを特化または付加価値商品、サービスを取り入れたもの。どちらかというと女性向け、またはオフィス街需要を見込んでいる。
C 生鮮ショップ型
基本コンビニの最大の弱点である生鮮品の品揃えを重視したもの。1品99円など価格が一定している業態が多い。どちらかというと中高年の需要を狙ったもの。

これらをポジショニング・マップの形で位置づけしてみたのが、冒頭の図です。

コンビニ新業態のポジショニング・マップや性格付けはいろいろな方がいろいろなやり方で見せていると思いますが、ここでは
・店舗オペレーションが
単純さ重視か/付加価値をつけ少々複雑さがあるか
・品揃え商品が
生鮮または生活重視か/雑貨や各種サービス重視か
で縦横の軸を作ってみました。
(まだまだ軸の定義や、各店舗のあてはめ方などいい加減です)

■実際に訪れてみると…
各業態の狙いをいろいろ聞いてみると、結構魅力的に思えます。しかし、これらの店舗を実際に訪れてみると、必ずしも便利さが感じられなかったり、面白みがなかったりすることがあります。もっとも私のような「観察者」の目線は実際の利用者のニーズとはかけ離れていることが多いので、たんに「面白くない」からといって切り捨てるべきものではありません。

でも、これら数々の新業態でこれまで本格的な多店舗展開まで踏み込めたものとなると、ナチュラルローソン と ファミマ!! くらいでしょうか。上記分類でいうと「A」に限られます(※ローソンストア100をはじめ生鮮型CVSはすでに多店舗化しています…。追加記事参照)。そもそも基本型と相当近い店舗形態なので、これらを「新業態」と位置づけてよいものかどうかも疑問が残ります。

一方“とんがった”新業態は、その特徴を出そうとすればするほど、他の業態、つまりSHOP99のような生鮮100円ショップとか、スターバックスのようなコーヒー・チェーンに限りなく近づいてしまいます。そして「その分野」では、その専門のほうが強いわけで、わざわざコンビニの派生型を作る意義が薄れる危険性があります。

はたしてコンビニの新業態のなかでは、今後どこが成功を収めていくのでしょうか。コンビニ基本形の弱点やそもそもの小売業態に関する話も含めて、時々ウォッチしていきたいと思っています。

▽関連情報:
コンビニウォーカー

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…コンビニに関する基礎情報、最新情報がまとまって掲載されている

日経ビジネスonline ローソン 量産続く新業態の“忘れ物”
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20061130/114613/
…“定点観測”の1社としてローソンを採り上げている

コンビニ店員のつぶやき日誌!! コンビニ業界ニュース
http://park6.wakwak.com/~ukyou/
…コンビニに関するさまざまな情報

上田流通問題研究村 コンビニチェーン動向
http://www.d1.dion.ne.jp/~syunsyun/CVS.html
…流通業界および流通情報システム全般に関する情報

身体を測る 08-心拍はゆらぐ

心臓の鼓動には思った以上に身体のいろいろな情報が含まれていて、自律神経の活性度などが分析できるそうです。

心電図
[心電図の模式図]

■健康な人のR-R間隔は適度に変動する
心臓はもちろん自律神経(交感神経と副交感神経)の支配を受けて動いているので、その支配の影響が脈拍に現れます。脈拍を調べて分析すると自律神経の活性度がわかり、そこからストレスの大きさ、睡眠の深さ、全身持久力の強さなどが計測できるそうです。その計測のカギともいえるのが、脈の強さとか頻度ではなく、脈の“ゆらぎ”だというのが興味深いところです。

心電図をとると、上のように心臓の鼓動に合わせて電圧が上下するグラフが得られます。グラフの横軸は時間です。通常、心臓は規則正しく脈を打っていて、1拍の中にP、Q、R…、というさまざまな波が含まれます。うち最も大きなピークであるR波の間隔が「R-R間隔」、つまりは一つひとつの脈の速さを意味する時間です。たとえばあるときに測ったR-R間隔が1秒だとしたら、その時の1分間の脈数は60秒÷1秒=60(拍)です。

健康な人の脈は毎回ほぼ規則正しく打たれるわけですが、面白いことにこのR-R間隔は常にごく微妙な変化をする、つまり“ゆらぐ”そうです。「R-R間隔変動」といって、通常は必ずこうした脈のゆらぎがあるそうです。一方心筋梗塞や糖尿病などの疾病がある場合、運動やストレスで心拍が高くなった場合、または年をとった人の場合など、この心拍のゆらぎは減ってしまうそうです。

我々一般人の常識からすると、心拍のゆらぎというとなんとなく“不整脈”のイメージを持ってしまいますが、そうではないのですね。考えてみると、人を興奮させる作用を持つ交感神経と、落ち着かせる作用を持つ副交感神経が、常に身体に影響を及ぼしているわけですから、それら自律神経が正常であれば心拍にすぐさま反応するというのも納得いきます。

■心拍の様子から身体の状態を測る
研究によると、心拍変動には相当に複雑な要素が含まれていて、生理学的な制御機能が長短さまざまな周期を持つ成分と関係しているとのこと。つまりR-R間隔変動はいくつもの種類の波の合成と見ることができるようです。

うち、周期が長い(周波数の低い)LF成分と周期が短い(周波数が高い)HF成分の2つがかなりはっきり認められます。LFは主に血圧調整の機能と関連しているゆらぎで交感神経と副交感神経の両方に影響を受け、HFは主に呼吸活動からくるゆらぎで副交感神経と強い関係があるとされます。

ゆらぎの大きさ(ばらつきの度合い)をそれぞれ「LF」「HF」としたとき、
・LF/HF =アクセルの利きのよさ(交感神経の活性度)
・HF =ブレーキの利きのよさ(副交感神経の活性度)
として指標化できるという解釈になっています。

さらにこれらの指標(LF、HF)と実際に計測したい何らかの状態(値「X」)との相関関係が証明できれば、
X = f (LF, HF)
といった関数(式)を導くことができることになります。

(1)人のR-R間隔を、何らかのセンサーを使って実測する
(2)R-R間隔からR-R間隔変動の値(LFとHFの値)を計算する
(3)LFとHFの値から、式にあてはめてXを計算する

という手順で、身体の何らかの状態(ここでは「X」)を測定できるということになります。

上記のうち(2)は一見難しそうに思えますが、数値処理をすることは技術的には難しくありません。「スペクトル解析」などといった純粋に数学的な処理なので、応用分野に関わらず定型的に計算できます。(1)は、ある状態の心拍をかなり精度良く計測できるセンサー技術が必要になります。(3)は、つまるところその応用分野で実用的な変換式や変換テーブルができるかどうかという話になります。現実に商品化するにあたっては、(1)と(3)を実用レベルでうまく組み合わせることができるかどうかがポイントになってくると思われます。

■自律神経から睡眠状態を測る
以前の記事「身体を測る 05-健康状態がわかる睡眠シート」で、寝ている間の睡眠の深さを測ることができる商品例をご紹介しました。具体的には、布団の下にシートを敷くだけでREM睡眠、浅いノンREM睡眠、深いノンREM睡眠…、をリアルタイムで判別できます。生体測定 製品・サービス一覧にそのちょっとしたリストがあります。

睡眠の深さとR-R間隔変動とは深い関係があるらしく、いくつかの商品はまさにこの応用で睡眠の深さを測定しています。すべて詳しく調査したわけではもちろんありませんが、リストに挙げたもののうちスリープシステム研究所(旧社名:シービーシステム開発)とジェピコの製品はこの種に該当するようです。他の睡眠シートや睡眠センサーは異なる方法(たとえばイビキの大きさ、体動の様子などからの判定法)をとっているか、もしくは公表されている情報だけからは仕組みが十分に判断できないものでした。

余談ですが、眠りの深さは自律神経系のデータから判別できるものの、最も浅い眠り(…正確な表現ではありませんが)である「REM睡眠」と「覚醒」状態の判別はできないらしいことです。睡眠の深さという高度な判断ができる一方、「起きているか/(REM睡眠として)眠りに入ったか」「目覚めたか/夢を見ながらまだ寝ているか」という、目で見ればわかるような簡単な違いをこの方法だけで判別するのが難しいというは、なんだか少し意外な気がします。結局「REM睡眠」と「覚醒」の判別は、体動や呼吸といった別の信号を加味して判断する場合が多いようです。

なお、眠りの状態を判断してアラームがなる腕時計「スリープトラッカー」(ウェザリージャパン)という商品が一部で話題となったようです。ただしこれは睡眠深度測定をしているというより、起きる時間に近づくと体動を感知して鳴らすタイミングを判断しているというものと思われます。上記リストにも挙げてありますが、「睡眠モニター」ではなく「加速度計」の一種として分類するのが適当でしょう。

■安静時の心拍変動には豊富な情報が含まれる
身体を測る 06-メタボリ症候群と全身持久力」では、最大酸素摂取量VO2maxの測定の話をしました。一般にVO2maxを測定するにはトレッドミルなどで目いっぱいの運動をして呼気などを測定しなければなりません。

しかしここでも、心拍変動からVO2maxを測定しようとする理論があるらしく、実際にハートレートモニターの大手POLAR(ポラール)社が、Own Indexという独自の分析手法を盛り込んだ商品をすでに発売しています。(「生体測定 製品・サービス一覧」リストにも掲載しています)。

ポラール「Sシリーズ」に備わっている「フィットネステスト」がそれで、「VO2maxと同等の数値が計測できる」としています。面白いことに、運動したときの心拍を測るのではなく「5分間の安静時心拍」を測って割り出します。心拍変動は安静時に最も情報が安定して得られるらしいので、おそらくそうした理論と臨床的研究から編み出されたノウハウなのでしょう。

ビッグブルー(ポラール心拍計専門店)
ポラール

ただしポラールの「フィットネステスト」は、心拍データだけから直接的に計測するというより、「年齢」「性別」「身長」「体重」「運動習慣」を入力した上で割り出すようです。家庭用体組成計で体脂肪率を計測するのと同じようなイメージですね。とすると、(よくわかりませんが)精度についても「家庭用体組成計程度」ではないかと推測されます。

スポーツ愛好者などもう少し詳しく心身の状態を測定したい向きには、もう一歩踏み込んで、たとえば運動中のR-R間隔変動をリアルタイムで測定してその時のリラックス度/ストレス度を表示してくれたり、あるいはLF値、RF値を連続で記録してくれたりすると役に立ちそうな気がします。1拍ごとのR-R間隔を計測できる機能を持つ高機能なハートレートモニターもあるので、あとは計算すればよいだけではないかと思われますが、やはり運動時の心拍変動を精度高く計測するのは難しいものなのでしょうか。

心拍変動は、ストレスの測定などにも使われている例があるようです。無侵襲で身体の豊富な情報を導くことができる切り口として、さまざまなセンサーやアイデアが今後実用化されていくのではないかと予想されます。