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技の伝承と人材育成1(JILPT調査より)

モノづくりで強みを発揮し続けるため、メーカーは職人技の伝承に苦心しています。個人から個人へ熟練技術を直接伝授する方法。そして標準化・システム化を通じて集団でノウハウを残す方法。この2つを両輪とした技能者の養成が基本といえそうです。

調査集計の図1-1
〔図1-1 技能系社員に求める知識・技能1〕

■機械・金属関連産業に対するアンケート調査
中小企業はもちろん大企業においても、経験豊かな技能者たちが次々に引退する時期を迎えていて、職人技をどのように次の世代につなげるかが大きな課題になっています。技を引き継ぐべき中堅層の薄さも指摘されています。前回記事「中小企業の技術マネジメント」で触れた、「就業者100人のうち1人」いるはずの優秀な職人たちの技は、企業内でどのように伝承されようとしているのでしょうか。

この08年5月に公開されたJILPT(労働政策研究・研修機構)の調査「ものづくり産業における人材の確保と育成-機械・金属関連産業の現状-」という調査結果の一部を紹介します(※1)。前回の記事で採り上げた書籍とは著者も内容も違いますが、調査・分析対象はまったく同じ「金属・機械産業に属する中小企業の技能者・技術者」です。

なお、本サイトでは過去にも何度かJILPTの調査結果を紹介していますが、この記事を書いている私(松山)はJILPTの関係者ではなく、まったくの第三者です。たまたま興味のある調査が目に留まったことから書いている記事で、要するに“外野の勝手な感想”です。念のため! (※2)

この調査の対象事業所数は2000強、うち従業員100人以下の中小企業(事業所)が全体の2/3を占めますが、従業員300人以上の規模の大きい事業所も含まれます。調査はアンケート方式(とヒアリング)。回答率21%。調査時期は07年8月から9月。技術系/技能系、正社員/非正規労働者それぞれの人材育成のやり方や重視している点について突っ込んだ質問をしています(※3)。

冒頭の図1-1は、「技能系正社員に求められる知識・技能は何か」についての回答結果です。この質問では「最も重視」「2番目に重視」「3番目に重視」と3つまで順位をつけながら選択肢を選ぶ形式になっています。図1-1にあるように、「生産の最適化や工程合理化のための技能・技術」を求めているとする割合が最も高くなっています。

■微妙に異なる2つの方向性
実際に中小企業の経営者に接していると、共通して次の2つの想いを持っていることが実感できます。

(A) 現場の作業を通じてしか伝えられない職人技を、なんとか後続に伝えたい
(B) 個人が持つ技を標準化・文書化して、できるだけ共有財産にしたい

両者は微妙に重なり、微妙に異なります。

(A)は、主に熟練技の伝承のことでしょう。その多くは“暗黙知”に近いもので、ほとんど個人から個人へ直接伝授するしかやり方が考えられません。マニュアルが作れる可能性はかなり低く、講義など間接的な訓練ではなんとも伝えがたく、OJTを通じてのみ伝承できるものかもしれません。

(B)は、やはり伝授が難しいものであるとはいえ、ある程度の手間隙をかければ標準化してマニュアルなどに残せ、集団で利用可能となりうる類の技の伝承を意味します。「段取り手法があるもの」と表現するとまた少し意味が違ってしまうでしょうか。理想としてはシステム的な運用につながることが期待されます。つまり“形式知”に展開することが(簡単ではないかもしれないが)不可能ではないものです。できればOff-JTによる体系的な訓練体制に持ち込みたいところです。

これらを何と名付ければよいのか迷いますが、一応(A)を「個人力」、(B)を「集団力」と名付けておきます。もちろん(A)でも複数の人が集団的に伝えるものもあると思いますし、(B)でもほとんど個人の力に依存する場面もありうるでしょう。良い表現がみつからないので、便宜的な言い方だとお考えください。

■それでも技の“形式知化”が求められている?
この2つの伝承形態は、モノづくり企業が自らの強みを社内に蓄積していく上で欠かせない両輪といえそうです。ただし、時代によってこの両輪のどちらを重要と考えるかは差があるようです。ざっくりとした感触として、今は(B)の「集団力」を求める傾向が強いようです。

と思い至ったところで改めて図1-1を見てみましょう。技能系社員に求める知識・技能の上位3項目は、確かにいずれも(B)に近い内容ではないでしょうか。続く3項目が、いずれも(A)に近い内容に思われます。

…アンケートでの質問の前提を無視していることとか、例外がたくさんありそうなこととか、いろいろ突っ込まれそうです。正確な定義による分類でなくあくまでもイメージ的な分類であることをお許しください。

次の図1-2は、同じ項目のなかで(B)「集団力」の代表とイメージできる「生産工程を合理化する知識・技能」と、(A)「個人力」の代表といえそうな「高度に卓越した熟練技能」について、「5年前に最も重視していた」とする割合と「現在最も重視している」とする割合を比較したものです。グラフが示すとおり、この2つの項目の数値は逆転しています。「生産工程合理化」の要求が高まり(16.4%→28.5%)、「卓越した熟練技能」重視は低く(30.5%→19.4%)なりました。ここからも、今は「(B)集団力を求める傾向が強い」ことが裏付けられます。

調査集計の図1-2
〔図1-2 技能系社員に求める知識・技能2〕

手取り足取り伝えるべき職人技伝承の必要性が見直されているとは言いながら、それでも今積極的に手をつけていきたい課題としては、やはり技を標準化または形式知化して、組織として利用していく道標を作ることなのかもしれません。調査からは、そんな方向性が垣間見られるのではないでしょうか。

■求める技能×実施している訓練、の相関性
この調査では、「求められる知識・技能は何か」という質問とは別に、現在「どのような教育訓練を実施しているか」という質問があります。調査設計の段階で、
「求められる知識・技能は何か」:TO BE的質問(あるべき姿)、What(目標)
「どのような教育訓練を実施しているか」:AS IS的質問(現在の姿)、How(手段)
という位置付けがあったのかもしれません。

そしてこの2つの回答のクロス集計が資料に掲載されています(図表7-1-2の下半分)。これを俯瞰してみると、次のような傾向があるように思われます。

調査集計の図1-3
〔図1-3 ”求められる”と”実施している”のクロス集計からみられる傾向〕

「求められる知識・技能」の各項目を内容から(A)群、(B)群に分類できたように、「実施している教育訓練」の各項目についても同じく、内容的に(A)群か(B)群のどちらに近いかで分類できそうです。そしてよく見てみると、この2つの質問には答え方に規則性があるようです。というか、2つの質問のクロスをとると、同じ群に属する項目同士のパーセンテージが高めになり、異なる群に属する項目同士のパーセンテージは低めになります。

なにやら難しい言い方をしてしまいました…。要するに、
・「高度に卓越した熟練技能」を求めるなら、当然「日常的な指導」や「OJT」が中心になり、「外部研修」は向かない
・「生産工程合理化」を求めるなら、「外部研修」や「改善活動」が中心となり、「ジョブ・ローテーション実施」などはあまり関係ない
などが数字上読み取れます。常識的に考えて当たり前の相関関係が、このクロス集計に表れているわけです。

■調査集計結果から新しい発見が?
本調査の集計結果はかなり多彩に集計されており、読者によりいろいろな傾向を読み取ることができるかもしれません。あるいは(この調査に限らず一般論として)、集計結果から当たり前の常識を再確認するに終わり、「だから何なのさ」という疑問符を残して読み終わる結果となるかもしれません。

それでも、モノづくり産業の人材育成という視点での問題意識を持っている方には、なんらかの新しい発見ができるような調査結果です。ご興味のある方は、ぜひ参考にされてください。

実は上に紹介したクロス集計の結果(行列)から、ちょっとしたアイデアが思い浮かび、

「(A)個人力 ←→ (B)集団力 のいずれの方向性が強いか」

を意味するような指標を作ってみました。実用的かどうかははなはだ心もとないのですが、次回以降の記事でそれを少し説明してみます。

【注】
※1 調査全文はpdfファイルになっており、以下のサイトで見ることができます。
JILPTのサイト http://www.jil.go.jp/ から
「調査シリーズ No.44」 http://www.jil.go.jp/institute/research/2008/044.htm

※2 調査の詳細内容についてはJILPTさんのサイトまたは発行している書籍を見ていただくべきものと思います。逆に本記事独自の見解については私(松山)が文責を負うものであり、JILPTさんの見解を示しているのではありません。

※3「技能系」とは、製造現場で生産を直接的に担当する人のこと。「技術系」とは、研究・開発・生産手法改善・品質管理・生産管理などに携わる人のことをいいます。本調査では技能系と技術系に関して質問内容も少しずつ違います。この稿では、主に「技能系」について話を進めます。

「中小企業の技術マネジメント」

中小企業の人材育成に関連した書籍。日本独自のモノづくりの強さを支えていると言われる金属・機械産業に属する中小企業に焦点を当て、技術の強化、育成などに役立つ考え方が示されています。

中小企業の技術マネジメント
「中小企業の技術マネジメント」
〔弘中史子(著)、2007年刊、中央経済社〕

■中小企業のモノづくりの強さ
工場など製造現場はコンピューター制御が当たり前になり、モノづくりの現場は人手に頼る世界から自動化された機械に任せる世界へと比重が移ってきました。わけのわからない“伝承”“秘伝”の世界から脱し、プログラムや言葉でスマートに製造過程を取り仕きれるようになることは「進化」と呼ばれます。進化の結果、工場はより適した海外にも移せるようになり、日本の製造業は空洞化するとも言われました。

しかし、単純な大量生産工場は東南アジアをはじめとした海外に移転できても、日本国内でこなしてきた職人の高度な技は意外と海外に移転できません。というより、日本の職人たち、中小企業の現場で当たり前にこなしてきた繊細な技のいくつかは非常にユニークで、日本経済の強さの源泉になっています。それが広く認識されるようになったのは、せいぜいここ10年くらいのことではないでしょうか。いわゆる「モノづくり」を支えている元気な日本企業が、「量的にも質的にも」日本経済を支えていると位置付けられるようになってきたわけです。

前回の記事「中小企業の人材育成作戦」に続き、中小企業の人材育成に関連した書籍を紹介します。副題は「競争力を生み出すモノづくり」。金属・機械産業に属する中小企業に焦点を当て、技術の強化、育成などに役立つ面白い考え方が示されています。

■日本の就業者の100人に1人?
数字を丸めて非常にざっくりと数えると、日本の人口1億2000万人のうち就業者は約6000万人
→うち製造業は約1000万人
→うち金属・機械産業は半分の500万人
→さらにそのうち中小企業は半分の250万人

かりに働いている人を6人集めたら、うち1人が製造業にお勤め。
12人集めたら、うち1人が金属・機械メーカー。
24人集めたら、うち1人が中小の金属・機械メーカーにお勤め。

さらに推測すると、
50人くらい集めたら、うち1人が中小の金属・機械メーカーの職人
100人集めたら、うち1人が“匠(たくみ)”とか“マイスター”とか呼ばれうる優秀な職人。

ということは、極端に言うとその「100人に1人」(非就業者含めれば200人に1人)の人たちが、日本独自のモノづくりの強さを支えていることになります。(中堅・大企業および金属・機械産業以外の産業を視野の外に放り出して計算するのは少し無理がありますが、とりあえずここでは話の流れとしてお許しください (^。^) )

■技術力養成のためのフレームワーク
こうした人たちが活躍する中小企業とはいえ、変化することもなく漫然と仕事を続けていっただけの企業は遅かれ早かれ衰退してしまう運命にあります。本書では、中小企業が技術力を向上するための枠組みとして、

「技術の吸収と融合」
「自社技術の体系的把握」
「自社技術の相対的把握」
という3角形を描き、その三角形を
「複眼的技術者」
が原動力となって回転させること、

といった考え方が提示されています。

「複眼的技術者」とは、少なくとも1つの専門分野に精通し、さらに1つ以上の他の分野も理解しその見地からも問題を検討できる人材、と位置づけています。単なるスペシャリストではない人を育てることで、技術の新しい融合などにつながるというわけです。

その考え方自体は決して珍しいものではないかもしれませんが、机上の論理ではなく実例を交えて説明していることで、説得力を持った説明になっています。例えばそんな人材を育てようとしている企業の事例として従業員20名ほどの輸送用機械メーカーの事例が紹介されています。その企業では、
「各人の配属は決まっていてそこで“主たる業務”をこなすが、同時に複数の他の部門にも属するような組織形態をとっている。他の業務も日常的に遂行する」
とのこと。

近代的な企業のあり方を考えると、つい“権限のきっちり決まった組織”“命令の一本化”といったことを考えがちになります。でもジョブ・ローテーションのような組織だった仕組みが作りにくい中小企業が「複眼的技術者」を養成するなら、このような工夫は現実的です。中小企業経営者が人材育成を考える上で参考になる事例かもしれません。

その他、「(自社ブランドなどを持たない)下請企業だからといって技術力が低いわけではない(下請として競争力を強める戦略もある)」「技術の“吸収”と“融合”は別物で、両者のバランス取り方により技術力向上のパターンが異なる」など、いろいろ示唆に富む内容が語られています。

■日本国内の職人の方々を応援するには
正直言いますと、この稿を書いている私(松山)はどちらかというとコンピューターの世界から育ってきたこともあり、以前は大きな勘違いをしていました。ごく一部の例外を除き、製造のあらゆる工程はコンピューター制御に乗るか、少なくとも言葉(作業手順書など)で客観的に人から人へ伝えることができるはず、との思い込みです。

ホワイトカラーの世界でも、例えばコンピューターが考えた結果がそのまま最善な経営判断として示されうると考えられていた時代がありました(いわゆるMIS―マネジメント情報システム―の幻想)。今はさすがにそんな幻想は消え、コンピューターはあくまでも人の考え方やアイデアを補佐・支援する道具に過ぎません。しかしモノについて言えば、対象によって難易度の差はあったとしても、究極的には3次元空間の中で精密に測定でき、精密に制御できるはずだから、きっとコンピューター制御にどんどん置き換わっていくはず…。そんな楽観論です。

しかし、やはりそれも現実の世界ではほとんど幻想に近いものなのでしょう。いくら数値制御しても、製造工程を標準化しても、手作業でこなさなければならない仕事が確実に残る、というのが製造業の現場のほぼ一致した意見のようです。あるいは、理論的にはコンピューターで完全制御できるはずであっても、ほんの少量(時には1つ)しか作らない金型や部品類については、手で完成させてしまった方がはるかに効率的であるのは明らかです。その前提で、日本国内の職人の方々を応援していきたいものです。

当事者である中小企業経営者はもちろん、マネジメントに関わる方それぞれに参考になる書籍かもしれません。

「中小企業の人材育成作戦」

中小企業の組織は本当に生き物のようなもので、見かけや数字だけではなかなか推し量ることができません。きっちりした制度がないから組織ができていないというわけではなく、社員の育成も“自在流”で成功しているところが少なくありません。

中小企業の人材育成作戦
「中小企業の人材育成作戦」
【川喜多喬、九川謙一(著)、東京商工会議所(監修)、2006年刊、同友館】

■多数の事例からヒントを取り出す
副題は「創意工夫の成功事例に学べ」。人材育成を切り口に、創意工夫を凝らしている元気な中小企業に焦点を当ててその事例をまとめた書籍です。25社以上の事例がそれぞれのテーマごとに分解して紹介されていて、中小企業経営者にとっては、経営のヒントをあちこちから見出せることでしょう。

ほんの数行単位で細かい事例が次々に紹介されるスタイルなので、読みようによっては“とりとめもなく”事例の断片が書き連ねられているだけ、と感じるかもしれません。しかし、一般に中小企業は、組織の整った大企業とは質的にも異なり、どの会社をとっても「特殊事例」のようなものといえます。

「すべての中小企業に共通して通用するテーゼ」はほとんどないのですから、絶対的な答など示されているはずもありません。それでも、それぞれの項の見出しから、著者・編者が何を見出し、主張したいのかが窺えます。

〔目次〕
序論 変わらぬ基本、時々の創意工夫
第1部 人材育成の実践事例編
1 人材育成は永遠のテーマ
2 成長への責任核と人材育成
3 設備投資と人材投資は矛盾せず
4 人材観・人材像をはっきりさせよう
5 小さな会社なりの採用・確保戦略
6 ベテランの結集、中高年の活用
7 人材確保と育成の人脈づくり
8 下積みから育てるキャリア管理
9 組織内伝承の仕組み
10 人事考課も人材育成の道具
11 営業センス、経営感覚は全社員が身につけろ
12 組織づくりと社員のしつけ
13 理念で引っ張り、参画で押し上げる
14 人材育成のための公式・非公式のネットワーク
15 会社を学校にしよう、現場を塾にしよう
16 小さな工夫や福利厚生
17 人材育成はトップの仕事
18 最後にもう一度…人材育成は机上のシナリオどおりにはいかない
第2部 人材育成の調査提言編
第1章 始めよう人の開発、技術の開発
1 こんな企業が技術を磨き、人を育てる
2 こうして育てているわが社の技術者
3 技能者の育て方にもひと工夫
第2章 すぐれた中小製造業の人材開発力
1 すぐれた中小製造業の「モデル」の重要性と「モデル」選定の基準
2 すぐれた中小製造業の人的資源管理の特性

■経営資源が足りないことは、ありがたいこと?
面白い表現で、中小企業の強さが説明されているところがあります。

「ありがたいことに、少数しか採用できないゆえに綿密な選抜が行える」
「ありがたいことに、研修施設がないので現場が教室となる」
「ありがたいことに、暇がないので実用的な訓練に専念できる」
「ありがたいことに、出来合いの教育体系図を買ってくる金がないだけに机上の空論に酔うことはない」

負け惜しみのような表現にも聞こえるかもしれませんが、経営資源の足りなさをかえって強みとして活かし、実践的な人材育成の工夫をしていくのが、中小企業の知恵であり、面白さです。このあたり、中小企業の経営にどっぷり使っている方、またはこうした企業の実務に触れる機会の多い方には、肌で納得できるところかもしれません。

実践的に応用できそうな事例も、ところどころに紹介されています。たとえばスキルマップを社員一人ひとりに対して作っている事例がその一つ。すべての社員とすべての工作機械名を縦横の一覧表にして、

◎印は「人に教えられる」
○印は「一人でできる」
空白は「一人でできない」

といった具合に埋め込んでいくわけです。

■人材育成に妙手はない!
「いくらシナリオを作ってもシナリオとおりにはいかない。経営書にあるビジネスモデルをそのままやってもうまくいかない。社員のやる気が養われるのを待つことだ」
「中小企業のマンパワーはかなりデコボコになる。しかし、そうやって特徴を出さなければ生き残ることは難しい」
「人材育成に妙手はない」

かといって、なんでもボトムアップとか出たとこ勝負だけでよいというわけではなく、

「人材育成計画の前に経営事業戦略がなければならない」
「人材育成はやみくもな信仰でやるべきだといっているのではない」
「一般に技術開発にすぐれた中小製造業は、その技術だけが注目されがちだ。…しかし(中略)…“技術開発と人材育成が連動している”姿が明らかになるだろう」

など、それぞれうなずけます。

読者の立場や問題意識によって、「うん、うん、そうなのだ」と納得できる個所は異なるかもしれません。本書を読んで「なんだ、こんなこと。どこの企業でもやっていることじゃないか」とお感じなる方は、大企業など安定した組織で仕事をしている方かもしれません。読み手と中小企業経営との関わり方で、内容の受け取り方が違ってくるような本だろうと推測されます。