中小企業と言っても、昔からの下請型企業、特定工程に強い中小企業、ニッチトップ型企業、グローバル・ニッチトップ企業といった類型ごとに企業戦略として採るべきスタンスも異なる…。そんなヒントが、ケーススタディとともに多数示されています。
[グローバル・ニッチトップ企業論、細谷祐二著、白桃書房刊、2014年]
同書籍、および3月に開かれたシンポジウム「多摩の中小企業の知られざる国際化と経営者の姿」(主催:東京経済大学・多摩信用金庫)における同氏の基調講演を混ぜこぜにしたメモです。
■海外生産より海外販路開拓、ニーズ把握を
内容は、ざっくり言って「普通に良い中小企業」と「海外進出し高業績を示している中小企業」の差を分析したもの。ニッチだが世界で高いシェアを持つ製品を複数持つ“グローバル・ニッチトップ企業”には、次のような特徴が明らかだとされています。
・技術力(解決力)があるから、自然と取引先などから相談事(ニーズ)が持ち込まれてくる
・その(確実に存在する)ニーズとシーズを結びつける機能を持つ
「ニッチトップを目指して討ち死にする製造業も多い。逆説的だが、技術力(シーズ)がありそれを前面に押し出してしまうとワナがある。グローバル・ニッチトップは初めにニーズありきで、そこから解決法を作る(または他社から見つける)」
・輸出を早い時期から行いながらも、海外拠点設置はむしろ慎重
「以前から海外生産を展開できている企業はともかく、これからは得意先などの依頼・海外進出にたんに応じて海外生産を優先させる必要は必ずしもない。むしろ国内で生産し輸出することを基本戦略とする方が薦められるのではないか。一方、海外ニーズの把握、販路開拓といった部分は海外で活動を進めるのが望ましい」
■中小企業支援の「支援疲れ」
また、中小企業支援に対する問題意識から、次のような分析・提言があります。
・たんに補助金などの予算を確保し機会を増やすだけでは不十分
・「支援疲れ」「支援され疲れ」が生じている。補助金の多頻度利用企業は、必ずしも補助金の効果を実感できていない(空回りしている)
・グローバル・ニッチトップ企業は、海外見本市出展費用の経費補助ニーズが高い
・「優れた中小企業◯◯社表彰」といったものは単なるスナップショットに終わっている場合も多く、グローバル・ニッチトップほど継続的な成果を上げていない
・技術開発補助金の審査では、市場化という成果に結びつく見通しが十分に立っているかどうかをチェックすることが重要
著者はもともと経産省で中小企業政策に携わってきた幹部の方です。最後の項目 “技術開発補助金の審査では…” 部分の提言は、現在の補助金審査に間違いなく取り入れられていることでしょう。補助金申請中の方は、特にご注意を!