身体を測る 09-ストレスの強さを測る

人の「ストレス」は、物理的な方法と心理テスト的な方法という異なる側面から測ることができ、それぞれ長所短所があります。

ストレス
〔ストレスの種類と測り方〕

■精神状態を物理的に測る
多くの場合、「人の身体的な特性」や「身体的能力」は物理的に測るのが適当である一方、「精神的な特性」は心理テスト(質問法)のように少し主観的要素の入った測定にならざるを得ないのが普通です。たとえば体脂肪率は、本人にたんに質問したところであまり正確な答えは期待できませんが、体重と身体の電気抵抗を物理的に測定することで割り出すことができます(BIA法の場合)。逆に計算能力とかは、物理的に身体のどこかを測ったところでたぶんあまり意味がありませんが、計算テストをすればかなり正確にその能力を測定できます。

人の感情や精神的状態についてはどうかとなると、基本的には心理テストによる測定のほうが向いていると思われますが、同時に、感情などが身体に及ぼす影響をうまく見極めることで測定できることがあります。昔からある「ウソ発見器」などまさにその部類でしょう。コンピュータによるパターン認識技術が発展した現代では、人の発する声から自動的にその人の感情を判断するシステムなども実用化しています。

ただ、ウソ発見器はモノによっては信頼性が低いとか、かりに信頼性が期待できるものであっても被験者がウソ発見器を騙す術を身につけていることがあるとか、問題が残ります。また、感情判断などでは、研究レベルでかなり高い技術があっても手に入れるのが高価だったり、測定条件が限定されていて実用上の制限があったりと、手軽に利用できるまで至っているものは少ないでしょう。

そんななかで少し面白い位置づけにある(実用化まで進んでいる)と思われるのが「ストレス」の測定です。ストレスの強さを身体の物理的状態から割り出す技術が結構進んできています。

■唾液からストレスの強さがわかる
たとえば「COCORO METER」(ニプロ)は、大学の研究室と共同で開発したストレス測定器です。製品化、それも普及型まで至ったものとして一部で注目されているようです。舌の裏にアイスクリームの棒のような薄い測定用チップをあてて唾液を採取し、そこから唾液アミラーゼを計測。アミラーゼの量からストレスの強さを測定します。2万円強で本体を手に入れることができる手軽な機械なので、ストレスの簡易判定に向いているようです。

参考:生体測定 製品・サービス一覧

唾液からストレスの強さを測定する方法は、アミラーゼがストレスの強さと強い相関関係があることが科学的に確かめられていることから可能になっているわけです。こうしたストレスの証拠となる物質(ストレス・マーカーと呼ばれる)としては、唾液から検出されるアミラーゼのほか、コルチゾール(唾液や尿、血漿から検出)、アドレナリン(血漿から検出)など何種類かあります。

自律神経(交感神経、副交感神経)の強さを体組成計と同様の方法で測定し、そこからストレス状態を判断する手法を応用した装置もいくつか実用化されています。「身体を測る 08-心拍はゆらぐ」でも触れましたが、心拍変動からストレス測定につなげることも可能です。
(念のため…。世の中にたくさんあるストレス測定器と称するものには、少しいかがわしいというか、どこまで信頼できるものか疑わしいものもあるようなのでご注意を)。

■身体測定と心理測定の両面から判断
ストレスの測定は、職場などで行う心理テストでも、古くから1要素としてとりいれられています。たとえば質問紙に次のような項目が数多く並べられていて、それにYes/Noで答えたりします。

・あなたは仕事をしているとき、時間内に処理しきれないほどの負担をよく感じますか?
・あなたは最近、仕事で気が張り詰めていることがしばしばありますか?
・あなたは自分のペースで仕事のやり方を決めることができていますか?

これらの回答の結果からストレスの度合いを判断できるとされています。性格判断のための心理テストと組み合わせて、職場内の適切な人員配置などに生かしている実例は多数あります。

まあ、たとえば上に挙げた心理テストの類については、毎日必死に働いているビジネスパーソンの場合「Yes」ばかりついてしまうのが当たり前だったりもします(上の例で言えば3つ目は「No」)。心理テストによるストレス測定は、その職場環境とか、被験者の年齢やプロフィルとかも考慮に入れなければなりません。

そして心理テスト、質問紙を通じた測定法の場合、主観的な要素が必ず入ってくることは避けられません。客観性という意味では
1. ストレス・マーカーによる測定
2. 心拍、自律神経系の測定からの類推
3. 心理テスト
の順に落ちていくといえます。

また、時間的に変化するストレスの強さを随時測定できるという意味では、
1. 心拍、自律神経系の測定からの類推
2. ストレス・マーカーによる測定
3. 心理テスト
の順に有効だといえそうです。

ストレスそのものがおそらく1次元で測定できるものではなく、心理的ストレス、身体的ストレス、その他(職場環境、対人関係など)から多面的に分析されなければならないものだと思われます。多面的な分析につながるという意味では、たぶん
1. 心理テスト
が優れているといえそうです。もしくはそれに代わる判断ステップが必要となるでしょう。

■心理測定につながる可能性と問題点
少なくとも1種類の物理的測定は純粋な測定でしかなく、評価(イバリュエーション)はおろか、アセスメントとしても不十分なのかもしれません。見方を変えると、心理面と物理面という異なる側面からの測定が実用化していることで、それだけ多面的なストレス・アセスメントができうるといえるのでしょう。

なお、個人がストレスを測定したいというとき、それ自体が時には非常に主観的な意図 ―― たとえば「自分が苦しく思っていることをたんに誰かに認めてもらいたい」ためにストレス測定したいと考えること ―― もあることでしょう。そんな人にとっては、ある意味で高い客観性と信頼性は求められません。この場合「自分の思ったような結果が出てくれる、なんらかの納得できるストレスの存在証明」があればよいわけで、正しい測定値が出るかどうかは二の次の話かもしれません。

ストレスに限らず、性格、行動力、コンピテンシー測定など、人の心と関わり始めたときに同様の問題が必ずでてきます。このあたりが、心理測定に関連した、大変に難しい問題点といえます。

▽追加記事:
「ストレス測定法」


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