厚生労働省の助成金体系が変わる

厚生労働省の雇用関係助成金の体系が2017年4月に大幅に見直されました。いくつかの助成金が統廃合されたほか、メニュー全体が整理されて項目数が減ります。また、「生産性要件」の適用拡大などが進められています。

雇用関係助成金改訂図1
〔雇用関係助成金の新旧比較-図1〕

■40種類くらいのメニューを約半減

用意した図3点は、新しく発表された平成29年度の体系(「新体系」と呼ぶことにします)と平成28年度の体系(「旧体系」と呼ぶことにします)を比較したものです。その他いくつか重要と思われる点について挙げてみます(以下、暫定情報を含む)。

厚労省の助成金の数は、数え方や範囲により異なるのですが、旧体系の大枠で30~40種類、細かいコース数で70~100種類と数多くあります。しかも似たような名称のものが多数あり、わけわからない状態になっていました。ずっと従来から引きずってきたのですが、わかりやすくなるように今回整理統合されることとなりました。新体系では23種類(+α)に分類されます。

助成金の見直しは、当然ながら政府政策を受けて進められています。たとえば現在重視されているのは、たんに既存業態のまま雇用を維持するというのではなく、雇用を必要としている分野への労働力のスムーズな移動、および女性・中高年・若年労働者の雇用促進といった観点からの施策の充実でしょう。「中途採用者の拡大」「長期不安定雇用者の雇用開発」「結婚・育児・介護などでいったん職を離れた人の再雇用者の評価処遇」などを目的とした助成金が新設されています。

■生産性要件の拡大

職業能力の開発という視点からは、長年行われてきた「キャリア形成促進助成金」の名称が「人材開発支援助成金」と変更されました。年々複雑化してきたコースも整理統合され、少しわかりやすくなったかもしれません。

雇用関係助成金改訂図2
〔雇用関係助成金の新旧比較-図2〕

助成の対象となる教育訓練は何でもよいわけでなく、図にあるようにいくつかの狙いに沿ったものであることが求められます。「若手育成」「技能継承」「グローバル人材」といった目的がコース名としても示されています。加えて今回注目できるのは「労働生産性の向上に直結する訓練」が新設されたことでしょう。

厚労省の助成金だけでなく、中小企業庁の補助金などを含め、現在の政府施策で非常に重視されているのが「生産性の向上」です。採択要件として生産性の向上指標が組み入れられてきた例が増えています。雇用関係助成金においては、目標とする生産性要件をクリアすれば助成額が割増しとなる助成金の仕組みが組み入れられてきています。

また、政府の「働き方改革実現会議」からもわかるように、非正規雇用者の雇用安定というだけでなく、多様な働き方へ対応できる経営体制へ変化することが日本企業に求められているとされます。「キャリアアップ助成金」「職場意識改善助成金」「両立支援等助成金」などにそれらの施策対応が強く組み込まれてきていることがわかります。

雇用関係助成金改訂図3
〔雇用関係助成金の新旧比較-図3〕

その他、今回というよりすでに数年前から行われていることですが、障害者の雇用促進、人手不足が懸念される建設業労働者に対する訓練環境整備、最低賃金の引き上げ支援などが厚労省系の助成金として用意されています。

※この記事は、初期の情報から、図および説明を一部更新しています(修正:2017年6月15日)。