和惣菜と「昭和レトロ」は、誰が考えても相性が良い組み合わせだと思われます。落ち着いた雰囲気が店舗作りに生かされているようです。
〔ゴハンノオカズ 高見屋(北千住丸井)〕
■和惣菜と“懐かしさ”のイメージの取り合わせ
「居酒屋」「定食店」に続き、今度は昔風の店作りをした惣菜店をご紹介します。
写真は、北千住丸井にある「ゴハンノオカズ 高見屋」の店舗写真です(写真そのものは数年前の撮影で、現在はディスプレイなど少し異なっています)。この店はベーシックな和惣菜を中心にして、さらに焼き魚や煮魚の種類を取り揃えている惣菜店で、“昔懐かしいオカズ”というコンセプトが店舗作りにも反映されています。中心となるお客さんは40代以上の女性と思われます。
「昭和」という括りではなく「江戸の味」という呼び方をしている点で本blogの切り口「昭和レトロ」とは少し異なるかもしれませんが、消費者が持つ懐かしさを醸し出していることに違いはありません。なお「ゴハンのオカズ 高見屋」はここだけで、チェーン店として展開しているとはいえません。といいますか、銀座三越、新宿高島屋、池袋東武など“デパ地下”に複数の店を構える和惣菜店「おふくろの味 高見屋」が基本形で、その別フォーマットといったほうがよいでしょう。同店の経営主体は、主に築地で卸売・小売を手がける北田水産です。
■和のおかずに“昔風”は当たり前すぎ?
同じように懐かしさを前面に出している和惣菜店はいくつかあります。多店舗化している店でいえば、アトレ大森、そごう柏、そごう大宮、船橋西武などにある「大森オカズ本舗」(佃浅商店)がその例でしょう。「大森オカズ本舗」は高見屋同様、デパ地下(上野松坂屋、銀座松坂屋、大井阪急など)にベーシックな和惣菜店を展開する「佃浅」の別フォーマットです。ほか、個店の惣菜店でレトロ風な店構えの店となると、おそらく多数あるはずです。
ただ少し謎なのは、“懐かしさ”が必ずしもこれら惣菜店のコンセプトと強く結びついていないように思われる点です。私的な感想として、たとえば「大森オカズ本舗」の某店は、当初かなり昭和の懐かしさが強い店作りと商品が置かれていたように思えましたが、数年した今は普通の惣菜店と大して変わらない商品の品揃えとイメージに落ち着いていってしまったようにみえます。「ゴハンノオカズ 高見屋」にしても、“レトロ感”は顧客層を広げることが狙いではないようです(どちらかというと「既存の顧客層に安心して購入してもらうためのイメージ作り」といった意味)。
多数の店舗を見て回っているわけではないのであくまでも限られた範囲での感想に過ぎませんが、ベーシックな和惣菜と昭和レトロの組み合わせはあまりに当たり前すぎるのでしょうか。もしくは、和惣菜はずっと受け継がれているイメージ(言葉は悪いかもしれませんが“古臭いイメージ”)が特に若い人たちにはあるので、あえてレトロ風を前面に出しても効果が少ないということなのでしょうか。
デパ地下の惣菜店一般としては、新しい時代のイメージが強い「柿安ダイニング」(柿安本店)や「RF1」(ロックフィールド)が広く成功しています。もしくは、「なだ万厨房」(なだ万)、「美濃吉」(美濃吉食品)といった関西風、特に京都風の高級イメージのほうがインパクトは強いかもしれません。名古屋に本拠を持つ「まつおか」(まつおか)なども、関東で増えています。
それらに比べると、関東風・江戸風の見せ方は(少なくとも関東人にとって)懐かしさの度合いが弱すぎるとも言えなくありません。日常的に食する和惣菜を求めるお客さんの集客を狙うか、ハレの時の高級和惣菜を求めるお客さんを狙うかでも少し違うでしょう。いずれにしても、店の雰囲気や見せ方だけでなくもう一つ工夫が必要なのかもしれません。