まだインターネットのない世界での予測です。このテーマについても、ごくあっさりと触れることしかできませんでした。
4-3 ネットワーク印刷■テレビ放送からデータ受信
マルチメディアと大げさに言わなくても、例えばデジタル電話など通信媒体からの情報抽出、テレビ画面など放送媒体からの情報抽出により、印刷の世界が進化する可能性がある。(図4-4 テレビ画面からの印刷)
現在注目されている媒体の一つにハイビジョンがある。ハイビジョンの動画から図4-4のようにデータを加工し、紙媒体にも印刷できる。
従来型のテレビ画像(NTSC方式)でも原理的にはほぼ同じやり方で印刷につなげられたが、あまりに画像が粗すぎて実用的とはいえなかった。しかし、NHKが行っているハイビジョン(MUSE方式)は35mm映画フィルムとほぼ同等の情報量を持っている。そのため、画面から静止画像を抽出して印刷した時も、十分見るに耐えられる品質が得られる。さすがにスチール写真には(NHK方式のハイビジョンでは)かなわないが、ほんの一瞬を逃さずにカメラに収められるという点で優れている。
例えば、スチール写真では、高速の連写機能があってもせいぜい1秒間に10数枚程度である。一方、HDTVの画面は1秒間に実質30コマ写している。いわば超高速でカメラのシャッターを切り続けているのと同じなので、決定的瞬間を逃さずに画像に収めることができるわけだ。
もしパソコンのような機械でハイビジョンの静止画を扱えるようになれば、一般個人が手軽に、しかもかなり高度な画像処理につなげられることになる。これをDTPと組み合わせると、プロ顔負けの画像出力が自分の手元でできてしまうことになる。テレビから得た画像とビデオカメラで撮った画像を編集すれば「動画の埋め込まれた自家製新聞」が出来上がる。
もっともNHKのハイビジョンはデジタル放送ではない。本当は、動画像をデジタルで放送できる次世代のテレビが望ましいだろう。■通信を通じて遠隔地のテレビに“印刷”
印刷のための情報を受信数だけでなく、情報を発進して遠隔地に向かって“印刷”することも難しくない。通信系の電子出版である。
大手パソコン通信では、既に有名小説家による電子小説が“ネットワーク出版”されている。要は、作家が書籍で小説を出版するのでなく、ワープロで作った小説をパソコン通信上に書き込むわけだ。そのパソコン通信に加入しているユーザーは、ネットワーク上で出版された小説を“読む”ことができる。
また、いくつかのパソコン通信では、通信でスポンサーの広告を流す“オンライン広告”が実現されている。まだまだ有効なオンライン広告のあり方はつきつめられていないものの、紙ではなく電子媒体に印刷するという意味で、先に述べた「電子カタログ」と同じ位置づけが出来る。媒体の性格によって情報提供の仕方は異なるだろうが、今後オンラインでパンフレット代わりの商品告知、カタログ代わりの情報提供される機会は増えるだろう。
紙媒体への印刷の元が電子データ。電子データはパッケージ系媒体に印刷される。それと同様に、ネットワークを通じてどこか遠隔地のパソコンやテレビの画面に同じデータが“ネットワーク印刷”されていく。(図4-5 遠隔地のテレビに印刷する)