ミール研究所 MIR МИР

4-2 データベースとマルチメディア

コンテンツのデータベース化などの話です。少し中途半端な書き方でお茶を濁してしまったかもしれません。


4-2 データベースとマルチメディア

■データベース整備
 現在市販されている電子出版物は、辞典や有価証券報告書、特許公報など大量のデータベースを収録したものが多い。データベースそのものに価値があってこそニーズが生まれる。「想定未来像その1」で電子カタログについて少し触れたが、これも商品データベースの提供にほかならない。
 では、文字、画像に関わらず、一般消費者、一般企業が電子データベースとして得たい情報は何であろうか。もちろん、データベース業者が提供してくれる各種データも必要だが、例えば社内に眠っている過去の膨大な資料、ある特定のテーマのために自分で集めた資料など、自社内で発生した、または編集したデータベースの整備が考えられる。紙媒体では保存に手間取るし検索も面倒だ。これを光ディスクのような媒体にまとめて印刷してしまい、保管スペースを少なくして、しかも検索可能にしてしまう。現在でも光ファイルは企業ユースで使われているが、ただ文書の画像をイメージで蓄えるだけでは後で再利用されにくい。

●想定未来像その2
 199×年、A社では社員全員がパソコンやワープロを当然のように使いこなしている。社内資料や報告書は電子メールでやりとりされるのが普通である。ところが、電子的なデータがネットワークのあちこちに散在するようになり、資料の整理に四苦八苦していた。
 そこで、ある情報処理印刷業B社に既存文書のデータベース化を依頼した。A社はすでに印刷の内製化を進めており、電算写植出力をB社に依頼していた。今度はA社のホスト・コンピュータ内に「保存文書用ポスト」を作っておき、必ずしも紙に印刷するとは限らない社内文書についても、このポストに送っておけばデータベース化され、まとまったところで光ディスクに印刷してくれるようにした。その後、A社の文書は光ディスクに自動的に印刷、蓄積されるようになった。

 この例が成り立つためには、社員全員がパソコンを使うことを前提にしているとか、外部から得た情報の著作権の扱いとか難しい条件や問題点は数多くある。だが、電子データを基本にして、それを電子的に蓄積し、必要な部分だけを印刷するという社内文書の扱い方は、非常に理にかなったものである。企業単位と言わず、個人単位でも、こうした個人用データベース作成へのニーズはあると思われる。その時、検索コードをどのようにつけるかといった制作ノウハウ面、CDや光ディスクへの焼き付けをどうするかいった設備面で、一般企業は専門家の力を必要とする。電子データベース構築は、今までカタログや調査報告書の印刷を行っていた印刷業者にとっても、そのサービスの延長線上にあるとはいえまいか。
 図形で言えば、CAD図面や複雑なイラストレーションのデータを山のように紙で蓄積している企業は多い。これらのデータの品質を損なわず電子化し、必要なときに非常に高品質でカラー製版できるような仕組みを印刷業者が提案できれば、その業者の存在意義は大きい。

■マルチメディア化
 音声をデジタルで電子媒体に印刷することもできる。何のことはない、一般に市販されているCDレコードがまさにこの例であろう。
 ここで強調したいのは、安価なコンピュータやデジタル・オーディオ・テープの普及でデジタル音楽、音声の吹き込みが個人でもそれほど難しくなくなってきたことだ。今までCDへの音楽や音の吹き込みは、大掛かりなレコーディング・ルームと装置を駆使して、プロが制作するものだった。これを個人や一般企業レベルでその一歩手前までは作成できるようになった。実際にCDに音を刻み込むことまではしなくても、紙媒体に例えれば「音の版下」作りまで一般ユーザーが出来ることを意味する。やはり紙媒体の印刷に例えれば「音の出力サービス」や「音のデータベース管理技術」を外部専門家に期待したいところだ。
 文字に絵に音。デジタル化したデータを組み合われれば、いわゆる「マルチメディア」はすぐそこにある。「印刷はコミュニケーションの手段」であることを思い起こせば、文字や絵が複雑に組みあわさったマルチメディア情報の伝達手段を提供すること、それはまさに印刷業者の使命ではないだろうか。


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お知らせ他

この文章は、1992年にJICC出版(現・宝島社)より発刊した「プロフェッショナルDTP」(著者・松山俊一)から本文を抜粋してまとめたものです。内容に少し加筆編集を加えていますが、概ね原文のまま掲載しました。執筆時期が1992年なので、書かれている内容・情報はかなり古くなっていることにご注意ください

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