当時はまだ、電算写植が主流の時代でした。データ互換性のなさやフォントの制限など、今から見るととんでもなくつまらない問題点が多数あったことがわかります。
2-4 システムの内容前節までに述べてきたことを念頭に置きながら、各種印刷システム選択、導入のためのポイントを解説する。まずプロ、アマ問わず、市販されている印刷システム全体を「システム解説マップ」として図示した。これにより、それぞれのシステムがどのような位置にあるのかを確認する。
次いで各ジャンルごとに、選択のポイント、備わっている機能、簡単な解説、そのシステムが受け持つ業務範囲、代表的な商品名を解説する。―― 図2-16 システム解説マップ ――
(1)電算写植システム、CTS
▲選択のポイント
出力機以外はアマチュアには必要なし。プロにとっても、入力/編集システムは高価なので業務にピッタリする機器以外はコストパフォーマンスが悪くなる。写植出力機も高価だが、特に写研製出力機は唯一写研フォントが使えるため無視できない。▲内容解説
伝統のある写植機メーカーの写研、モリサワなどは、手動写植機の時代からこの業界のリーダーであった。電算写植においても、入力機、編集機、出力機それぞれメーカーごとの独自システムとして開発、これまでの印刷業界プロフェッショナルにとってなくてはならない存在であった。厳密に言って、別の項で説明する電子組版システムとの機能的に明確に分けることは出来ないが、ここでは一般に「電算写植」として位置づけられるものを指している。
写研を例に取ると、入力校正機:SAZANNA(従来型)、GRAF-ET2(仮名漢字変換型)。編集・レイアウト機:SAIVERT-P(ページ編集用)、SAIVERT-H(商業印刷等編集用)、RETTON(高速バッチ処理)。普通紙プリンター:SAGOMES。写植出力機:SAPLS-310SS(高速機)、SAPLS-Laura SS(高精細機)、SAPLS-Michi(廉価版)と、印刷物の種類やレベルに応じて各種コンポネントをラインアップしている。それぞれを連係させることで商用ベースの版下作成に対応できる。多様な写研フォントを統一して利用できる。モリサワも、レイアウトワークステーションMK-500をはじめ、同様にシステムを揃えている。
だが、聞くところによると、操作性の良さパソコン等でもまれ育ってきたDTPシステムにはかなわないという。価格もそう安くない。組み合わせによっては億の単位になる。
一方、写研の写植出力機について言えば、従来の組版ファンクション方式でデータを受け取るだけでなく、出力機を直接コントロールできる「スレーブ・データ」でも受け取れるようになった。従って、スレーブ・データへの変換が出来るDTPシステムをフロントエンドとして使えば、そちらの方が一般には安上がりになる。
なお今回のターゲットとはやや外れるが、CTSとして有名なものに朝日新聞社のNELSON(New Editing & Layout System of Newspapers)、日本経済新聞社のANNECS(Automated Nikkei Newspaper Editing & Composing System)など新聞業界向けCTSがある。汎用的なCTSというより、特定の業務向けに大掛かりなシステムを構築する例もあることを付け加えておく。―― 図2-17 機能解説図1 ――
(2)電子組版システム
▲選択のポイント
DTPシステムと明確な差がなくなりつつあるので、それらと機能、性能、作成する印刷物の内容、操作性、価格面を比較検討する必要がある。選択にあたっては、データやインタフェースがなるべくオープンになっているものを選ぶことが、可能性という点で望ましい。▲内容解説
電算写植に比べれば安価で、多くは入力から出力までコンパクトにまとめられている。価格的には数百万から千数百万円で一応のシステムを揃えることが出来る。専用機として比較的手軽に使い始められるところにメリットがある。
別項で触れるDTPシステムと明確な差はないので、例えば組版システムのみ、入力ワークスーテーションのみを求める場合は、汎用性のあるパソコンやワークステーションのソフトの方が操作面、価格面でやや勝っている。どちらかというとこれまで軽印刷業者が多く導入してきた。
代表的な機種としては、東レのFX、リョービのRECS、モトヤと九州松下電器のLASER7、富士通のIPS、日本電気N5170などが挙げられる。
リョービのマシンは、設備のない印刷会社でもトイレを現像所にすれば簡単にプリントできるようなシステムにしたことが市場に受け入れられる成功要因だった。現在同社は、システムの拡販に加え、リョービ製のフォントを外部に提供している。
IPS、N5170、東レは、このジャンルでの先行企業である。導入企業は多いが、DTPシステムの普及で次の展開を模索している。だが、先行した分、既存ユーザーにニーズに引っ張られ、新技術への移し直しにやや手間取っていると評されることもあるようだ。
(図2-29 業務分担図2)
(図2-30 機能解説図2)
(3)DTPシステム(出版印刷向き)▲選択のポイント
出版物の内製化を目指す一般企業、およびその種の印刷業務をサポートする印刷業者に使われる。ただし、ページ組みの印刷物、特に雑誌のようにページごとにレイアウトの違うような出版物を完全に電子化したシステムまで持っていくのは困難もある。パソコン・レベルのDTPでは処理速度や性能でも限界がある。▲内容解説
次の項で述べる「商業印刷物向け」と明確な線引きは出来ない。多くのDTPマシンは出版物にも商業印刷物にも使えるような表現がされているし、実際「可能か不可能か」となると、どのDTPシステムでもたいていの印刷物作成は可能となる。だが、「実用的かどうか」となると、そのシステムの基本としている機能、操作性が大きく業務に影響し、商品によって明確に向き不向きが現われる。ここでは出版向けか商業印刷物向けかはあくまでも目安として分類している。
これらのDTPシステムでは、ワープロなどで入力した文章データをレイアウト編集し、手元のプリンターでゲラ出力できる。さらに写研やモリサワの電算写植出力機、各社の電子組版機で印画紙(またはフィルム)出力するための変換ソフトが用意されているものがほとんどである。別項で触れるポストスクリプト系のDTPシステムとの違いは、主にこういった従来型写植出力機へのリンクが取れているかいないか、従来の写植編集機のような組版指定ができるかできないかの違いである。
操作はほとんどの商品でWYSIWYG、つまり対話式が実現されている。大量入力をこなす業務には時に向かないこともあるが、一般のデザイナー、制作者が使うには向いたマシンである。実際、印刷業者のみならず、出版社や編集プロダクションなどの一般企業でかなり導入されてきた。
代表的な商品としては住友金属工業のSMI/EDIAN、日本総合研究所のPROSTなど。ワークステーション上のソフトウエアとして開発されたDTPシステムが多いが、安価なパソコン用ソフトもいくつか出回っている。
(図2-31 業務分担図3)
(図2-32 機能解説図3)(4)DTPシステム(商業印刷向き、その他)
▲選択のポイント
出版向きDTPと基本的な違いはないが、特にスピードを要求される業務においては、基本的な手順をカスタマイズし、自動が出来ることが望ましい。電算写植出力機のフロントエンドのシステムとして使われるケースが多い。マニュアル等作成には、図版やワープロ文書の取り入れがスムーズにできる機能を重視される。▲内容解説
たびたび繰り返すようだが、端物に向いたもの、出版印刷のようなページ物に向いたもの。技術マニュアルのようなものに向いたもの。カタログのような制作物に向いたもの、それぞれ特徴がある。つまるところ、各社各様の業務に合わせてDTPソフトを選択、または開発をするのがベストとなる。
例えば、1枚物のパンフレット、ポスターの類では、ページ物でいう「柱」や「ノンブル」はあまり必要でない。そのかわり文字の大小、傾き、間隔等の詳細な指定、斜線や矩形等の描画を簡単にレイアウト上でできることが要求される。
また、カタログ、表組みの多いパンフレット等では、コンピュータのデータベースとスムーズに連係できるしかけが最も重要な要素である。例えば、商品のデータを写植機のファンクション組みフォーマットにいちいち埋め込まなければならないシステムでは、後で修正が利かず非実用的なものになりかねない。
マニュアル、社内印刷物等の制作については、要求される品質レベルによって、必ずしも写植機への変換機能は必要としないだろう。
具体的には、ソニーのワークステーション上のソフトNewsCaster(ニューズキャスター)、パソコン・レベルでCADソフトをベースに作られたWAVE:ACAD(シンプルプロダクツ)が商業印刷向けの代表選手である。
ほかに、ProCAP(エルダ)、iPRO-8000(ミック)、みえ吉(ライン・ラボ)、アルタミラ(ハイデルベルグPMT)など商品はバラエティに富んでいる。
一般企業向け文書処理マシンとして実績のあるキヤノンのEZPSもこのジャンルに近い。同社が汎用に発売しているカラープリンターやレーザープリンターをシステムの一部に組み込める。
パソコン用ワープロ「一太郎」で名高いジャストシステムの「大地」は、入力・編集システムと、リョービ製書体を載せた600dpiのプリンターを含めたシステムとして成り立っている。一般企業向けの「大地Office System30」とプロフェッショナル向けの「大地Pro System30」「大地Pro System70」があり、いずれも一太郎やグラフィック・ソフト「花子」からのデータ移管が可能。日本語組版処理を高速でかつ確実に実現できるシステムとして定評がある。
(図2-33 業務分担図4)
(図2-34 機能解説図4)
(5)ポストスクリプト系レイアウト・ソフト▲選択のポイント
マッキントッシュ・パソコンに代表されるポストスクリプト系DTPソフトは、写研製写植出力を必要としないならば、操作性が良くデータの汎用性も高いため、一般企業にとって非常に有望。マニュアルやちょっとした社内印刷物作成にはピッタリである。最近になって写研へのコンバータも開発された。だが、日本の伝統的な組版機能からとらえると、まだ機能的に不十分と評されている。▲内容解説
米国生まれのDTP(レイアウト・ソフト)としては、QuarkXPress(クォーク)とPagemaker(アルダス)が代表的である。いずれもマック用に発売されているほか、Pagemakerについては一般のパソコンでMS-Windows用として利用できる。どちらも欧文処理では十分に実用的であり、米国では商業印刷物、出版物に関わらず広く使われている。ソフトだけなら10万円~20万円と安価である。
両者を比べると機能面で一長一短ある。どちらかというとQuarkXPressの方がプロフェッショナル仕様であり、PageMakerの方がアマチュア的とされているがレイアウト機能の面で決定的な違いはあまりない。ただ、QuarkXPressはカラー・データの4色分解機能や、サイテックスをはじめとしたカラー製版システムとの連係を早くから実現している。そのため、トータル・スキャナーを備えるプロの製版業者にはQuarkXPressが受け入れられやすい。
両ソフトとも日本語化されているが、日本語処理にはやや難もある。バージョンが上がるに連れ改良されてきているが、まだプロがすんなり受け入れるほど成熟しているわけではない。ポストスクリプト系のプリンター、写植機への出力が基本になっているため、写研製フォントを利用できない不満もある。ただ、QuarkXPressについては写研製写植機へのコンバータが開発され、今後の動向が注目される。
なお、文章、図形などのデータはこれたレイアウト・ソフトの中でも調整できるが、ワープロやグラフィックス・ソフトなどさまざまなパソコン・ソフトで作成して、それをレイアウト・ソフトへ貼り付けるのが一般な処理の仕方である。マック、MS-Windowsとも、多くのソフトはポストスクリプトへの対応ないしはポピュラーなデータ形式でのデータ移管を可能としている。さまざまなソフトをユーザーが自由に選び、それをパソコン上で操りながら印刷物を制作するのは汎用システムならではのメリットで、専用のDTPシステムでは決して出来ないことである。
(図2-35 業務分担図5)
(図2-36 機能解説図5)(6)日本語ワープロ専用機、パソコン用ワープロ・ソフト
▲選択のポイント
ワープロを印刷システムの要素として考えると「データ変換ソフトを通して文字要素のみ利用する」入力マシンとして位置付けられる。また、印刷業者にとっては、バッチ処理用の安価な編集マシンとしても非常に便利である。▲内容解説
ワープロ専用機は一般企業において広く普及しており、プロ、アマ問わず文章の入力・編集マシンとして位置付けられる。印刷会社にとっては、安価な入力機として便利に使われている。従来日本語タイプライターで在宅勤務オペレーターを組織化していたのと同様に、ワープロ・オペレーターを組織化している企業も多い。データの表現方法は電算写植機や他のプロフェッショナル向け印刷システムとかなり異なり、電子データを移管するにはデータ変換ソフトが必要となる。
ワープロ専用機はコンピュータ・メーカーやOA機器メーカー各社が数多く発売している。富士通のOASYS、日本電気の文豪、東芝のルポなど、いずれも数万円の安価なマシンから、持ち歩きが出来るノート型、ポータブル型、さらに本格的な据え置き型まで多種多様である。メーカーごと、機種ごとにデータの持ち方や文書レイアウトの考え方が異なる場合があるので、目的とするシステムに適合できるかどうかには注意がいる。
パソコン用のワープロ・ソフトも同様に入力のための道具としてみることができる。パソコンの基本ソフトであるMS-DOSの標準テキスト・データはコンピュータで文字情報の処理をする上で基本となるもので汎用性がある。例えば文章を筆者がキーボードから入力し、それを前項で触れたようなパソコン用レイアウト・ソフト、パソコン用DTPシステムを使って編集者、制作者がレイアウトするという役割分担が簡単にできる。
パソコン用ソフトとしては「一太郎」(ジャストシステム)「松Ver.5」(管理工学研究所)など5種類くらいが売れ筋製品になっている。ソフトの価格は4万~5万円が相場、安いものなら1万円以下もある。
また、日本語ワープロではなくエディター(文書編集ソフト)の方が大量処理には便利である。エディターとは、レイアウトや文字種の多様な指定は出来ない代わりに高速の文字入力編集ができるソフトで、「Mifes」(メガソフト)「VZEditor」(ビレッジセンター)が代表的。特殊なコードを文章中に埋め込むことも可能なので、印刷業者の組版プログラム入力用としても使われている。(図2-37 業務分担図6)
(図2-38 機能解説図6)(7)モノクロ・プリンター
▲選択のポイント
ゲラ校正用に、レーザー式のモノクロ・プリンターはぜひ必要なコンポネントである。組版システム、DTPシステムには例外なく用意されており、価格も20万円前後まで低価格になった。ポストスクリプト系ソフトを使う場合はポストスクリプト対応のものが望ましい。▲内容解説
プリンターの種類としては、レーザー・プリンターのほか、インクジェット方式、熱転写方式、ドットインパクト方式などがある。だが、DTPで使われるプリンターとしてはレーザー・プリンターが性能が良く、一般的である。
ここで注意がいるのは、ソフトウエアやシステムとの整合性である。プリンターまで標準で用意されているDTPシステムや電子組版システムなら迷うことはないが、パソコン等で自力でシステムを構築する場合、ソフトウエアとの兼ね合いがある。例えば、マックなどポストスクリプト系DTPソフトを使うことを考えたら、当然プリンターもポストスクリプト対応機が望ましい。具体的には、アップル・コンピュータのLaser Writer II NTX-Jをはじめ、沖電気工業や日本電気などから各種発売されているポストスクリプト・プリンターから選ぶことになる。
キヤノンの「レーザショット」は国内で最も普及しているレーザー・プリンターの種類で、LIPSというページ記述言語で制御する。一般のパソコン・ソフトやEZPSのようなDTPシステムで利用されている。
普通紙プリンターの出力精度は300dpiから600dpi程度。次の項で紹介するイメージ・セッターのようなの出力は望めないので、ゲラ校正紙出力用として使われる。もっとも、そこまで品質を問われない業務では、版下作成コストの低減を狙うと、300dpi程度のレーザー・プリンターで普通紙出力したものをそのまま版下に用いているケースも結構多い。ほんの十数万円のプリンターで思う存分完全版下を作ると決めてしまえば、版下貼り込みや出力に業者がしゃしゃり出て行く必要性がなくなる。
なお、写研の普通紙プリンターSAGOMESも原理的にはこれらコンピュータ用プリンターと違いはない。ただし、写研専用のデータ形式しか解読できない。SAGOMESなら写研製フォントの出力が出来る。(図2-39 業務分担図7)
(図2-40 機能解説図7)(8)写植出力機(イメージ・セッター)
▲選択のポイント
DTPシステムから常に印画紙(またはフィルム)出力を必要とするユーザーにとって必要なものである。ただし、価格はそれなりにするし、高度なカラー用製版用フィルム出力には荷が重い。たいていの出力センターはポストスクリプト系のイメージ・セッターを備えている。▲内容解説
レーザー式のイメージ・セッターは前項で触れたレーザー・プリンターと原理的にはほとんど同じである。違うのは解像度だけと言ってもよい。普通紙へのプリンターではせいぜい600dpi程度までしか解像度を上げられないが、イメージ・セッターで印画紙やフィルム出力をするなら1000dpiから3500dpi程度までが実現できる。価格は数百万円から数千万円と幅があるが、高品質な出力を目指せばやはりそれなりに値が張る。
既に紹介した写研のSAPLSやモリサワのM30、組版システムとして紹介した各社の出力機も写植出力機である。だが、特に外部との標準インタフェースを持っている写植機ならばDTPや汎用のパソコン・システムからプリンターとして位置付けられる。具体的には、これまでにも何度か文中に出てきたライノトロニック(ライノタイプ・ヘル)、バリタイパー(バリタイパー)、AGFAプロセット/セレクトセット(アグファ・ゲバルト)が代表的な商品であり、いずれも標準的なページ記述言語ポストスクリプトを処理できるRIP(Raster Image Processor)が用意されている。ポストスクリプトの日本語対応と歩を合わせて日本語フォント(モリサワ製)も搭載し、これらのイメージ・セッターから高品質の日本語版下出力が可能だ。
ライノトロニックで言えば630/530/330など、バリタイパーでは1200/VT600Wなど数種類揃えており、性能や用途に違いがある。日本ではモリサワがライノトロニックの販売代理店である。バリタイパーは日本エーエムが販売代理店になっている。
なお、文字や図版出力では高精度の出力が出来るとはいえ、カラー製版に値する出力まではイメージ・スキャナーでは荷が重い。特に中間色の再現は一般のイメージ・セッターでは難しく、その意味では「ミドル・レベルの出力機」とされている。さらに高品質出力を狙うには、次の項で述べるトータル・スキャナーに役割をゆずらざるをえない。
(図2-41 業務分担図8)
(図2-42 機能解説図8)(9)トータル・スキャナー
▲選択のポイント
1システムで億の単位のする商品であり、プロフェッショナルの製版業者や画像のコンピュータ処理を目指す印刷業者向け。コンピュータとの連動に工夫がされているが、カラー画像データを電子化してパソコンへ入力したり、パソコンから出力したりまではまだ技術的に未熟である。▲内容解説
トータル・スキャナーという呼び方のほかに、レイアウト・スキャナー、CEPS(Color Electronics Prepress System)などいくつかの呼び方があるが、ほとんど同じものを指していると考えてよい。
高精細カラー・スキャナーで写真や図版を読み取り、その場で4色分解、これをレイアウト・ワークステーションで修正、色調の変調などを行い、さらにプリンターやプロッターに出力するトータルな画像処理システムのこと。一般にこのシステムは、同一シリーズで入力から出力までのコンポネントを揃えているが、コンピュータ技術の向上でパソコンやワークステーションと製版工程のリンクが徐々に現実化しつつある。製版機のインタフェースもオープンなものになりつつある。
それでも、DTPシステムで高画質のデータをそのまま扱うには問題が多すぎる。そこで、画像データのうち、編集用に画質を落とした低レベル・データをDTPに送り、それを基にレイアウト編集を行うやり方が注目されつつある。いわば、“仮のデータ”をDTPシステムで使い、ページアップする。そして、最終製版段階で基になっている高精度の“本物データ”を流し込み、品質の高い印刷物を完成するやり方だ。
トータルスキャナーそのものは数多いが、パソコンとの連動が取れるシステムとしてサイテックスが有名だ。サイテックスは、入力としてスマートスキャナ、スマートゥなど、編集ワークステーションとしてアセンブラなど、出力としてドレブ、レイスターなどが用意されており、これらのシステムとマックを連動させて操作できる。ほかに、クロマコム(ライノタイプ・ヘル)、シグマグラフ(大日本スクリーン製造)等が大掛かりなトータル・スキャナーを入れており、しかもマックとのインタフェースを持っている。
出力部分だけを取り出せばイメージ・セッターとほとんど変わらない、よりハイエンドのイメージセッタと言うことになる。だが、一般にトータルスキャナの出力はフォントを持っていない。そこに写植機と製版機の違いがある。(図2-43 業務分担図9)
(図2-44 機能解説図9)(10)イメージ・スキャナー
▲選択のポイント
画像品質全体を左右する重要なコンポネントである。加工/出力を含めたシステム全体から、どの程度の解像度が必要かが決定される。アマチュアが手を出せるのは中・低解像度に限られるが、中レベルのスキャナーでも徐々にコストパフォーマンスが向上している。▲内容解説
コンピュータ製版で扱う画像の質は、入力時の品質で99%まで決定される。本格的な製版業者にとって品質の非常に高いスキャナーが必要となることは言うまでもないが、アマチュアまたはセミプロ・レベルで手を出せるスキャナーとなると、一般には価格面で折り合わないだろう。また、高度な画像デジタル・データを扱うとなるとそれを保存する記憶装置や能力のあるコンピュータとの連係も当然必要で、前項の「トータル・スキャナー」として考えるべきである。
スキャナーには、ドラムに原稿を巻き付けて画像を読み取るドラム・スキャナーと、複写機のように原稿を平面において読み取るフラットベッド・スキャナーがある。一般に、ドラム・スキャナーは高速かつ精度の高い読み取りができる。本格的な製版に使われるスキャナーとしてはドラム式が大半である。
一方フラットベッド・スキャナーは原稿を簡単に固定できるのがメリットである。トータル・スキャナーの項で出てきたサイテックスやクロマコムなど各社のスキャナーはフラットベッド式が増えている。解像度でおおむね2400dpiかそれ以上。ドラム・スキャナーのレベルには及ばないものの、技術的な進展も見られ、十分実用になりつつある。汎用的なインタフェースを持ち始めているので、今後コンピュータ・システムの中にうまく組み込まれる例が増えるだろう。他には富士写真フィルムのSCANART、日本イマプロのQCS、アグファゲバルトのACS100などが例としてあげられる。価格は数百万円~千数百万円程度である。
モノクロ出力を想定した機種としては1000dpi~2400dpiのレンジの機種が使われる。写真ではなくロゴやイラストなどを扱い、ライノタイプやバリタイパーへの出力を想定した時、1200dpi程度で実用になるケースは多い。安いものでは100万円を切る商品も見受けられる。ECRM社のオートコン(国内代理店は六桜商事)も比較的名が知られている。
一般向けでは、安いもので10万円台から100万円超くらいまで、解像度は300dpiから800dpiくらいで用意されている。個人用としてパソコンなどで楽しむなら、このレベルの機械で事足りる。
イメージ・スキャナー以外では、例えばデジタル・スチルカメラ、ハイビジョン・カメラ等が今後入力ツールとして使われるようになるかもしれない。
(図2-45 業務分担図10)
(図2-46 機能解説図10)(11)カラー・プリンター、カラー複写機
▲選択のポイント
カラー・プリンターとカラー複写機は一体化する傾向がある。いずれもごく少部数の印刷か校正出力に用途が限られるが、むしろアマチュアが手軽に少部数のカラー印刷を実現するには向いているかも知れない。▲内容解説
小部数の印刷を除けば、カラー・プリンターは主に校正確認用に使われる。本格的な印刷には、既に触れたトータル・スキャナーで4色分解された版が用いられる。ただし、本番で印刷される色調とデータをカラー・プリンターに吐き出した色調とは異なるのが普通であり、その意味で本来の色校正にはなっていない。
しかし、高品質のカラー・データ出力を本刷(最終的な印刷)と出来る限り合致させることで、これを色校正に用いるDDCP(Direct Digital Color Poofing)が現在実用化に近づきつつある。フイルムからの色校正紙作成では出力の手間もかかるしオペレータの技術や印刷条件によって微妙に左右されてしまうが、コンピュータからデジタル・データで直接校正を出すなら手軽でしかも出力が安定する。特に編集したデジタル・データの画像をフィルムではなく版材に直接出力するダイレクト刷版(Computer To Plate)ではフィルム出力が飛ばされているため、フィルムからの校正出力が出来ない。そこで、近い将来カラー校正はDDCPに置き換わっていく可能性もある。
カラー複写機はカラー・プリンターとして入力インタフェースを持つ傾向がある。企業内におけるごく少部数の印刷なら、結局これでカラー印刷が可能になってしまう。ただ、ランニングコストは安くないので、ある程度の量を越えるとやはり限界が見える。
出力性能の点で見ると300dpi程度の低解像度からトータル・スキャナー用の高解像度機まで、出力紙の大きさではA4あたりからA1程度まで、各種揃っている。
キヤノンのPIXELシリーズは400dpi、256階調のカラー・プリンター兼複写機でコンピュータやテレビ画像とのインタフェースを持つ。100万円を切る機種も登場した。ほかにランダムにこのジャンルの商品を挙げれば、コニカのKonsensus(コンセンサス:色校正機)、サイテックスのiRiS、コダックのアプルーバル、ソニーテクトロニクスのPhaser、QMS Color Script100(300dpi)、セイコー電子工業のPhotoMakerなどが挙げられる。(図2-47 業務分担図11)
(図2-48 機能解説図11)(12)グラフィックス・システム、イラストレーション・ソフト
▲選択のポイント
専用の作図機よりも、汎用のコンピュータ上で開発されたグラフィックス・ソフトウエアやCGシステムが今後の主流。単に版下出力をするというより、デジタル・データとして後工程につなげることを念頭に置くべき。▲内容解説
グラフィックス処理をコンピュータで実現するには、コンピュータにもかなりの性能が必要とされる。やはりこの点でも「簡単なイラストを作るツールか」「プロのCGデザイナーのツールか」で高度なものから安価なものまでバラエティに富んでいる。
一時期手軽なマシンとして作図機が結構普及したが、システムで数百万円もする商品ではコストパフォーマンスが悪い。パソコン・レベルの優秀なCAD、イラストレーション・ソフトやCGソフトが普及して存在意義をなくしている。
パソコン・レベルではマックが操作性の上でグラフィックス・デザイナーに受け入れられている。しかし、やはり高度な処理をするにはマックでも最上位機種が必要となろう。マック以外のパソコン、ワークステーションでも、ソフトさえ選べば高度な処理が出来るので、ハードウエアにそれほどこだわる必要はないと思われる。
グラフィックス・ソフトウエアの種類で言うと、前の節で説明したようにベクター・データを扱うイラストレーション用ツール(ドロー・ソフト)とドット・データ(イメージ・データ)を扱うペインティング用ツール(ペイント・ソフト)の2種類に分けられる。図版を描くのは前者のドロー・ソフトで一般のCADソフトもこのジャンルに分類できる。ペイント・ソフトは画像レタッチに使われる。
パソコンDTPで良く使われるソフトとしては、ドロー・ソフトでIllustrator(アドビ・システムズ)やFreehand(アルダス)、ペイント・ソフトでPhotoshop(アドビ・システムズ)やColor Studio()など。せいぜい10万円台で手に入る。さらに安価なソフトではドロー・ソフトで花子(ジャストシステム)やマックドロー(クラリス)、ペイント・ソフトでシルエット(ジャストシステム)やマックペイント(クラリス)など、マック用に限らずパソコン、ワークステーション用としてかなりの種類が市販されている。
いったん作成した図版データをプレゼンテーションやCGに利用するグラフィック・ソフト、グラフィックス・システムも数多い。例えばCADで作成した建築図面を元に建物のパース図(透視図)をCGソフトで作り上げ、これを図面と同様にページ・レイアウト・ソフトに貼り付け、文書を作り上げるといった作業もできる。(図2-49 業務分担図12)
(図2-50 機能解説図12)(13)パソコン、ワークステーション
▲選択のポイント
今後の電子出版は専用マシンより汎用のシステム構築が主流になる。情報処理についてはパソコン・レベルでもかなり有効な道具となるため、大手から中小印刷業者まで欠かせない。ただ、グラフィック処理や本格的な組版処理などではしばらくはワークステーション・レベルのコンピュータが適当である。▲内容解説
本書で繰り返し述べているように、電算写植機のように専用機としてクローズに使われているシステムよりも、汎用のコンピュータを用いることで電子出版、情報処理の可能性は格段に高まる。少なくとも、電算写植機の専用編集機より、パソコンやワークステーション用組版ソフトの方が操作性、価格の両面で優れている。
ただ、日本では汎用のパソコンよりワープロ専用機の市場が膨れ上がったように、電子出版の専用機も特にまったくコンピュータの知識がないユーザーには使われ続けるだろう。だが、今後の流れで言うと、汎用コンピュータのシステムを軸に、高精度の入出力機器を組み合わせる方向でシステム構築を考えることが主流になる。多機種にわたって同じソフトウエアが開発されれば、いわゆる「マルチプラットフォーム」といって、パソコンでもワークステーションでも異機種でほぼ同じ操作性の同じソフトを使い分けることが出来るようになる。
パソコンの操作性、カスタマイズの容易性は、電子出版の芯となる情報処理に欠かせない。ほんの数十万円の機械と市販ソフトウエアをいくつか揃えるだけで、表組みデータの持ち込みやデータベース・サポートに的確に対応できる可能性がある。データ入力、用語チェックや数値計算などの自動処理、データ変換処理では柔軟性のあるパソコンが欠かせない。これらについては安価な機種で十分処理できる。
ただし、パソコンの処理能力はやはり限界もあるので、グラフィックス処理や本格的なページ・レイアウト、組版処理にはワークステーション・レベルのコンピュータか、パソコンでも最上位機種が必要となる。価格としては100万円から300万円程度になる。実際、最近普及している組版ソフトはワークステーション用が多い。入力、執筆には安価なパソコンとワープロ・ソフトを使い、それをレイアウトする際にはワークステーションの組版ソフトを使うというシステムが一般的である。
さらに大掛かりな、例えば何十万件もあるデータベースを処理し、短時間で印刷するというような情報処理となると、さすがにパソコンやワークステーションでも耐えられないことがある。その時は、オフコンやミニコンという大きなコンピュータを導入して、バッチ式で処理を目指すことになろう。(図2-51 業務分担図13)
(図2-52 機能解説図13)(14)フォント
▲選択のポイント
電算写植、電子組版などシステムごとにフォントは用意されている。汎用のコンピュータでは、プリンター制御系に合わせたポストスクリプト用フォント、TrueTypeフォント、WIFEなどとして標準化されている。▲内容解説
ここでいうフォントとは、文字の形(タイプフェイス)および統一されたデザインで描かれた文字グループを指すことにする。
電子出版においてフォントは常に問題となっている。日本の大手電算写植機メーカーや組版システムのメーカーはそれぞれ自社の編集、出力機に自社製のフォントを搭載しており、その意味でフォント・メーカーとして位置づけることも出来る。一方、欧米ではむしろフォントは写植機メーカーとは別個に発展して、アナログ・フォント、デジタル・フォントとも比較的広く流通する傾向があった。
フォントの種類としては、フォントを点の集合で表すビットマップ・フォントと、線画の組み合わせで表現するベクター・フォントの2種類がある。ビットマップだと拡大縮小ができないため、DTPで出力に使われるフォントとしてはベクター・フォントが主流である。
そして、フォントは出力機の制御系と密接な関わりを持つため、ページ記述言語の中ではデジタル・フォントの標準データ形式を定めている。ポストスクリプトの場合「Type1」と呼ばれるフォント形式が一つの標準になっており、これに合わせて開発されたフォントは、ポストスクリプトで利用できることになる。正確にはポストスクリプト用フォントはType1だけではないが、市販されているポストスクリプト用フォント商品はこの形式で開発されたものだ。
日本語の場合は、JISで定められている字数だけでも4000字ほどの数で、しかも1字1字が欧文に比べれば非常に複雑なため、開発に時間がかかる。既に触れたように、自社製品以外にはフォントを提供しないフォント・メーカーもあるため、ポストスクリプト用に限らず、流通するデジタル・フォントの数は近年になってやっと促進されてきた程度に過ぎない。
文字フォント開発・普及センターでは、アナログ、デジタルを問わず関連メーカーから提供されるフォントを登録して、一般への普及促進を目指している。平成明朝体、平成ゴシック体など、同センターの音頭でフォント・メーカーが制作した書体もある。
ポストスクリプト以外では、アップルコンピュータ発表したTrueType(将来的にはTrueImage)用のフォント、IBM PCやPC-9800などMS-Windows用にマイクロソフトが策定したフォントの標準WIFEなどがある。それぞれデータの表現方法が異なり、それぞれに合わせてフォント商品が出回ることになるが、あるプラットフォーム(動作環境)における標準を作るという考え方は同じである。
なお、デジタル・フォントで問題となってくるのが外字の扱いである。あらかじめ用意されている文字以外の難しい漢字や特殊文字が出てきたとき、その場で外字を登録しなければ出力につながらない。ところが、特にベクター・データで外字を登録する必要のある場合、1文字デザインするだけで大変な労力を必要とするし、機種によっては開発元に依頼しなければならないケースもある。これでは日常作業を流れを大幅に中断する危険性がある。外字をどのようにコード付けするかも、後の処理と絡んで難しい。
(図2-53 業務分担図14 15行)
(15)データ・コンバータ、データ形式について■標準化の意味
最後にデータ形式の種類とデータ・コンバータについて簡単に触れる。
いったんデジタル化されたデータは、記憶媒体やネットワークを通じて、あらゆるところで利用される可能性がある。電子出版だけをとっても、筆者が自分のパソコンで入力、作成した文字データ、図形データが紙を経ずに編集され、さらに電算写植機に写され、時にはそのまま最終段階まで繰り返し変換されては使い回されていく。日本国内だけでなく、国際的なデータ形式の標準化が非常に重要なのはこのことからも分かるだろう。
それでも、システムやソフトごとにデータ形式は異なる。それは、それぞれで処理する情報が異なるのだから当たり前のことである。文字と図形は扱うデータの種類が違うし、同じ文字データでも、単純な文章を打ち込むためのワープロと複雑なタイポグラフィーを目的としたシステムでは、そこで重要な情報は異なるのだから、データ形式が違って当然である。(図2-54 データ形式について)
ただ、システムごとに全く違うデータ形式を取るよりは、共通できる部分だけでも標準が定まっていれば、その標準に合わせたデータを入出力する機能を持つだけで状況は格段に改善される。例えば「レイアウト組み文書のデータ形式」としてある標準化がされていれば、地球の裏のどこかで誰かが作ったデータでも再利用できる。ページ記述言語のポストスクリプトが全世界で普及したのもまさにこの理由からである。ポストスクリプトの機能的な制限もあるが、そんな小異を捨てて大同団結できたところに標準化の意義がある。
標準化には、業界内の力関係や政治的思惑が絡むこともあるため、必ずしも技術的に優れたものが標準になるとは限らないが、常に標準化に向けた取り組みに目をむけることは大事であることに論を待たないだろう。
以下、代表的なデータ形式をいくつか説明する。データ変換ソフトとは、つまるところ「あるデータ形式からほぼ同じレベルの情報を持つ別のデータ形式に移し代えるソフト」のことである。<文字データ>
・(MS-DOS)標準テキスト・データ
文字がコード化(多くはASCIIコード)されて並んでいるデータ。ワープロで全く文字飾りや書式データが入っていないものと考えればよい。コードさえ合わせれば、パソコンから電算写植機、大型コンピュータなどに変換することは容易である。
・ワープロ専用機、ワープロ・ソフトのフォーマット
文字の並びは標準テキスト・データで記述されているが、改行の扱い、文字属性、フォント属性、文書書式などが入り込んでいる。そのため、そのまま他のワープロや電子組版システムに移しても、そのままでは使えない。そこで、データ変換ソフトを通して両者の形式を出来る限り合わせる必要が出てくる。
・SKフォーマット
写研製写植機で用いられている文書データ形式。テキスト・データの合間に文字属性や組版ファンクション・コードが交ざっている。写植機へのデータ変換ソフトで古いタイプのものは、ワープロなどのデータをファンクション交じりのSKデータに変換する機能を持っていた。
このほか、写植出力機を直接コントロールできる「スレーブ・データ」形式がある。これは、たんに文字が並んでいるというよりは、CADデータのように座標(位置)データと内容(文字や図形)で表現がされている。こちらの方がより合理的に文書を表現できるため、今後電算写植出力機へのデータ変換ソフトはスレーブ・データへの変換が主流になる。<画像、図形データ>
・TIFF(Tag Image File Format)
ビット・マップの画像データとして普及しているもの。高密度で中間色を持つイメージ・データの表現が出来る。DTPソフトやグラフィックス・ソフトの多くはこの形式をサポートしている。
・PICT
TIFFと同様、ビット・マップの画像データ・フォーマット。アップル・コンピュータ社で標準として位置付けられていた。
・DDES(Digital Data Exchange Specification)
画像データ交換のために規格。現在ISOにより国際的な規格化を進めている。
・DXF
CADソフトの図面データとして最も標準的に使われているデータ形式。もとはCADソフト「AutoCAD」で使われていた。業界標準ではあるが、当初からそれを目的に設定したものではないため、拡張部分を中心に完全な互換性は取れていない。<文書記述データ>
・ポストスクリプト
すでに幾度も触れた、最も標準的なページ記述言語である。文字、図形、レイアウトなど、文書を表現するためのあらゆる情報を盛り込んでおける。
・RTF(Rich Text Format)
米マイクロソフトが自社のワープロ・ソフトで採用した文書記述フォーマット。日本語版としてRTFJ(Rich Text Format Japanese)も策定されている。本文文書に加え、各種制御情報や罫線、図形情報を含む。
・SGML(Standard Generalized Markup Langage)
国際的な標準言語を目指してISOで標準化が進められた文書記述言語。たんに出力する文書の体裁だけを表現するのではなく、「これはタイトルである」「これは本文である」「これが段落の見出しである」といった文書の意味付けや論理構造を文書記述の中に含む。電子出版や文書データベース管理においても有効なデータ形式となりうる。国内においても日本規格協会などで検討されているが、実用化や普及はまだ先と思われる。
SGMLがどこまで実用となるかはまったく分からない。だが、電子出版で求められるデータ形式のあり方を考えると、やはり組み上がりイメージを表現できるだけでなく、情報がどういう意味を持つのか、あるいは情報処理に役立つ情報が標準ファイルに盛り込まれていることが望ましいだろう。(図2-55 電子出版に求められる標準データの内容)
■コンバータの種類
市販のデータ変換コンバータは、特定の機種(ソフト)から特定の機種(ソフト)へ1対1でデータを移すもの、ここに挙げたような標準的なファイル間の変換をするものなどに分類できる。印刷の流れでどのレベルの変換ソフトが必要なのかを区別する必要があるだろう。
最近では、フリーランス(ロータス)のようなプレゼンテーション用ソフトから写研のスレーブ・データにデータを移すようなコンバータも登場している。
データ形式の細部を理解するにはかなりコンピュータの知識が必要となるが、もし精通できれば、自社システムに合わせた特別のデータ変換ソフトを作り込むこともそれほどむずかしくはない。(図2-56 データ変換ソフト)