最近まであった銅板建築の家が、また1軒解体されてなくなってしまいました。貼ってあった立派な銅板はその後どうなったのか、気になります。
〔ある銅板建築物、解体前後の写真〕
■100軒を超えた銅板建築リスト
記事「銅板建築 1-“昭和元年”が次々消えていく」を書いて以来、機会があるごとに銅板建築の写真を撮影し、銅板建築一覧に追加掲載してきました。半年あまりで掲載写真は100枚を超えました。都内だけで100軒を軽く超える数の銅板建築が現存していると証明されたことになります。
これまで移動の合間などに銅板建築を見つけて写真を撮るだけで、銅板建築がある場所にそのためだけに出向いて写真を撮ることはまれでした。あるとわかっていてもリストアップしていない銅板建築はまだ多数存在しています。それらを網羅するためには、意識的にそういった地区に出向かなければならないかもしれません。「ここに銅板建築があるよ」という情報がありましたら、ぜひお知らせください。大歓迎です。
もう一つ気がかりなのは、撮影した銅板建築がいつの間にかなくなっている可能性があることです。冒頭の写真は品川区某所にあった銅板建築の住宅で、昨年暮(06年12月末)には前と変わらず建っていたはずの家が、あっという間に取り壊されて駐車場と化してしまいました。また1軒、昭和の風景がなくなってしまったことになります。これ以外にも1~2軒、すでに消滅している銅板建築があるかもしれません。
■貴重な銅資源
ここ数年、鉄、アルミ、銅など金属の需要が世界的に膨らみ、価格は高騰したようです(今現在は少し落ち着いているようですが)。日本国内でも銅線が大量に盗まれるといった犯罪が起きているそうですね。今や銅というだけでも立派な資源。解体後の銅板にはさらに付加価値も緑青も(笑)付いているわけですが、その後どう処理されていったのでしょうか。
建築廃棄物の処理は相当厳密に規定されています。排出事業者がその後の処理の行方について基本的な責任を持っているとともに、処理経過は「マニフェスト」と呼ばれる管理票で記録されます。記録として必ず残っているはずなので、解体された銅板がその後どうなっていくのかも調べればわかるのかもしれません。基本的な金属資源がリサイクルされる割合は相当に高く、銅はほぼ100%リサイクルされるとも聞いています。
写真の建物はすでに老朽化していたようでしたので、遅かれ早かれ取り壊さざるを得なかったでしょう。何でもかんでも古い状態で残ればよいとはもちろん思っていません。でも、以前の記事でも触れたように、この家に貼ってあった年季の入った銅板を、金属資源としてのリサイクルでなく、歴史的建材のリサイクルとしてそのまま“昭和レトロ”風の店に転用できたら、きっと味のあるものになるのではないかと思うわけです。
ただし銅板は内装ではなく外装なので、居酒屋や定食店の店内とかに持ち込むものではないでしょうし、中途半端に外装に銅板を貼っても汚くみられるだけかもしれません。なかなか難しいのか…。