「コンビニ、商品」カテゴリーアーカイブ

コンビニ 7-新業態店の撤退とその後

昨年から今年にかけてコンビニの新型店舗が次々に開店していましたが、そのうちのいくつかが相次いで閉店してしまいました。もともと実験的で早期の撤退が予想できたものもありましたが、やはり“屍累々”といった様子です。

CVS閉店写真
〔撤退したCVSや近隣業態の店舗〕

■店先に「閉店のお知らせ」
飽和したといわれるコンビニ業界では、少し前から新業態の開発に躍起になってきました。ローソン、サンクス、am/pmなど、それぞれ昨年の間に新型店をいくつも開店しています。大きく分けて

・女性向けコンセプトの店舗
・生鮮100円ショップ型の店舗

があることを、本サイトでも「コンビニ 1-新業態、増える」「コンビニ 2-付加価値型の“実験店”」「コンビニ 3-生鮮品揃えと均一価格」と記事をまとめました。また、近隣業態からのコンビニに近い店舗進出も目立ちました(コンビニ 5-低くなった業界の垣根)。

これらのうちいくつかが、すでに撤退してしまいました。もともと実験店舗、つまり新しいチャレンジとしての位置付けのものも少なくないのですぐ変化するだろうとは思いましたが、やはり時間の流れは速いようです。

→am/pmが開いた女性向けコンビニとして注目された「HAPPILY(ハピリィ)」は、07年5月末に閉店
→同じくam/pmの生鮮型100円ショップ「FoodStyle」は、エリアフランチャイズ制をとっている広島の数店を除き07年夏にほとんど撤退
→ローソンの「ナチュラルローソン ベーカリー」は07年8月末に閉店
→ドンキホーテの「パワーコンビニ 情熱空間」5店舗は07年10月10日に閉店
といった有様です(写真)。

■客層が絞られすぎた
「HAPPILY」は当初から相当苦戦したようです。当初の24時間営業から、夜間は閉店に変えるなど工夫した様子もありました。店の狙いを絞るとしても、結局は顧客が絞られたことで売上減を招いたとの見方が一般的です。多店舗化の構想があえなく挫折した事例といえます。

am/pmについては、生鮮100円ショップ型の「FoodStyle」も撤退しました。他社ではそこそこ商圏に根付いているようにも見える“生鮮型コンビニ”ですが、am/pmは真っ先にあきらめたことになります。アドバンテッジパートナーズという投資会社出身の経営者が就任したこともあり、過去の投資が見直されているのは自然なことでしょう。

最も先鋭的に新業態店のチャレンジをしているローソンについては、はじめから試行錯誤の意図があるのでしょう。銀座の「ナチュラルローソン ベーカリー」は実験店と位置付けされていましたので、ひっそりと閉店しても、まぁ別に驚きません(すぐ近くの「ナチュラルローソン」は営業を続けています)。開店時と違い、閉店時にはニュースリリースの一つもありません…

日本橋にあった「ハッピーローソン」については、そもそも日本橋の土地利用が期間限定だったこともあり、計画とおり半年で閉店。そのかわり、入れ替わりで横浜にハッピーローソン山下公園店がオープンしています。

「パワーコンビニ 情熱空間」は、外からの参入組として一時かなり注目されたドンキホーテの事業でしたが、続きませんでした。開店していた期間は最も古い渋谷西原店でも1年2カ月。最も新しかった八王子横山町店は半年経っていません。正直、以前渋谷西原店を訪れたときの、広い割に閑散とした店内の様子を思い起こすと、さもありなんと思います。

ドンキホーテのニュースリリースによると「異なる業態を同時に推し進めるのではなく、経営資源を集中すべきとの結論」とのこと。閉店のニュースリリースを出している分、ひっそり閉店していくより潔いかもしれません。

■失敗の中から学ぶ?
以前の記事でも触れましたが、Shop99を展開している九九プラスはローソンの傘下に入りました。ローソンストア100はその関係で出展方法を見直し。Shop99といずれ運営形態が近づいていくのでしょう。“力ずく”による一番手確保かもしれませんが、いちおうは勝ち組としてよいのでしょうか。

新業態のチャレンジ失敗も、業界全体としてみると良い経験なのでしょう。事業ですから、失敗を繰り返してレベルも上がっていくことと、前向きに捉えたい所です。

最大手のセブンイレブンと(それに次ぐ?)ファミリーマートは新業態に目もくれていない様子ですが、基本型店舗の充実の延長で、各社の失敗、成功を取り入れようとしていることでしょう。

基本的には、中央集権的な考え方から個店の個性尊重の考え方に少しずつ変化しているように見えますが、本当のところまだよくわかりません。少し前までどのコンビニでも売っていたお気に入りの商品だったのに、あるときからぱったり、どのコンビニに行っても売っていない… そんなことがよくあります。なかなか個店尊重は遠そうな気がします。

コンビニ 6-“本部には内緒にしてね!”

コンビニでも個店重視の動きが高まっているようです。しかしチェーン一律均一のFCシステムで、個性を出すことは可能なのでしょうか。システム作りの過程で、電子マネーもその一翼を担うことになるのでしょう。

CVSマップ3
〔システム作りを踏まえた小売店舗チェーン作り〕

■店オリジナル? のファスト・フード現わる
コンビニ 4-個性の追求は難しいで、「コンビニは、標準化された便利さの代わりに、個々の商店の個性や面白さを犠牲にしている」といったシニカルな表現をしました。

しかし、このところの各コンビニ本部の動きをみると、地域や個々の環境によって店作りに違いを出そうとする方向性が強まっています。まだまだ胎動期かもしませんが、コンビニ・チェーンの将来像を示唆しているのでしょう。

つい最近セブン-イレブンのある店内で見かけたのが、ストア・オリジナルとも思わせるあるファスト・フード。
「当店だけで扱っている商品です。本部には内緒にしてね」
という手書きのPOPが掲げられていました。全国的に一律で販売されている商品だけではなく、その店でしか売っていない商品もあるようにアピールされると、やはりその店に足を運んでみたくなるものです。

もっともこのケースでは、POPにあるような「本部には内緒」ではなかったはずです。本部のスーパバイザーは頻繁に店に訪れその商品を目にするはずですし、もし本当に店の独断でオリジナル商品を売りたかったらそんなPOPを掲げるはずもありません。その店はセブン-イレブンでも日販100万円近くいく優良店と思われます(※注)ので、たぶん本部(少なくとも地域の統括部)もグルになった実験的な試みだったのだろうと思われます。

※ セブン-イレブンの場合、都市の標準的なモデル店舗で日販60万円強、それ以外のコンビニ・チェーンでは日販45万円前後という。

■セブン-イレブンが個店対応の動き
コンビニの店作りについて、コンビニ 1-新業態、増えるコンビニ 2-付加価値型の“実験店”コンビニ 3-生鮮品揃えと均一価格、といった事例を記事にしてきました。しかし業界リーダーのセブン-イレブン(およびファミリーマート)は安易な新業態作りには踏み出さず、「コンビニ基本型」育成に注力しているようです。生鮮食料品やファスト・フード(対面カウンターから提供するという意味で「カウンター・フード」と呼んでいるらしい)についてそれぞれ既存店で実験しているようですが、それによって新業態を立ち上げようとはしていません。

だからといってセブン-イレブンが保守的というわけではありません。飽和状態のコンビニの将来が悲観的にみられるなかで、鈴木敏文セブン&アイ会長はマスコミのインタビューに答えて「コンビニはまだまだ未完成である」といった旨の発言をしているようです。これは例えば生鮮小売店なりファスト・フードなり、その他個性のある小売店が日常的に提供しているサービスのなかで、今のセブン-イレブンが役割として提供できていないものがあることを認識しているからでしょう。

今セブン-イレブンが力を入れているのは
・デリバリーと御用聞き
・カウンター・フード
・電子マネーnanacoの普及
でしょうか。あと、日本ではありませんが、中国に進出したセブン-イレブンの店では
・量り売り
も実現されているようです。

大きくみれば、個々の店の個性作り(その前提として個々の顧客への対応力、付加価値型のオペレーション充実)に方向性が向いているのではないかと推測します。

■コンビニのシステム作りはまだまだこれから?
冒頭の図〔上〕のマップは、コンビニ 4で作成した図と同じものです。

生鮮コンビニはある一定数の店舗が展開されていますが、“提供している商品・サービスの価値が不十分”であることが常に課題になっています。ローソンは生鮮コンビニのSHOP99(99プラス)に資本提携したことで、「ローソンストア100」の展開は“打ち止め”となりました。「Gooz」や「ForkTalk」は、“コンビニ派生型”という枠の外に行ってしまった感があります。女性向けコンビニ「Happily」は、ターゲットの絞りすぎなどが原因で“売上を落とした店”と認識されているようです。ようするに数々出現したコンビニ新業態は、結局コンビニと基本的に別の業態になるか、または基本型に舞い戻るかのどちらかに向かっていると思われます。

これらと違ってセブン-イレブンは、冒頭の図〔下〕のようなイメージでアプローチしているように思えます。つまり、他業態の成功をみて平面的に展開しようとしたローソン、サークルKサンクス、am/pm、スリーエフと異なり、「基本型のさらなるシステム化」を追求し、図で言うと“業態の平面”から抜けて立体的な仕組み作りをすすめている。そしてワープしたように個性重視型店舗を出現させる。それが結果的に生鮮小売店やファスト・フードに対抗できるような店になっている…。

なんて言うとセブン・イレブンばかり優れた戦略をとっているかのような言い方になってしまいますが、そう言いたいのではありません。ようするに「コンビニはまだまだ未完成である」という鈴木会長の言葉はおそらく正解で、高度になったと思われているコンビニのシステムも、小売システムとしてはまだまだ不十分なものということなのだと思います。

今後、とくに電子マネーnanacoは、セブン-イレブンの店舗個性作りに大きな役割を担うのかもしれません。「商品」を切り口に売れ筋の分析をしてきたPOSの機能と併せて、「顧客」を切り口にニーズ分析する機能を持ちうるわけですから。

もっともそれは売る側からみたときのメリットにすぎません。顧客からみたらnanacoを所有することの価値はどこまであるのか、かなり疑問もあることでしょう。

「恵方巻」商標は登録ならず。安心して使えそう

「恵方巻」の名称が商標出願されていたのをご存知でしたか? そしてこの1月、審査により登録に至らず、拒絶となったようです。

恵方巻パンフ
[主なコンビニ・チェーン各社の「恵方巻」パンフレット]

■コンビニが仕掛けた? 「恵方巻」ブーム
節分の恵方巻(丸かぶり太巻き寿司)が、ここ数年で全国的に広がりました。どうも仕掛人はコンビニのようです。1989年に広島のセブンイレブンが恵方巻きの販売を開始し、その後10年以上かけて全国まで広げたとの情報が伝わっています。いまや節分を前に太巻き寿司を大々的に扱うことが、コンビニ、寿司店、中食(惣菜・弁当)店、食品スーパーなどで一般化しました。冒頭の写真のように、コンビニ各社は早くから積極的にパンフを配り、予約獲得に躍起です。

食品業界に限らず、社会が商業的な思惑から「イベント」を欲しています。かつて「バレンタイン・デー」なるイベントを(一部の人が)作り普及に成功したことで、2月14日前後にチョコレートが大量に売れるようになりました。同様に、「節分には豆まきだけでなく恵方巻も食べる」という新しい風習が生まれたといってよさそうです。

新しい季節のイベント作りは、元から生活に根付いた風習であるかどうかは必ずしも関係ないみたいです。少なくとも私の周囲で、数年前までは「恵方巻」という言葉を知っていた人さえいませんでした。私も、あるとき仕事でデパ地下の惣菜店巡りをしていて、節分の日に突然あちこちで行列ができているのを見て、初めてこの商品を知った次第です。

もちろん、いくら関係者が汗をかいても、一部の人たちの思惑だけで市場は動きません。おそらく時代のトレンドにうまく乗っていかないと、こうした仕掛は点火しないでしょう。その点、恵方巻イベントが一つの新しい風習として育ったことは、かなりの成功といえます。消費者からみても、なかなか楽しいものだと思われます。

■広島のIT系企業が商標出願した「恵方巻」
恵方巻の行事が全国的に盛り上がっていく中で、2005年7月に「恵方巻」を商標出願する者が現れました。

・「恵方巻」(出願番号2005-72920、区分30 すし)

出願人は広島の株式会社アットという会社(位置づけとしては米デラウェア州アットインク社の日本支社)です。一見、寿司ともコンビニとも関係ないIT系企業だったこともあり、一部でその成り行きが注目されていました。

もし審査によりこの商標登録が認められ、かつ出願人が商標権を強く主張することになったら、今後日本全国で寿司に気安く「恵方巻」という名をつけることができなくなってしまいます。ある店では、昨年から「恵方巻」と名付けるのをやめて「丸かぶり寿司」+カッコ付けで「恵方まき」としたとか。

しかし結論として、寿司としての「恵方巻」商標を特定の企業が独占する懸念はなくなったと考えられます。上記の商標出願は、当事者の株式会社アットの説明によると、

・本商標は平成19年1月16日付けで拒絶された
・本査定についての不服申し立てをする予定はない

とのこと。これまでこの件でなかなか正確な情報が伝わっていなかったので不安がありましたが、今後は安心して「恵方巻」という名称を使えそうです。

■特定企業による独占を“防ぐ”ための出願だった
誤解してはならないのは、この件で出願人は「恵方巻」商標を独占しようとしたのではないという点です。逆に特定の業者に商標登録されないよう、防御的な意味で出願したようです。出願人のアットは広島県すし商生活衛生同業組合の顧問企業という経緯があり、同組合にかわって商標登録を行ったとのこと。「仮に出願が通った場合は組合に権利譲渡する予定」だったと、同社代表取締役から説明をいただきました。

このように防御的な意味合いで業界団体などが商標出願する例は珍しくありません。公的で代表的な位置にいる団体の管理下で出願が通れば、全国の関係者は安心してその名称を利用できる可能性が高くなります。また、拒絶されれば、逆に他の業者が出願しても同様に拒絶されることが明確になるので、やはり安心してその名称を利用できると判断できます。今回は、このうち後者の結果になったということのようですね。恵方巻でビジネスをされている全国の方々は、アットさんに感謝するべきかもしれません(!)。

なお、類似の名称で、次のものはすでに商標登録が成立しています。

・「恵方柿」(区分30 柿を原材料に使用してなる菓子及びパン)
・「恵方餅」(区分30 餅菓子,餅入りのパン)

そして、次のものが商標出願されています。

・「恵方巻」(区分29 かまぼこ,ちくわ,その他の加工水産物,肉製品)
・「恵方」(区分29 加工水産物、加工食品、…ほか多数)
・「笑方巻」(区分30 菓子及びパン、すし、べんとう、…ほか多数)

■商標に注意しなければならない名称
余談になるかもしれませんが、鰻の蒲焼を細く刻んでご飯にまぶした料理「ひつまぶし」は、加工食品などの区分で、老舗日本料理店の「合名会社蓬莱軒」(あつた蓬莱軒)というところが、1987年に商標出願し登録されています。

・「ひつまぶし」(区分:32 食肉、卵、食用水産物、野菜、果実、加工食料品)

ただし、05年に同じ会社が飲食物提供の区分(サービスマーク)で出願した「ひつまぶし」は、06年10月に拒絶査定されました。こちらはその後、出願人が不服審判にもちこんだようです。

・「ひつまぶし」(区分:43 飲食物の提供)

ほかに「浅草ひつまぶし」「海鮮ひつまぶし」など、登録商標または商標出願中のものがいくつかあります。「ひつまぶし」については、商標権の侵害について注意を払わなければならないといえそうです。

■甘党にうれしいロールケーキ
ややこしい話は置いて恵方巻の話に戻ると、コンビニ各社は商品のバリエーションにいろいろ工夫している様子が見られます。「丸かぶり寿司1本」はさすがにヘビーなのか、ハーフサイズあたりが今後受けそうな気がします。

今年はセブンイレブンやスリーエフが「丸かぶりロールケーキ」なるものを出してきました。寿司ではなくケーキ。甘党にはきっとケーキの方がうれしいでしょう。もしかしたら何十年後かには、節分のロールケーキとバレンタインのチョコレートが、2月の2大スイート・イベントとなっていたりして…。

▽追加情報
東急東横店は、恵方巻にみたてた「巻きピザ」を出したとのこと。イタリアで縁起物のレンズ豆などをピザ生地で恵方巻のように巻いたもので、大きさはエクレアくらい。2/2、2/3の両日、30本限定販売だったとか。新しいアイデアはいろいろでてくるものですね。

▽関連記事:
恵方巻商戦は定着したのか
恵方巻2009(コンビニ)
スーパーマーケットの恵方巻
恵方巻2010(コンビニ)

コンビニ 5-低くなった業界の垣根

コンビニから他業態への業態拡大とともに、外の業態からコンビニ周辺へ進出も目立ちます。関連流通業をまきこんだ、企業買収・業界再編の動きも注目です。

「まいばすけっと」とローソンのベーカリー
〔イオンのサテライト型店舗と、ローソンのベーカリー〕

■店舗立地の妙と物流の強み
これまでコンビニ(標準型)がほぼ独占していた顧客を、他の業態がいろいろな形で侵食しています。まあ、最近始まった話というわけではなく、もう何十年も繰り広げられている争奪戦の一つと考えた方が良いのかもしれませんが…。

イオンが展開を始めている「まいばすけっと」も競合店の一つでしょう。写真の青物横丁店はイオン品川シーサイド店から歩いて7~8分の場所に立地しています。この店は、イオン(総合スーパーであるジャスコ)の近くにサテライトのように店を構えているところが特徴です(まいばすけっとの別の店は、必ずしもサテライトというわけではなさそうです…)。

イオン本体との間に国道を挟んでいることや、私鉄の駅からみるとイオンや他の地元食品スーパーと逆方向にあることなど、「ちょっと駅向こうのスーパーまで行くにはおっくうだな」と心理的に感じる地域の消費者をうまく吸引できる位置にあると思われます。

また、この店からイオンと逆方向に10分ほど歩くとJR大井町駅があり、イトーヨーカドー、西友、アトレ、丸井などがひしめいています。通勤経路の関係などからヨーカドーや西友を使うことが主になっている中間地点の消費者に対して、空白の一部を埋めるような意図が感じられます。

売場面積約150m2、取扱品目数3000品目と、“コンビニ仕様”よりわずかに大きめ。営業時間は7時から24時。入り口を入るとすぐに生鮮品(パック含む)がドンと目に入ることや、飲料や日配品がイオンと同じ価格で手に入ることが、周辺に4~5店あるコンビニとの大きな違いです。

いわゆるサテライト店の類は、これまでも外食チェーンなどで試みられてきましたが、結果的に大きな成功を収めたといえるものは少ないのではないかと思われます。しかし、生鮮に進出したコンビニよりもともと生鮮を扱うスーパーの小型化の方が、消費者からみるとまだ安心して買える気がします。物流の点でも大きな負担はなさそうです。今後どのように変化していくのか、ウォッチしたい店の一つです。

「まいばすけっと」のほか、ドンキホーテの「情熱空間」(広さ180m2、品目数1万2000品目、24時間営業)、小型100円ショップ、駅中コンビニ(キオスク含め)など、コンビニとの競合は増えるばかりです。

■コンビニが併設する“パン屋さん”
少し話の内容が異なってしまいますが、ローソンが12月に開いたばかりの「ナチュラルローソン ベーカリー」は、すぐ近くにあるナチュラルローソン店舗のサテライトのようにみえます。飲料など同じ商品が売られているとともに、普通のコンビニでは対応できていない「焼きたてパン」をきちんと提供する機能を持っています。

同社のニュースリリースには「“焼きたてパン”の新商品開発や、お客さまの動向を調査するテストマーケティングを行う」と書かれています。つまりここで大きな収益をあげたり多店舗展開するというより、売れる商品を作り上げその成果を標準化して他店に広げていくことが眼目のようです。

しかし、逆の発想はできないものでしょうか。標準化した商品開発をコンビニ独自に行うのではなく、例えば各地にあるベーカリーや惣菜店、おにぎり屋さん、和菓子店といった専門店と個々に(または地域ごとに)提携して、それらの専門店をサテライトのように(互いに)利用すればいいではないか? と。

この場合、コンビニ本部が無理に商品標準化を推し進める必要はありません。提携する専門店の商品の特徴を生かすことで、かえってコンビニ個店の強みにつながるはずです。問題は、そうした外部との提携、商品の選択、予定販売数量の予測といったオペレーションとソフトウェアの部分でしょう。地元企業との販売提携にはリスクもあるでしょう。しかし、その部分こそノウハウ化していければいいのではないかとも思うわけです。コンビニが小売チェーン店としての強さを発揮する一方策ではないかと想像します。

■業界再編近い? コンビニ業界
コンビニ業界は、いま少しキナ臭さがあります。少なくとも何らかの企業買収やグループ化が進むだろうと予測されています。7-11、FM、ローソン、サークルKサンクスの4大チェーンがそのまま今後も続くかどうかわかりませんし、それに続く中堅チェーンとなると、いつどこに買収されてもおかしくありません。

いま業界内の噂としては、am/pmが“売り”状態にあるとか。am/pmは「牛角」など外食産業で大きくなったレックス・ホールディングスの傘下にありますが、そのレックスは昨年(2006年)くらいから業績が低迷し始め、11月にMBO(経営者による企業買収)→上場廃止、となりました。戦略建て直しの中で、am/pmおよび高級スーパー「成城石井」といった小売分野は手放すのではないかと噂されているわけです。

もう一つ注目されているのが、コンビニ側からみて強力な競争相手であるSHOP99。ここはプリント基板設計・製造の(というより企業再生のための投資事業会社?)キョウデンという会社が親会社です。基本的には成長段階にあるSHOP99ですが、さすがに出店ペースは鈍っており、そろそろどこかの流通グループに売却されるのではないかと噂されています。

イオン、イトーヨーカドー(セブン&アイ・ホールディングス)、ドンキホーテなど、多かれ少なかれSHOP99に興味を持っていることでしょう。“何でも欲しがるイオン”が有力だとか業界では噂されています。意外とこれまで日本勢の後塵を拝してきた米ウォルマート(&西友)が獲得するなんてこともあるのではないかと個人的には思えます。“Everyday Low Price”のウォルマート式とSHOP99とは相性がよさそうに思えますが、どうなのでしょうか。

(これらの買収話はあくまでも「噂」にすぎません。念のため)

▽追加記事:
SHOP99は、ローソンと資本・業務提携に踏み込んだようです。ローソンストア100とSHOP99は統合に向けて検討されるとのことです。

・ローソンのニュースリリース(2007年2月28日)
http://www.lawson.co.jp/company/news/1171.html

▽関連情報:
・napparaのスーパーなひとりごと
その時、イオンは何をしてたのか?(まいばすけっと)
http://blog.livedoor.jp/nappara48/archives/50345472.html

・外資系経営コンサルタントの論理的思考メモ #052「新たな段階を迎えたコンビニ業界」
http://earthborn.blog12.fc2.com/blog-entry-140.html

コンビニ 4-個性の追求は難しい

「コンビニは、仕方なく行く場所?」 いくらコンビニ基本型のビジネスモデルが優れているといっても、好んで行く消費者がどれほどいるものでしょうか。

fig_cvs2
[CVS新業態の位置づけ2]

■結局“基本型”に回帰していくのか?
記事「コンビニ 1-新業態、増える」で、生鮮型コンビニやファストフード型コンビニの位置づけを試み、続く記事2本でそれぞれの実店舗の様子について軽く触れました。これらの中で「新業態は、その特徴を出そうとすればするほど他の業態に近づく」「基本型に収束していく可能性が強い」といった意見を書きました。

先に示したコンビニ新業態ポジショニング・マップを、冒頭の図のように少し単純化させました。コンビニと離れた新業態として“羽ばたっていく”ものを別にすれば、それぞれ関連業態をかすめてブーメランのように戻り、コンビニ基本型の強化として根付くのではないかと推測しています。

■生鮮棚をどう充実させるか
イートインを持つファストフード型コンビニ(図の左下方向)は、どこからみても売場面積に対する効率が低く、そのまま多店舗化するには無理があります。従来からミニストップがやっているような小ぶりなイートインにとどまらざるを得ないのではないかと推測されます。調理が必要な中食メニューなどは、うまい形で取り入れられるところもありそうです。

生鮮型コンビニ(図の右上方向)は、少なくとも店頭を見る限り生鮮品が置かれているがゆえの強みはあまり感じられず、均一料金も不徹底にならざるを得ない状態なので、コンビニ基本型と決定的な違いがよくわかりません。ただし、バックヤードや本部のオペレーションにはかなりの違いがあるはずで、そこをどう活かすかはチェーン全体の戦略として重要でしょう。

生鮮食品を安定的に取り入れるため、とくに青果物に関しては卸売市場など大量仕入に向くルートと契約農家など個別提携するルートとを併用する必要があるでしょう。いくつかリスク・テーキングをしながら仕入ルートを確保しなければなりません(すみません、このあたりの実態がどうなのかを当方は把握していません)。ここまでやれれば、本部としての機能が発揮できるということになるのでしょう。

また、雑貨や加工食品、日配品の一部では、売価を100円前後に揃えたPB(プライベート・ブランド)商品の存在価値も出てきそうです。そのためには、資本系列に総合スーパーがある7-11(イトーヨーカドー)、ローソン(ダイエー)、ミニストップ(イオン)あたりの方が商品企画力の上で有利でしょう。もっともPB商品は一つ間違うと“安売り”のための商品というイメージが強くなるかもしれません。

既報のように、ファミリーマートと7-11は、新業態開発ではなく既存の店舗に生鮮棚を入れる展開を進めているようです。スリーエフもq’s martでやや無理な多店舗展開を目指したことを反省し、既存店への生鮮品展開を重視する方向に舵を切ったようにみえます。

図の左上方向(100円ショップ型)については、これまでのコンビニ基本型でもかなりカバーしていた領域のような気がします。つまり売り方が異なるとはいえ、実に多種の雑貨をこれまでも取り扱ってきた経験があります。ただし品揃えの上で、コンビニは「買ってすぐ使うもの」のみ、100円雑貨ショップはそれに加え「いつ使うか必ずしもわからないが、買って楽しめそうなもの」という違いがあるでしょう。コンビニ側からすると、限られたスペースに生活雑貨をどう品揃えするかという“戦術”に拠るのではないかとも考えられます。

■店、従業員、客の個性
そして問題は右下方向です。ここで「生鮮小売店」としてあるのは、普通の青果店、精肉店、鮮魚店、惣菜店をイメージしています。または地域に根付いている食品スーパーも当てはまるかもしれません。ようするに
・本来の意味で新鮮な生鮮品が相当の量または種類並んでいる
・店の人が客の求めに応じて臨機応変にオペレーションしてくれる
・その店でしか手に入りにくい商品が(ときどきでも)ある
店です。

そのためには「個店の特徴を前面に出す」「従業員の個性を活かす」「顧客ごとに異なるサービスをすることを厭わない」「ストア・ブランドの商品を持つ」といった対応が必要でしょう。言い方を変えれば「オペレーションの標準化」というコンビニ(というより多店舗チェーン一般)の最も基本となる強みを否定するようなものです。どのコンビニ・チェーンも踏み出せない領域なのかもしれません。

たとえコンビニを多用している消費者でも、コンビニに行きたくて行くという人はかなりまれだと思われます。ほとんどのコンビニ客は
・すぐに必要なので仕方ないからコンビニで探す
・少し高くても仕方がないからコンビニで買う
・まずくても仕方がないからコンビニ弁当で済ます
ものですよね。

さらに異なる視点ですが、どこの地域にも、なぜか安く雑貨や食料品を売っている、どこか“いかがわしさ”のある店というものが存在します。そういう店は品揃えがあまり一定していないものの、逆にそれが時々行くときに「こんなもんもあるのか」といった面白さや驚きにもつながる、不思議な魅力があるものです。洗練されていない分、素朴ではあり、市場(いちば)というものの活気をどこか残しています。標準化されたフォーマットとは異なる魅力があるのだと思っています。

コンビニは「標準化された便利さ」の代わりに「面白さ」も「新鮮さ」も「個性」も犠牲にしてしまっているという意地悪な言い方も可能です。仕方がないといえば仕方がないのでしょう。でも、この方向(個性化の方向)に展開することはできないものなのでしょうか。皆さんは、どう思われますか?

うーむ、もともといい加減なポジショニング・マップを土台にして、さらに無理のある話の展開をしてしまったかもしれません(!)