身体を測る 07-心肺機能の測定とスポーツ

メタボリック・シンドロームを防ぐためだけではなく、スポーツ競技者の競技力向上にも、心肺機能の測定は有効です。

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■さまざまな測定方法
一つ前の記事「身体を測る 06-メタボリ症候群と全身持久力」で、メタボリック症候群に関連して基礎代謝量や全身持久力の測定について話をしました。そもそも全身持久力というのがわかったようでよくわからない概念ですが、ここでは単純に、次のような指標(身体から測定できる値)を指すことにします。

・基礎代謝量:安静時に消費されるエネルギーの量
・無酸素性作業閾値(AT値):運動していて急につらくなるレベルにおける(酸素摂取量または血中乳酸濃度または心拍数などの)値
・血中乳酸蓄積開始点(OBLA):血中乳酸濃度が「4ミリmol/L」となる点
・最大酸素摂取量(VO2max):限界まで運動したレベルにおける酸素摂取量の値

上図で、運動強度を上げたときに線が折れ曲がっているところがありますが、ここが「AT」です。「OBLA」は、スポーツ競技者などが運動強度を見極めるときにAT値より参考になる運動レベルのことです。

厳密には、酸素摂取量、二酸化炭素排出量、血中乳酸濃度、心拍数がすべて同じ時点で連動して変化するわけではなく、ATについても「換気性作業閾値(VT)」とか「乳酸性作業閾値(LT)」とか呼び分けるようですが、ここではあまり区別せずにAT値という言葉で代表させてしまうことにします。

それぞれの運動強度の時に、このうちのどれかを測ればよいということなのですが、前回も説明したとおり、「酸素摂取量(または二酸化炭素排出量)」を調べるには大掛かりなシステムが必要で、体力測定サービスなどに頼らざるをえません。

「心拍数」は大変簡単に、常に調べることができます。スポーツジムなどで運動強度の目安を確かめるときには心拍数で判断することがほとんどでしょう。ただし、本当にAT、OBLA、VO2maxを意味する値がどこなのかは、体調や運動種類によって異なってくるため、必ずしも正確ではありません。

■無侵襲で乳酸を測定したい
スポーツ関係者にとって、科学的にかつ比較的手軽に測定できるのは「乳酸」かもしれません。ポケット型の乳酸測定器が1~2種類出回っていて、利用されているようです。代表的なものとして、次の商品が挙げられます。

ラクテートプロ(アークレイ社)
→http://www.arkray.co.jp/product/sports.html

しかしこの測定法でも、ほんのわずかですが指などから小さな針などで血液を出して測る必要があります。糖尿病の方がよく利用する簡易血糖値計とほぼ同じ方法ですね。被測定者に負荷があるという点だけでなく、血液を通じた感染症の感染などの観点からも、これだけで一般的には少し敬遠されてしまうものだと思われます。

以前も書きましたが、血液を直接摂取しなくても、血中酸素濃度を測るパルス・オキシメータのように、指などにクリップをはさむだけで(「無侵襲」で)乳酸濃度や血糖値が測ることかできる装置の登場が待たれます。というまでもなく、すでに無侵襲型乳酸計の研究はあちこちで行われているようです。

■安静時の呼吸測定
ATなどは測ることができませんが、安静時の呼吸測定なら、次のような小型の呼吸ガス測定器が商品化されています。

MedGem(エムピージャパン社)
→http://www.mpjapan.co.jp/product/medgem/medgem.html

この測定器は、手で持って口にマウスピースをあてることで、正確な酸素消費量を測定でき、基礎代謝量を割り出せるとしています。もっとも、こんな小型の測定器でも医療用具認証された業務用の測定器なのでかなり高価です(担当の方によると、価格は700万円?とかいうレベルの話でした)。

米国では、パソコンやPDAにPCカードとして直接差し込んで測定する、一種の“パソコン周辺機器”という形態で、面白い身体測定器がいくつか発売されています。次のものが「肺活量計」ですが、実用性はどうなのでしょう。実際に経験された方はいませんですかね。使用感などがあれば知りたいところです。

SpirCard(米QRSダイアゴノスティック)
→http://www.qrsdiagnostic.com/NewFiles/SpiroCard.html